独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3438】

 

F-104 ネリス事件 笑えるネリス(Nellis  むしろ Neil ?)の呪い―

 

アームストロングは(あの愛嬌のあるイルカ顔だから)ミスをごまかしたり絶対しそうにないキャラだけれど(凡フライを落球したヘタな外野手みたいな)決まり文句的な言い訳をしてはいる―眩しくて見えなかった的な。(“I was looking into the sun and the glare was very difficult.”)

 

事の発端は、アームストロングが例によって X-15 用に使える状態か調べるため Delamar Dry Lake に F-104(たとえ命令でも二度とイェーガーを後ろに乗せてやるもんかと誓ってるので? two-seater ではないです、もちろん)で飛び、X-15 でやるように(just like the X-15)タッチダウンのシミュレート(F-104 の無動力不時着 dead-stick landing)してみようとしたところ、高度の目測(降下率の判断)を狂わせ(Delamar は地面に何もマーキングされてない)ギアダウンが不完全で(半開きの)車輪が引っ込み(“the main cause was my misjudging in that glare situation resulting in an advertent touchdown prior to the gear fully extending.”)、一瞬の touch-and-go のつもりがハードランディング(調子乗ってプールに飛び込んで強か腹を打ったみたい)になって、油圧(hydraulic pressure)が液漏れでバカ(deactivating)になる―これが(悪夢の誘い水とでも言うか)緊急着陸アレスティング・フック(emergency arresting hook)を release して(外して)いたことに不覚にもアームストロングは思いが至らなかった。

 

エドワーズに戻るには燃料が足りず、アームストロングの F-104 は急遽(より近い)ネリスに向かう―テールフックが下がってるとは夢にも思わぬまま。(I didn’t even think about the hook being down.)

 

無線アンテナもやられていて(ずっと音信不通でレーダーからも消えたアームストロングにエドワーズでは最悪のケースを案じていた)、no-radio approach のサインで翼を振りつつアームストロングがネリスの滑走路に降りたとたん、まさか(マジか)の錨鎖(ship’s anchor chain)のアレスティング・ワイヤーに(身に覚えがないのに)ガッつり拘束され引きずり回す羽目に―さすがは海軍エイヴィエイター(naval aviator)、飛行甲板への着艦は(そんなつもりじゃなくても)手慣れたもんで。(←ホントは何がどうしてどうなったのか事態を認識できていなかったらしいけど―I couldn’t see exactly what my situation was.)

 

文字どおり降って湧いた狼藉者の(常軌を逸した不時着パフォーマンス abnormal manner の)おかげで、わやくちゃになった滑走路の後始末やら急場しのぎ的なワイヤーの取り替えやら、当然 もう勘弁してくれよ~てな惨状のネリス空軍基地であったが、それはまだネリスの呪いの序章にすぎなかった…

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3437】

 

この時間軸の(あからさまに)逆転された作り自体を(訳知り顔で)糾弾してるのでは全然ない―もっと度し難い時系列無視中毒の(知る人ぞ知る)名作がどこぞにあるやに聞くし。

 

アームストロングの X-15 の mishap が〈前〉でも〈後〉でもカレンに(多かれ少なかれ)つながっていると考える(背景として投影させる)のは自然な(ありがちな)演出だろう。

 

が、あのイェーガーに―

 

Third mishap this month. (または Three mishaps in three months.)

 

などと言わせるのは、不自然に時系列を逆なでしたような嫌みを感じさせる脚色で(その2892、2937参照)、まぁ…  悪趣味でしょ。

 

なぜなら、実際にはアームストロングの X-15 クロスカントリー事件の(わずか)4 日後(April 24, 1962)にイェーガーとアームストロングの T-33 泥沼事件は勃発する―なのに、それをヘマの数に入れて(ネチネチ)dis らせてるんですよ、ただのパワハラ腹黒おやじにしか見えないイェーガーのセリフ Third mishap(Three mishaps)は。

 

イェーガーの―

 

Bikle should ground him before he hurts himself.

