独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3152】

 

このもとネタは原作(宇宙飛行士に選ばれなくて残念かとの質問にイェーガーが答える)―

 

   "Besides," he added, "I've been a pilot all my life, and there won't be any flying to do in Project Mercury."

 

   No flying?

 

   That was all it took. The reporters looked stunned. In some way they couldn't comprehend immediately, Yeager was casting doubt on two undisputable facts: one, that the seven Mercury astronauts were chosen because they were the seven finest pilots in America, and two, that they would be pilots on the most daring flights in American history.

 

   The thing was, he said, the Mercury system was completely automated. Once they put you in the capsule, that was the last you got to say about the subject.

 

   Whuh!

 

   "Well," said Yeager, "a monkey's gonna make the first flight."

 

   A monkey?

 

   The reporters were shocked. It happened to be true that the plans called for sending up chimpanzees in both suborbital and orbital flights, identical to the nights the astronauts would make, before risking the men. But to just say it like that!… Was this national heresy? What the hell was it?(The Right Stuff)

 

「それに」と彼はつけ加えた、「わたしはずっとパイロットでしたが、マーキュリー計画では操縦飛行はないでしょうしね」

 

操縦飛行はない?―

 

それだけで充分だった。記者たちは肝をつぶした。彼らには即座に理解できなかったけれど、イエーガーは議論の余地のない二つの事実に疑問を投げかけていた。一つは、七人のマーキュリー宇宙飛行士は果してアメリカで最もすぐれた飛行士であるが故に選ばれたのかということ、もう一つは、彼らはアメリカ史上最も危険な飛行のパイロットとなるのは本当かということだ。

 

肝心な点は、マーキュリー宇宙船は完全自動方式だということだ、と彼は言った。いったん宇宙船内に乗りこんでしまえば、それで終りで、あとは話すようなことは何もないのだ。

 

何だって!―

 

「それに」とイエーガーは言った、「最初の飛行は猿がやるんですからね」

 

猿が?―

 

記者たちには衝撃だった。計画では、人間を危険にさらす前に、宇宙飛行士たちの飛行とまったく同じ弾道飛行と軌道飛行の両方に、チンパンジーを打ち上げることになっていたのは事実だった。けれどそれをこんな風に言うなんて!…これは国家に対する異端なのか。いったいぜんたいどうしたってわけなのだ。[中公文庫]

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3151】

 

ライトスタッフ」ではイェーガーやリドリーらがライフ誌の表紙のハムを―

 

Captain Ham.

 

Ham in a can.

 

と囃し立て嗤うが、このシーンのスクリプトは―

 

CUT TO: INSERT-HAM ON LIFE

HAM ON THE COVER OF LIFE MAGAZINE, and it looks like he’s LAUGHING.

 

CUT FROM COVER OF LIFE TO: INT YEAGER HOME

YEAGER HOLDING COVER AND LAUGHING his wild laugh TO:

 

INT LUCE OFFICE

LUCE LAUGHING: holding the magazine:

 

LUCE

Adorable. What a nice, fat, happy grin! If this is the joy he feels on returning from outer space--imagine the joy the first man will feel.

 

と、ハムが笑い、イェーガーが笑い、そしてヘンリー・ルース(ライフ社長)が笑うという(カウフマン自らが笑いながら書いてるに違いない)ギャグになってたのだけれど、ちょっと「ライトスタッフ」(最終形態)のイェーガー(サム・シェパード)的じゃない感じがする。

 

それに、この手のギャグでは既に笑いを取ってますでしょ、耐 G 訓練(遠心機 centrifuge)のグレンとチンプをダブらせて―

 

CLOSE SHOT ON CHIMP IN CENTRIFUGE. And the CHIMP IS WHIRLING.

 

LONG DISSOLVE INTO:

INT CENTRIFUGE ROOM

JOHN GLENN in exactly the same position-- THIS SHOULD HAVE THE FEELING OF DR.JECKYLL EMERGING FROM MR.HYDE…Astronaut emerging from Ape…Glenn’s face is flapping and contorted from the G-forces.

 

スクリプトはグレンをジキル博士、チンプをハイド氏に見立ててるけども、逆でも可(どっちがグレンで、どっちがチンプか)なくらいに一体化して笑わせてくれてましたね。

 

 

イェーガーが最初はサルを打ち上げるらしいと言うところも全く使ってないし―

 

YEAGER

Flight? They call that flyin? There won’t be any flyin’ to do over there. Once they put you in that capsule, it’s the last you got to say on the subject. Asides,I hear a monkey’s gonna make the first flight, anyways.