 

から分るが、アームストロングがボスのポール・ビクル Paul Bikle に ground(臨時休暇?)に降ろされた(とも噂される)本当のタイミングは(その2895参照)翌月に起った F-104 ネリス事件 "Nellis Affair"(May 21, 1962)の後で、これが正しい Third mishap―アームストロングは X-15 ~ T-33 ~ F-104 の順で立て続けに呆れるヘマ(mishap)をやらかしていて、その Three mishaps の 3 番目はネリス空軍基地(Nellis Air Force Base)での(エドワーズ伝承の)呪われたトラブル、1 番目の X-15 はジョー・ウォーカーが(he bounced off the atmosphere. と)庇ってやってたし、2 番目の T-33 はパワハラ腹黒おやじのせいにできるとしても、この F-104 のアクシデントに限っては 100% アームストロング自身の(お話にならないくらいの)大チョンボ

 

He wasn't too good an airplane driver. (その2890参照)

 

―何も言い訳できません。

 

ゆえに、これを(言い訳がましく)カレンにつなげるのは(事実そうであったかもしれないにしても)アームストロングとて潔しとはしないに違いないので、まだしも体裁の付けられる(NASAキラーコンテンツたる)X-15 に置き換えたか―そういう意味です、悪趣味ってのは。

 

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3436】

 

Josh Singer は脚本を(手を変え品を変え)腐るほど(?)書いた(It took me four years, dozens and dozens of drafts.―Los Angeles Times)とかで―

 

FIRST MAN     Screenplay By Josh Singer    Based on the Book By James R. Hansen       © 2018 UNIVERSAL STUDIOS and STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC 版(最終バージョン?)では逆に基本どおり(B-52 じゃなく)chase plane を使って―

 

We see a CHASE PLANE SWING UP on Neil’s right.

 

     CHASE PILOT (COMMS)

  Neil, you can punch your ventral...

 

                  NEIL

              Okay, shoulda done that sooner.

 

Neil, ANNOYED at himself, HITS the ventral jettison button.

 

The ventral fin BLOWS OFF and the plane LURCHES forward...

 

と、より実際に近い描写になってはいるが結局は(どのみち)消されてます。

 

かなり荒っぽくタッチダウン(←本当はあれほど激しくなかったと想像される本人コメント―It was a pretty sloppy flare and a slow touchdown, probably 165 knots, something like that.)した(やっと初めて全身を見せる)X-15 のコックピットに近寄ってアームストロングの生還を確認した(“We show you ballooning, not turning.” とか “Neil, you’re bouncing off the atmosphere.” とか予期せぬ異変を伝えていたエドワーズの管制 NASA 1 の)ジョー・ウォーカーに(ここぞとばかりに)突如 お出ましぃ~ の COLONEL YEAGER が―

 

Kid’s a good engineer, but he’s distracted.  Third mishap this month.

 

と渋い顔をする。(その2890参照)

 

>ほんのちょい役(つまらん憎まれ役)(その2892、2937~9参照) では確かにあるけれど、これは実は核心を突いた重要不可欠のセリフで、オープニングの(大方には何が何やら、さっぱりワケ分らんであろう全く一般向けじゃない、さりとてマニア対応されてるワケでもない)X-15 はイェーガーの指摘するアームストロングの心ここにあらずで集中できず(distracted)繰り返しヘマ(mishap)をやらかしてる精神状態を(ひたすら暗~い息詰まるコックピット内に)描く。

 

そして、すぐ続くシーンは病院(治療室)―

 

INT. DANIEL FREEMAN MEMORIAL HOSPITAL - INGLEWOOD, CA - DAY

 

CLOSE ON a 2-year-old girl (KAREN). Quiet, self-contained.

PULL BACK to see she’s on a gurney, a COBALT RADIATION MACHINE

HULKING over her -- the source of the MECHANICAL WHINE.

 

つまり、それほどアームストロングの心に(人知れず)重苦しい G をかけていたのは病気(brain tumor)の幼い娘 カレン だと知らさせる。

 

ここで “First Man” のオープニングが 1961 と捏造されなければならなかった理由(事情)が頷けるのだけれど、実際のカレンは January 28, 1962 に亡くなっていて、アームストロングの cross-country flight より 3 ヶ月前のこと―なので、構成上(辻褄合わせに)カレンを失う〈前〉という時系列でアームストロングが mishap する背景をこじつけ、それにもまして映画のモチーフそのもの(主眼とするテーマが何であるか)を悟らせる―そのための単なるダシなんですね、オープニングの X-15 は。