 

PRINCE

A monkey? You’re kidding.

 

YEAGER

I ain’t kidding. You don’t want to fly anythin where you have to sweep the monkey crap off the seat before you sit down, do ye, son?

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3150】

 

その 450~454 (2004/ 8/24~28)

 

チンパンジー問題に関する(少なくとも当初の)フォン・ブラウンの(ブラウンじゃなくブラックな?)肚の内は、ライフ誌の取材シーン(←人間とチンプの訓練ぶりをオーバーラップさせて笑わせる)でもはっきりと示されてます。

 

宇宙船のシステムは完全自動であるから、乗員はチンパンジーでも人間でも同じことで、問題は―

 

どっちが先か(Which one will be first-the man or the monkey?)ということだけだと。

 

早い話が、いわゆる宇宙飛行士(the so-called astronaut)はツイデと言うかオマケと言うか(マーキュリー計画のテーマ上)仕方なく乗せてやってるだけの冗長装置(a redundant component)―もともと有人飛行はフォン・ブラウンの意図するところではなかったようでもある。

 

ウォーリー・シラーに言わせれば、シェパードからカーペンターまでのフライトは完全自動のチンプ・モードにすぎず、自らのシグマ7こそ(初めて宇宙飛行士によって操縦された)本当の意味でのフライトだったと何気に自慢してるんで、まあ取りあえずは、その辺りから「サルでもできる」ミッションではなくなった―と、一応そういうことにしときましょうか。 (じゃないと、ライトスタッフとしての格好が…)

 

 

I had in mind a jimp.

 

フォン・ブラウンが(ドイツ語訛りで)ジョンソンにそう説明するシーンがあります― A jimp.  A jimpanzee.  An ape. と。

 

ここから判るように、フォン・ブラウンは最初からサル方式を目論んでたようですが、The first American into space がチンパンジーじゃマズイだろってことで人間が(それこそ)人選されるという話の流れになってますね。

 

それでも、結局 アイゼンハワーの鶴の一声(I want test pilots!)でテストパイロットに決まる時も、もっと管理しやすい(manageable)従順なタイプ(の人間)にすべきだと反対する。

 

前レスのシーンでも、チンパンジーが人間と同じタスクをこなすことができ、しかも(より重要なことに)はるかに協力的 cooperative で従順である点を強調してました。

 

かてて加えてと言うか、それ以前にフォン・ブラウンにとっては有人(←よりによってテストパイロット)飛行に拘らずに済むのなら、例えば安全性を(少なくとも最優先には)考慮する必要がないということ、それだけでも格段に開発を進めやすいってことなんでしょうか―

 

現にアメリカが(もたもたと)チンパンジーを打ち上げてる隙に、さっさとソ連ガガーリンに先を越されてしまったのは、逆にソ連がその安全性を最優先に考慮していなかった何よりの証―とも言えるかもしれない。

 

 

Astro-chimp のハム(MR-2)は、ロケットの不具合で(早く点火して加速されすぎたせいで)15~17 G でぺしゃんこにされかかるワ、スプラッシュダウンしたカプセルは転覆浸水するワで、ほうほうの体のご帰還だったそうですが、その勇敢にして決死の任務遂行に対し―

 

NASA Distinguished Service Medal

 

ではなしに an apple が(カプセル内につながれたままの状態で)授与されました。 (正確には and half an orange だったとも―せめてバナナの一本も余分につけてやれよなぁ…)

 

ライトスタッフ」では、いかにもリカバリーされた直後って感じのカプセル内のハムを、例によってゾウムシ連中(マスコミ)がパシャパシャやってましたでしょ―当然あれは(お得意の)作り話で、実際のプレス向けの写真は数日後に改めてセッティングされて撮られたもよう。

 

その際、再びカプセルに詰め込まれるのをハムは酷く嫌がったらしく、さながら文字どおりの Ham in a can (Spam in a can)の図であったと想像される。

 

参考

 

ちなみに Ham という名前は Holloman's Aero-Medical Lab (←で訓練された)の頭文字からつけられてるので、食肉加工品のハムとは何ら関係ありません。

 

 

フォン・ブラウンが言うとおり、ハムは人なつっこい愛嬌のある従順なチンパン君でしたが、ジョン・グレンの前に軌道飛行したイーノス Enos は(賢くて優秀だったものの)けっこうホネのある(テストパイロットみたいな?)やつで、全然人に馴れなかったそう。

 

抱こうとするとすぐ噛みついたりするんで、いつも囚人みたいに両手をつながれてたらしい―無理やり従順にさせられてたわけです。

 

でも、ミッション(MA-5)ではその持ち前のガッツ(と 1250時間にも及ぶ訓練の成果)を遺憾なく発揮して、正しい操作をしてるのに(まるでミスでもした結果のペナルティ的な苦痛を伴う)電気ショックを受け続けるというアクシデントにも任務を放棄することなく、果敢に地球を 2 周して無事戻ってきております。 (リカバリーされるや、嬉々としてデッキを跳ね回り、珍しく皆と握手したりして、偉くご満悦だったとか ←根はいい奴なんですよ)

 

イーノスは宇宙から生還した半年後、そのスペース・ミッションのせいなんかではなく、赤痢にかかって死亡しました。 (取り立ててニュースにもならなかったと聞く…)

 

参考

 

Enos はヘブライ語(或いはギリシャ語)で mortal 、即ち死すべき宿命にある人間を意味する―なるほど、シャレてると言うべきか…

 

 

「スペースカウボーイ」に登場するチンパンジーの名前は Mary Ann だという話をしましたが、実際のレディースの Astro-chimp はミニー Minnie といって、ハム(MR-2)のバックアップ・パイロットを務めてます。 (←残念ながら、ジェリー・コッブ同様、結局は飛ばずじまいだったけど)

 

ミニーはマーキュリー・プログラムをお役ご免になった後、空軍の breeding program に転属され(お国のために?)せっせと子づくりに励む。

 

プライム・パイロットのハムはと言うと、17年間も動物園で無為にタイヤにぶら下がってるだけの孤独にして侘しい生活を送らされてましたが、その後(晩年の 2年間)は他の仲間と一緒になれて彼女もでき、やっと(人並みの?)幸せをつかんだようです―1983年、おそらく「ライトスタッフ」の封切りを待たずして、ハムは安らかに永眠。(享年 27)

 

(その 15年後、ミニーは 41才という長寿を全うし、ハムの隣に埋葬された)

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3149】

 

その1285

 

トランスクリプトでは(大卒のチンプへの)興味本位的な質問もなされ、フィジカルは申し分なくても(We know they are nearly physically perfect)、オツムの程度は如何にと―

 

What about their IQs?

 

NASA の(いくぶんかは記者への皮肉とも取れる)答え―

 

Flickinger: Every one of the gentlemen has an IQ about 10 percent higher than any of us. (数値は 120、130 以上と)

 

宇宙飛行士の IQ に何か意味があるのかは分からないが、あの(そうは見えない)ガス・グリソム(グリソム少年)の IQ は 145 だった(と地元はアピールしている)らしいので、一般より確かに(かなり)高い―その意味では優秀なのは間違いなかろう。

 

従って、少なくとも(知能に関して)チンパンジーと一緒くた(同レベル)にするのは全く不当であるし、喩える(なぞらえる)のも失礼すぎでありましょう。

 

 

それはまた同時に(逆に)アストロ・チンプに対しても甚だ失礼な話―

 

その1286~1287

 

ライトスタッフ」のグリソム(フレッド・ウォード)のセリフ―

 

The issue here is monkey.  Us,we are the monkey.

 

それをスレイトン(スコット・ポーリン)が受けて―

 

Us, a bunch of college-trained chimpanzees.