 

もとより Josh Singer は正しい前後関係で成立する脚本にもしてたようで―

 

So, you have this incredible flying machine and we started with that. We add the three mishaps. One of which was a major mishap with this X-15 that happened right after his daughter passed away and theoretically had something to do with the fact that he’d just lost his daughter. (Josh Singer Talks First Man And Neil Armstrong’s Story Of Loss)

 

と、カレンを失った〈後〉の X-15 の mishap について語っている。

 

※ 当り前すぎて注釈する必要もないが、原作 First Man: The Life of Neil A. Armstrong(James R. Hansen)ではカレンを失った〈後〉に起るアームストロングの mishap(the short string of mishaps in Neil's flying)は、当然 カレンを失った〈後〉のアームストロングの精神状態(Neil's emotional state following his daughter's death)に関連付けられる。(その2895参照)

 

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3435】

 

ね、もうこれだけで >どうしたってマニアック(ごちゃごちゃ面倒くさい感じ)になりがち でしょ、X-15 がどうしたって話は。

 

だから “First Man” もスクリプト(Armstrong  by Josh Singer Based in part upon the book First Man by James Hansen  Writer's Revised Draft May 11, 2016)を大幅変更(削減・縮小)してるようで、例えばアームストロングは着陸する際(ジャマになる)尾翼部の ventral fin を寸前に切り離しておくのを(さすがに少々パニクってたか)忘れていて―

 

We see Butch’s B-52 SWING UP on Neil’s right.

 

      BUTCH (COMMS)

   Your ventral is still on!

 

と B-52(Stan Butchart ―launch panel operator)に ventral fin が付いたままだと注意され、そして―

 

      BUTCH (COMMS)

   Start your flaps down now!

 

と(よちよち歩きを?)mothership に誘導される。

 

こういった描写は全カットされてるが、そもそもイメージ的に(ばかでかい)B-52 にこなせる役割じゃなくて、これは本来の F-104(チェイスパイロットの(たぶん)Henry Gordon との実際の交信(着陸サポート)―

 

Chase :   You can punch it off any time you want to, Neil, for drag.

 

Neil    :   Oh, I should have done that before, shouldn't I ?

 

Chase :   Yep. Start your flaps down now. Off. OK, you're well in, go ahead and put her     down.  Very nice, Neil.

 

なのであり、この段階で chase plane(F-104 や F-100)を使わない作りにしてるくせに、挙句には mothership の B-52 さえも(あっさり)消し去られる。

 

言ってしまえば、“First Man” はオープニングで X-15 を(ごちゃごちゃ―或いは、正しく)描く気など更々なくて、アームストロングの(X-15 でも他の何かでも)mishap を(ひたすら暗~く)提示してるだけでしょう―もちろんマニア対応にはなってません。

 

I fell in love with the X-15. とまで言う Josh Singer(脚本)は観る者を(ある意味)ナメてたか―

 

I thought it was a good place to start because nobody knows he flew this X-15, nobody knows about his daughter, and nobody knows that he had issues as a pilot before he joined Gemini/Apollo. (Josh Singer Talks First Man And Neil Armstrong’s Story Of Loss)

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3434】

 

この辺を “First Man” は(スクリプトの the plane HURTLES past the edge of the brush, JUST CLEARING THE JOSHUA TREES!!!  を変えて)着陸前に X-15 が(木立どころか)山の頂を(すれすれに)かすめ飛ぶ―これが San Gabriel Mountains だとすると、着陸態勢に入ってたとしたら(あっさり)中腹に激突しようし、それ以前なら全く気にもせず余裕で上空を通過してるはず。(高度に関しては、X-15 の超スピード感を演出するために、あえてフェイクで高高度にあるわけもない雲をセッティングして撮影したとか)

 

アームストロングはエドワーズまで戻れるとは思っていたものの、ちょっと無理そうなら比較的近場の other dry lakes ―楽勝(easiest choice)な El Mirage Dry Lake に向かう手もあるし、気分を変えて(?)最寄りの  Palmdale Airport  に降りるなんて代替案も浮かんでいた。

 

なので、さして(深刻には)心配してなかったようだけど、まぁ…こういうとこですよ、あの愛嬌のあるイルカ顔の(何て言うか、皮肉じゃ全然なく)アホっぽい好ましさが(抜けた感じに)透けていて笑えます。