 

と自嘲的に解説する。

 

 

原作の一節―

 

No reader of Life would have recognized the Deke Slayton who went to the podium in a hotel convention hall to speak to the brotherhood. From the start his tone was defensive. He said he had some "stubborn, frank" comments on the role of the pilot in Project Mercury. There were people in the military, he said, who wondered "whether a college-trained chimpanzee or the village idiot might not do as well in space as an experienced test pilot." (A monkey's gonna make the first flight!) He knew there was that kind of talk going around, and it annoyed him.(The Right Stuff)

 

ホテルの会議場で、兄弟たちに話をするために演壇にあがって行くディーク・スレイトンを『ライフ』の読者が見たとしたら、わが目を疑っただろう。のっけから彼の調子は弁解がましかった。マーキュリー計画パイロットの役割について、いくつかの「しつこい、率直な」見解を耳にしている、と彼は言った。「大学教育を受けたチンパンジーか、でなかったら田舎の田吾作でも、熟練したテスト・パイロットとまったく変らず立派に宇宙でやれるのではないか」という疑念を持つ人が軍隊にいる、と彼は言った。(猿公が最初の飛行をやるんだってな!)そういったたぐいのことがさかんに言われていることを彼は承知しているし、そのことに彼は腹立ちを覚える。[中公文庫]

 

 かように、「ライトスタッフ」でグリソムが自分達を the monkey と言い、その意味をスレイトンが a bunch of college-trained chimpanzees と説くセリフにも相応の(ちゃんとした)背景があるわけで、あそこでスレイトン以外の誰かが(さも自前の表現めかして)講釈するとしたら脚色として(それこそが 「ライトスタッフ」式 に違いないのだけれど)正しくない。

 

が、もちろん本来 a college-trained chimpanzee (原作訳 「大学教育を受けたチンパンジー」)とはハム(或いは イーノス)を指しており、原作は college について―

 

そのような大学が現実に存在するという事実 (the fact that such a college actually existed)

 

マーキュリー計画チンパンジー村 (a Project Mercury chimpanzee colony)

 

と述べ、そこは―

 

ホローマン空軍基地 (Holloman Air Force Base)

 

にあると説明する。

 

つまり、Holloman's HAM facility (Holloman Aero-Medical laboratory)のことですね。

 

※ 字幕が(字数制限上か)簡略に―

 

「大学出のサル」

 

としてるのは、むしろタクまざる含みを持つ(大学出ではないイェーガーにもかけた)訳になっていよう。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3148】

 

その1283~1284

 

ライトスタッフ」で教会についての質問―

 

Can you tell us if any of you go to church regularly?

 

any of you のうち シェパード(一人だけ)が応える―

 

As far as church goes... I attend regularly.

 

 

原作では―

 

Alan Shepard, says : "I am not a member of any church. I attend the Christian Science Church regularly."

 

「ぼくはどの宗派にも属していません。クリスチャン・サイエンスの教会にはきちんと通っていますが」

 

実際は記者がシェパードを指名した質問で(Could you tell us what Mr. Shepard's church affiliation is?)―

 

Yes. I am not a member of any church. I attend the Christian Science Church regularly.

 

と当然シェパード一人だけが応えている。

 

 

或いは "No bucks, no Buck Rogers." のネタもとかとも思わせるシラーの発言―

 

(Q : Had you any inclinations of being thrown into space?) 

 

I think I can answer that simply by saying that all of us in this room have probably read of the Buck Rogers, Flash Gordon, Jules Verne routine. We were interested in reading these things and obviously we had intentions of following something like this in our lifetimes. I will readily admit that I didn't think of this. But in flying aircraft… 

 

 

2003/ 5/ 2 ―

 

彼(liaison man)こそが、もう一人の狂言回しと言ってよい存在で、リドリーがイェーガー専属の狂言回しであった色合いが強いのに比べ、この連絡官は映画全体の狂言回し役に他なりません。

 

ロケットを飛ばすものは何か―それは資金(funding)だ、と彼は言い放つ。

 

No bucks,no Buck Rogers. 「金がヒーローを作る」

 

全体の狂言回しとしての連絡官がパンチョの店でイェーガーとリドリーに、そして別のテーブルのホットドッグやグリソムらに向かって宣う、この印象深いコピーは映画全体のキーワードになってます。

 

マーキュリー7がカプセルに窓やハッチを付けろと科学者に要求するシーンで、ガス・グリソムが(効果的にも)したり顔でこのセリフを言うし、イェーガーと連絡官が NF‐104 を見るシーンでは、自分たちのプログラムは終わって(scrapped)、これから資金はヒューストンの宇宙飛行士に向けられる(got the only ticket)と示唆します―bucks のないイェーガーは、もはや Buck Rogers にはなれないとばかりに。(その3103 参照)

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3147】

 

その1279~1281

 

クーパーが(あえて)"Mr. Glenn" と言っているのを字幕は単に(不親切にしてアイソなしに) 「グレン」 としている。

 

これを(わずか一文字 「氏」 を付けて)「グレン氏」にしてくれさえすれば、わたしら字幕ウォッチャーは(立ち止まらされて)ホットドッグが(あえて)そう呼んでいるんだなぁと分かるのであるが、そこまで字幕にシビアな要望をするつもりはないけども、こんな何気にスルーしている所にも(ちゃんとネタもとの分かる)ギャグが散りばめられている―ということを(しつこく)念押しさせてもらいます。

 

そして(映像で再確認できる)正しい席順に関しては、その 800(2005/12/28)―

 

ジョン・グレンが当たり前のように中央に陣取ってるのはウソらしい、一人だけ蝶ネクタイしてるのはホントらしい、一人だけ両手を挙げてアピールしたのはホントらしい と(断定は避けて)一件落着にしたつもりでしたが、ようやく最終決定に至りましたゆえ、ここに箇条書きで(断定をして)ご報告いたしましょう―

 

◦ 中央に陣取っているのは(アルファベット順どおり)ガス・グリソムである

 

◦ ジョン・グレン(右から 3 番目)は蝶ネクタイをしている

 

◦ が、ディーク・スレイトン(左端)も蝶ネクタイをしている

 

◦ ジョン・グレンは両手を挙げてアピールしている

 

◦ が、ウォーリー・シラー(右から 5 番目)も両手を挙げている

 

従って、映画 「ライトスタッフ」 で ジョン・グレンが当たり前のように中央に陣取ってるのはウソであり、一人だけではないが蝶ネクタイしてるのはホントであり、一人だけではないが両手を挙げてアピールしたのはホントである―と判明いたしました。(その3139 参照)

 

※ 原作も―

 

グレンときたらご丁寧に両手を挙げているのが、いやでも目に入った。(Glenn, one couldn't help noticing, had both hands up in the air.)

 

と、いかにもグレン一人だけが both hands up したかのような印象操作をしてますね。

 

 

参考

 

原作には―

 

そのとき記者の一人が立ち上って言った。 「皆さんのなかで、宇宙から生還できると確信しているかたは何人いるか、ちょっと手を挙げてもらえませんか?」

 

Then one of the reporters gets up and says : "Could I ask for a show of hands of how many are confident that they will come back from outer space?"

 

とあり、トランスクリプトも―

 

Q : Could I ask for a show of hands of how many are confident that they will come back from outer space?

 

(All seven astronauts raised their hands.) (Laughter.)

 

となっている。

 

When it was Gus's turn, he said: "I consider myself religious. I am a Protestant and belong to the Church of Christ. I am not real active in church, as Mr. Glenn is"—Mister  Glenn, he calls him—''but I consider myself a good Christian still."(The Right Stuff)

 

ガスの順番がきたとき、彼は言った、「自分で言うのもなんですが、信仰心の厚い人間だと思っています。プロテスタントで、チャーチ・オブ・クライスト(クリスチャン・サイエンス)に属してます。グレン氏のように、教会活動はあまりやってません」―グレンと彼は呼んだ―「でも自分は立派なキリスト教徒だと思ってます」[中公文庫]

 

 クーパーがセリフで(指差しながら) "Mr. Glenn" と呼ぶネタもとはこれに違いない。(前述したように字幕は単に「グレン」なので聞き逃してしまうだろうけど)

 

トランスクリプトもグリソムの発言は―

 

I consider myself religious. I am a Protestant and belong to the Church of Christ. I am not real active in church, as Mr. Glenn is, but I consider myself a good Christian still.

 

と、原作が Mister  Glenn, he calls him と皮肉に注意喚起(イタリック体で強調)してるとおりで、完全に同じ。

 

対し、グレン氏のほうはグリソムを―

 

I also agree wholeheartedly with Gus here.

 

と近しげに(普通に)ガス と呼んでいて、シェパードは(正しいスタンスに感じられるが)グレンに Mr. など付けず(日本語的には)呼び捨て―

 

I think John Glenn answered the question pretty well.

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3146】

 

その1277~1278

 

グレンが引き合いに出すライト兄弟のクダリ―

 

When I think of Orville and Wilbur Wright standing on a hill at Kitty Hawk, North Carolina, tossing a coin to see which one would take the first airplane flight,and then I think of us here today… I thank God I live in a country.