 

Palmdale Airport の滑走路は(言うまでもなく)コンクリート、そこに X-15 が(フツーの航空機よろしく)のこのこ侵入したらどうなるか―後部ランディングギアの skids(metal)は(言うまでもなく)dry lake の土との摩擦(ブレーキ)しか想定(前提)していないのに、ムチャすぎでしょ。

 

まことに幸いにも、アームストロングは Palmdale の traffic pattern に(はた迷惑になりそうで?)入る気にならず、その妙案は即 却下した由。

 

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3433】

 

このアームストロングの(都市?)伝説的ヘマは危うく(着陸予定地点の Rogers Dry Lake まで辿りつけずに)screw the pooch する間一髪のトラブルではあった。

 

“First Man” では何とか戻ってこれた不時着エリアは大雑把に―

 

MOJAVE DESERT, CALIFORNIA  (モハベ砂漠

 

と表示される。(スクリプトは仔細に EXT. LANDING STRIP 35, ROGERS DRY LAKE BED, EAFB )

 

実際の Flight summary form の LANDING LAKE の欄には(LAKE 名じゃなく)―

 

EDWARDS

 

と(ごまかして?)手書きされていて(妙に意図的な)あやふや感が漂う。

 

X-15 Flight Log の 3-4-8/Neil A. Armstrong(Fri. 20 Apr. 1962)の記録は―

 

Launch :  11:26:58.0  - Mud

 

Landing:  11:39:26.7   - Rogers

 

確かに Rogers(Dry Lake)と報告されてるし(別名 Muroc Dry Lake で分るように)殆ど  ≒ Edwards Air Force Base なので、ちゃんと無事(?)帰還してるんだろう。(アームストロング自身  the landing will be on runway 35, south lake and will be straight-in approach. とか  I'm landing on 35 and I'm about 15 miles out from the end now. と通信しているし)

 

が、それでも結局 Rogers には(あと一歩ほど)届かず隣接する Rosamond Dry Lake(several miles southwest of Rogers)に辛うじて emergency landing したと読める説もあるにはあるようだけれど、いずれにしても Edwards(South Base)の the south lakebed の更に(ぎり)南端、それもジョシュアの木立(Joshua trees)を突っ切らんばかりの低空で着陸したもんだから、具に見ていたチェイスの誰か(an F-104 chase plane)が「どのくらい間隔があったか?」訊かれて―

 

"Oh, at least 100 feet ... on either side"

 

と答えた… てな笑える(いかにも都市ラベルが付いてそうな類の)伝説ですね。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3432】

 

それはともかく、この(結局 アイデア倒れみたいになった)X-15B が特に感じさせずにはいないが、X-15 は必然的に X-1 とマーキュリー宇宙船(カプセル)との間に配置されるべき必須アイテム(その2918参照)―ゆえに、イェーガー(やクロスフィールドらエドワーズのテストパイロット)~マーキュリー宇宙飛行士を一つの連続体として(すんなり)描くに持って来いの超便利グッズなわけで、当然カウフマンもスクリプトでは(原作に律儀に―安易にとも言えるか)ちゃっかり X-15(の小さな模型)を間にかましたストーリーにしていたものの、どうしたってマニアック(ごちゃごちゃ面倒くさい感じ)になりがちなんですよねぇ、この X-15 がどうしたって話は。(その3068~70、3080参照)

 

だからこそ逆に、あえてマニアックに X-15 の正しい姿、その全貌を(ちょっとでも)撮ってもらいたかったなぁ、カウフマンに―「ライトスタッフ」のノリ(マニア対応の構え?)でしか正しく撮れそうにないから。(←もろ NF-104 とバッティングしまくるんで無理は承知の上ですけど)

 

実際、アームストロングの小さな第一歩(one small step)が X-15 から始まることを反映してか、映画 “First Man” のオープニングは(わたしの指示にも従って?―その2889~90、2892参照)いきなり X-15(ひたすら暗~いコックピット内)の息詰まるシーン―ガチでリアルっぽい雰囲気は(まぁ)よしとして、なぜか(←とりあえず、です)わざわざ史実を前倒しさせ 1961 と表示される。

 