 

その昔 ライト兄弟はノース・カロライナの丘に立ち どちらが初乗りするか コインで決めました その後の進歩の数々 努力と才能が生かせる国に生まれ 神に感謝します (字幕)

 

 

原作―

 

He gave a nice little speech that started with Orville and Wilbur Wright standing on a hill at Kitty Hawk, North Carolina, tossing a coin to see which one would take the first airplane flight, and then he tied that in with the first space flight. "I think we are very fortunate," he said, "that we have, should we say, been blessed with the talents that have been picked for something like this." (No one had said a word about talents, however.) "I think we would be most remiss in our duty," he went on, "if we didn't make the fullest use of our talents in volunteering for something that is as important as this is to our country and to the world in general right now. This can mean an awful lot to this country, of course."(The Right Stuff)

 

(グレンは)気の利いたスピーチのなかで、ライト兄弟の話からはじめたのだ。ノース・カロライナ州キティ・ホークの丘の上に立ったオーヴィル・ライト、ウィルバー・ライトの兄弟は、世界最初の飛行機にどっちが先に乗るかをコインを投げて決めたという話をし、それを最初の宇宙飛行士につなげた。「私たちは大変幸運だと思います。いわば、私たちは才能に恵まれていたために、こんどのことに選ばれたってのはですね」(しかし、才能、、だということは誰もこれっぽちも言っていない)「私たちは義務不履行のそしりを免れないと思います」彼は続ける、「わが国にとっても、またこんにちの世界全体にとっても、このように重要な仕事に率先して取り組むにあたって、私たちの才能を最大限に発揮しないとしたらですね。無論、こんどの計画はこの国にとって、はかり知れない意味を持ちうるものです」 [中公文庫]

 

 

 トランスクリプト

 

"…like the Wright brothers stood at Kitty Hawk about fifty years ago,with Orville and Wilbur pitching a coin to see who was going to shove the other one off the hill down there.

 

I think we are very fortunate that we have, should we say, been blessed with the talents that have been picked for something like this. I think we would be almost(原作では most ) remiss in our duty if we didn't make the full use of our talents. Every one of us would feel guilty I think if we didn't make the fullest use of our talents in volunteering for something that is as important as this is to our country and to the world in general right now. This can mean an awful lot to this country, of course."

 

 

この後 「ライトスタッフ」 ではグレンの(芝居がかった)ご高説の尻馬に乗ってクーパーが―

 

ク : I'd like to second some of the things Mr. Glenn has said here. (僕もグレンが言ったことに同感です)

 

と続け、さも自説であるかのように(実際のグレンの弁舌を)そのままパクって―I think that we are all very, very fortunate that we have been, uh, should we say, "blessed" with the talents for something like this.  And I think that we would be most remiss in our duty indeed... if we did not volunteer for something as important as this is to our country and to the world in general right now.  と展開し(空軍の意地を見せ)、隣のスレイトンにも(Don't you agree, Deke? と)振って―

 

ス : I absolutely agree with Gordo. 

 

と更に(強引に)追随させる大幅な脚色がなされているが、実際はグレンの後に答えるのは(クーパーではなく)グリソムで、原作もそうなっている。 (当然 「ライトスタッフ」 では席順が全く異なるし)

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3145】

 

その1275~1276

 

想像するに トム・ウルフは(きっと映像を見つつも)トランスクリプトを下敷きにし、それを(やはり映像を見てるに違いない)フィリップ・カウフマンは踏襲しているだけなのだろうか。

 

ライトスタッフ」のジョン・P・ライアン(ここではキース・グレナン役―実物は淡々と喋っており、大仰にアピールしたりしない)のセリフ―

 

Ladies and gentlemen... after a long and unprecedented series of evaluations which told our medical scientists of their superb adaptability to their upcoming flight,  it is my pleasure to introduce to you seven Americans...  gentlemen all!  Virgil I,Gus Grissom! Leroy G, Cooper! Donald K, Slayton! John H, Glenn, Junior! Malcolm S, Carpenter! Alan B, Shepard, Junior! Walter M, Schirra, Junior!  America's Mercury astronauts! 

 

皆さん 我々は長期間 前例のない審査を重ねました その結果 科学者グループは宇宙飛行に最も適格である者を選抜しました 謹んで紹介します 7人のアメリカ人 栄えある男たち― (字幕)

 

 

この(要約された)前の部分のもとネタ(原作)は―

 

"Ladies and gentlemen, today we are introducing to you and to the world these seven men who have been selected to begin training for orbital space flight.  These men, the nation's Project Mercury astronauts, are here after a long and perhaps unprecedented series of evaluations which told our medical consultants and scientists of their superb adaptability to their upcoming flight."(The Right Stuff)

 

「お集まりのみなさん、ただいまからみなさんおよび全世界の人々に発表致します。ここに居並ぶ七人が、宇宙軌道飛行の訓練を受けるために選ばれた人たちです。長期間にわたり、多分前例を見ないほど様々な角度から慎重に審査した結果決まった、わがマーキュリー計画の宇宙飛行士諸君は、きたる宇宙飛行に対するすばらしい適性を持つものであることを、医学関係者および科学者一同深く確信しております」 [中公文庫]

 

 となっていて、これも記録フィルム(及びトランスクリプト)と合致する。

 

 「ライトスタッフ」のエド・ハリスジョン・グレン役)のセリフ―

 

I don't think any of us could go on with something like this, if we didn't have pretty good backing at home. My wife's attitude towards this has been the same as it's been all along through my flying. If it's what I want to do, she's behind it. And, by golly, my kids are, too,100 percent.

 

こういうことは家族の応援なしには達成できません 私の妻も今までと同じように理解を示してくれてます 家族はいつも 100% のサポート態勢ですよ (字幕)

 

原作は―

 

"I don't think any of us could really go on with something like this," he says, "if we didn't have pretty good backing at home, really.  My wife's attitude toward this has been the same as it has been all along through my flying.  If it is what I want to do, she is behind it, and the kids are, too, a hundred percent."(The Right Stuff)

 

「私たちの誰にしろ、こういう任務を続けていくことは、じっさいに不可能だと思いますね」と彼(グレン)は言う、「もし家庭での強力な支持がありませんと。ほんとです。こんどのことにしても、家内の態度は、軍の飛行士として空を飛んでいたあいだ、私に対して一貫して取りつづけてきたのとまったく同じでした。それが私のやりたいことなら、家内はバックアップしてくれますし、子供たちもです。百パーセントね」 [中公文庫]

 

 記録フィルム(及びトランスクリプト)も―

 

I don't think any of us could really go on with something like this if we didn't have pretty good backing at home, really.  My wife's attitude toward this has been the same as it has been all along through all my flying.  If it is what I want to do she is behind it, and the kids are too, a hundred percent.

 

と同じ―原作(と映画)は all along through all my flying の後ろの all を(うっかり?)落としてはいるが。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3144】

 

意外にも実は誰も Jr. を付けて呼ばれてなかった件―

 

その1273~1274

 

その 691 で―

 

実は もうひとつ気になってたことがあって、ジョン・P・ライアンが 7人を紹介する際に リロイ・G・クーパーにだけ Jr. を付けずに呼ぶんですよ、他の 3 人(グレン、シェパード、シラー)は ちゃんと付けて呼ぶのに。

 

これは原作(キース・グレナンの紹介)のままのセリフだからなのは明らかですけど(←ただし、グリソムを「ヴァージル・I・ガス・グリソム」と呼んでるのは、その後のライフ誌との契約シーンの前フリか)、実際は どうだったんでしょう―原作がゴードン・クーパーの Jr. を付け忘れてるだけなのか、本当にグレナンが Jr. を付けずに(←単に忘れたにせよ、何か意図があってにせよ)紹介したのか。

 

ま、どうでもいいことなので、今は問題提起(←問題なのか?)するにとどめておきますが―

 

[ 念のために言っておくと、その翌年にクーパーの父親(シニア)は死去している  His father, the late Col. Leroy G. Cooper, was retired from the Air Force in 1957 and died in Denver, Colo., in March 1960.―Qualifications for Astronauts ]

 

と提起した(どうでもいい)問題の予想だにしなかった真相と言うか、その映像を具に確認したところ、なるほどキース・グレナンはクーパーに Jr. を付けなかった―けれど、実際は意外や意外、クーパーのみならず他の誰にも Jr. を付けずに(さらっと)紹介していたのだった。

 

原作は―

 