本当はアームストロングの X-15 (#3 -672)が(いわば)跳弾 ricochet して最長 flight duration 記録の cross-country flight(748.7 seconds 350 miles ground track)を達成したのは 1962年(April 20)のこと―うっかり(大気圏に)再突入しそこびって(reentry skip)遥かエドワーズ(モハベ砂漠)を飛び越した彼方(45 miles south―“overshoot to Pasadena”  大げさには Rose Bowl が見えるくらい遠く)から(こりゃヤベェと)U ターンし(むろんグライダー状態で)ぎりぎり引き返す羽目に。(←見事な?大きな飛躍 one giant leap を先に地球で披露してたわけで)

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3431】

 

従って、トム・ウルフの―

 

Armstrong had been preparing for an X-15 launch from the Smith's Ranch dry-lake bed

 

(アームストロングはスミス牧場の乾湖の湖底から X 15 を発進させる準備をしていた)

 

は一切 B-52(mothership)に触れてない文脈である以上、やはり(素直に真に受ける一般の読者にとっては)>致命的な間違い  ―ごく控えめに言っても、舌足らずすぎでしょう。

 

X-1 の場合は―

 

At 26,000 feet the B-29 went into a shallow dive, then pulled up and released Yeager and the X-1 as if it were a bomb. Like a bomb it dropped and shot forward (at the speed of the mother ship) at the same time. Yeager had been launched straight into the sun.

 

高度二万六千フィートで B 29 はわずかに機首をさげて降下し、それから機首を立てて上昇に移り、イエーガーの乗った X 1 を、まるで爆弾のように機体から放った。X 1 は爆弾のように機体から離れると同時に、B 29 とおなじスピードで前方に突進した。イエーガーは真直ぐ太陽にむかって発射されていた。[中公文庫]

 

B-29(= the mother ship)に懇切丁寧なのに。

 

トム・ウルフは X-1 と B-29 の(母子?)関係を重々説明してるせいか、X-15 と B-52 についても(無意識に)自明の前提にしてるのかもしれんが、およそ X-15 の launch に関する記述は―

 

The preliminary design section of North American Aviation had working drawings and most of the specifications for a fifteen-ton ship called the X-15B, a winged craft that would be launched by three enormous rockets, each with 415,000 pounds of thrust, whereupon the ship's two pilots would take over with the X-15B's own 75,000-pound engine, make three or more orbits of the earth, reenter the atmosphere, and land on a dry lake bed at Edwards like any other pilots in the X series.

 

ノース・アメリカン航空の予備設計部門では、X 15 B と銘打った十五トンの機の製作図ができあがり、仕様もほとんど決まっていた。X 15 B は有翼機であり、推力四十一万五千ポンドという巨大なロケット三基によって打ち上げられ、そのあと二人のパイロットが X 15 B 自体の七万五千ポンドのエンジンに切り替えて地球の軌道を三回ないしそれ以上まわり、大気圏内に再突入し、X シリーズの他のパイロットがやるのと同様に、エドワーズ基地の干上った湖底に着陸させるという計画だった。[中公文庫]

 

なんて(B-52 から空中発射するレギュラーの X-15 とは別の)マジでロケット(Navaho booster rockets)で打ち上げるカプセル的な(かつ乗ってるだけじゃダメな、パイロットが操縦しなければならない)スペースプレーン(orbital version)の X-15B のことしか書いてないんですよ、どういうつもりか(誤解を助長させたいのか?)

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3430】

 

T-33 泥沼事件が出たついでに、懸案だった(のか?)X-15 dry-lake 発進 問題を少々―

 

その2891

 

去年のことアームストロングはスミス牧場の乾湖の湖底から X 15 を発進させる準備をしていた。 飛行テスト実施の責任者であるイエーガーは、長雨のため湖底はまだぬかっていて使えないと言った。  Armstrong had been preparing for an X-15 launch from the Smith's Ranch dry-lake bed last year when Yeager, who was director of flight test operations, told him the lake bed was still too muddy from the rains.  (第15章 「高地砂漠」)

 

となっている― 乾湖から X-15 を発進させる(launch from the Smith's Ranch dry-lake bed)… って、なアホな。 (←指摘するのもイヤになるが、ここでは X-15 を乾湖に着陸させる land on the Smith's Ranch dry-lake bed というのが正しい)

 