"It is my pleasure," said Glennan, "to introduce to you—and I consider it a very real honor, gentlemen—Malcolm S. Carpenter,  Leroy G. Cooper,  John H. Glenn, Jr.,  Virgil I. Grissom, Walter M. Schirra, Jr.,  Alan B. Shepard, Jr.,  and Donald K. Slayton…  the nation's Mercury Astronauts!" (The Right Stuff)

 

グレナン長官は続けた、「これらの諸君をみなさんにご紹介できるのは、わたしの欣快とするところであり、かつまた非常な光栄と考えるものであります。さて向かって右から、マルカム・S・カーペンター、リロイ・G・クーパー、ジョン・H・グレン・Jr.、ヴァージル・I・グリソム、ウォルター・M・シラー・Jr.、アラン・B・シェパード・Jr.、ドナルド・K・スレイトン… 以上がわがマーキュリー宇宙飛行士の諸君であります!」 [中公文庫]

 

 このクダリは記録フィルムのトランスクリプト("Press Conference, Mercury Astronaut Team," transcript of press conference, April 9, 1959, National Aeronautics and Space Administration)―

 

"It is my pleasure to introduce to you and I consider it a very real honor, gentlemen, from your right, Malcolm S. Carpenter, Leroy G. Cooper, John H. Glenn, Jr., Virgil I. Grissom, Walter M. Schirra, Jr., Alan B. Shepard, Jr., and Donald K. Slayton, are the nation's Mercury Astronauts."

 

と一致している。

 

ところが(どういうワケか)正真正銘の映像ではクーパーはもとより(まことに意外なことに)グレンもシラーもシェパードも Jr. を付けられてなんかいない(グレナンは誰にも Jr. を付けずに呼ぶ)―にも拘らず、そのトランスクリプトは Jr. 付きなのである。

 

従って、正しい設問は「ライトスタッフ」で >クーパーにだけ Jr. を付けずに呼ぶ のは何故か? ではなく―

 

(クーパー以外の)グレン、シラー、シェパードに Jr. を付けて(実際は付けてないのに)呼ぶのは何故か? 

 

とすべきところなのだろうが、依然として謎は(むしろ深まるばかりで一向に)解明されそうにないのが面映い(と言うか、ホントにどうでもいいことなんだけど)…

 

もとより、トランスクリプトが 100% 完全であるわけないのは自明であるが。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3143】

 

その1271~1272

 

卓上の水差しは実際は途中で回され各自コップで飲み、シェパードなど左隣のシラーに水を注いでやる―二人は海軍仲間にしても(海軍・空軍、そして海兵隊のグレンを含む)7人皆が和気藹々で銘々のコメントに笑いの渦、グレンの(妙に場馴れた)弁が際立っているのはそのとおりだけれど、他の6人が訥弁なんて印象はなく、あくまで相対的に(異様に饒舌なグレンに比べて)口数が少ないだけ。

 

ライトスタッフ」では―

 

奥さんやお子さんは何とおっしゃってますか I'd like to know whether your wives and children had anything to say about this.  (原作 The first reporter who raised his hand wanted to know from each of them whether his wife and children had "had anything to say about this." 最初に手を挙げた記者は、奥さんと子供が「このことについてどう言ったか」ということを一人一人話してくれと求めた)

 

との質問が先ずスレイトンに振られ―

 

喜んでます Mine think it's fine. 

 

次いで梯子(脚立)の上のレッチワース(原作 Some of them were up on a ladder that was propped against the wall under one of the huge lights. 壁の大きな照明の下に立てかけたはしごに登っているものも何人かいた)がシラーを指名し―

 

家族は賛成です They're all for it. 

 

と(あのシラーが情けないほど)おずおずと返答するように(脚色して)描く。

 

 

実際の記者会見(Q&A)は先ずスレイトンではなく(たぶん単に右端からの順で)カーペンターに―

 

Q : I would like to ask Lieutenant Carpenter if his wife had anything to say about this, and/or his four children?

 

と質問がなされ―

 

カ : They are all as enthusiastic about the program as I am.

 

Q : How about the others?   Same question.

 

次に(順に)隣のクーパーが―

 

ク : Yes,mine have. Mine are very enthusiastic also. I can answer the same for myself.

 

そしてグレンの―

 

グ : Yes I don't think any of us could go on with something like this if we didn't have pretty good backing at home~  a hundred percent.

 

なる(あの鼻持ちならない) "100 パー" スピーチに続くのである。