今更 説明するまでもなく、X-15 は B-52 に吊り下げられて空中で発進する(X-15  launch from B-52 mothership)―乾湖から発進するなんて器用なマネは(イマイチのアームストロングじゃなくても)無理な相談なのであった。 (←機首には車輪が付いてるけど、後ろは何とも頼りない ソリ skid だし)

 

 

さて、わたしには >致命的な間違い(或いは誤訳?) と思われた launch from the Smith's Ranch dry-lake bed (スミス牧場の乾湖の湖底から X 15 を発進させる) なんていうトンチンカンな表現―これが実は、詳細なデータ記録上(X-15 Flight Log)に散見される言い回しで、例えば ジョン・マッケイ(John B. “Jack” McKay―その2918参照)の最終フライト(Thu. 8 Sep. 1966)は―

 

First flight launched from Smith Ranch Dry Lake for X-15 no.1

 

と X-15(#1)が初めて乾湖から発進する(かのような)そのまんまの記述があったりする。

 

それでも(その道の)マニアの方なら、まさか dry-lake から(字義どおり)離陸して飛び立つ(況や自力で垂直に発射される)X-15 などイメージできまい―そんなんじゃ全然ねぇし、X-15 って。

 

マッケイの X-15 は―

 

Launch :  10:39  - Smith Ranch

 

Landing:  10:45   - Smith Ranch

 

Smith Ranch から発進して Smith Ranch に着陸―確かに、そう記録されてはいる。

 

が、同時併記されてるデータの B-52―

 

B-52/Pilots: 008/Doryland & Cotton

 

ちゃんと Doryland & Cotton(その2916参照)コンビの操縦する B-52(“Balls Eight”)が―

 

Takeoff :  09:40

 

Landing:  11:40

 

と、この Takeoff がミソで 意味するところは mothership である B-52 bomber の離陸―もちろん X-15 を(ミサイルさながら)右翼下(wing pylon)に抱いて、Smith Ranch からテイクオフ(09:40)

 

しかる後にマッケイの X-15 は上空で B-52(launch platform)から air dropped (in Smith Ranch Lake DZ)され Launch(10:39)(from the bomber’s wing pylon)に至る。[DZ  air drop zone ]

 

それがまさしく―

 

launched from Smith Ranch Dry Lake for X-15

 

の(正しい)実態なのであります。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3429】

 

"too independent" 

 

独立心が強すぎる(原作) 自立心が旺盛すぎる    人のいうことを聞かない(字幕)

 

などと訳されてるけども、ちょっと何か(強すぎないと言うか)もの足りない感じがする。

 

凹 のセリフ Besides, they seem a little too independent. や、フリッキンガーの直言 You're too independent. に含まれてるはずの婉曲的ニュアンスを消して考えると、ぼんやりイェーガーの言葉(ある単語)が浮かぶ。

 

"complacency"

 

イェーガーがクロスフィールドの墜落死に際して表明したワードで、端的にクロスフィールドの complacency(自己過信) が招いた事故だと(原因調査の前に)口さがなく言ってのけた。

 

イェーガーにかかりゃ、民間(civilian)のテストパイロット=クロスフィールドは " had a lot more freedom than we did, as military guys.... sometimes he exceeded his capability and got in trouble." となる―大方の評価・印象は全く異なるに違いないが。

 

その 832  (2006/ 5/13)

 

かねてよりイェーガーはクロスフィールドを熟練の(proficient)パイロットだが傲慢だ(most arrogant)と評していて、今回も その complacency(←通常は自己満足と訳される)のせいで墜落死したとコメントしている。 (←とことん口が悪い)

 

イェーガーによると、クロスフィールドは平素から悪天候でもフライトしては(時として)トラブっていたそうで、悪条件の軽視と慢心が言わんとする complacency でしょうか。

 

対し、イェーガー自身は無鉄砲なイメージでありながら(実際そうだったろうけど)、例えばアームストロングの T-33 泥沼事件(その2893~4参照)でも窺えるように、一方で細心な面と言うか慎重さもあるみたいです。 (だからこそ、しぶとく生きながらえていると思われ…)

 

参考

 

2006年 4月19日 クロスフィールドの操縦するセスナ210 は酷い雷雨に見舞われ(おそらく乱気流のため)空中分解したもよう。