【誰にともなしに、独り言レス―その2893】
その384 (2004/ 5/23)
アームストロングは the first astronaut on the moon かもしれんが、エドワーズじゃ金輪際ひとの忠告を聞かん野郎だったよ(the last guy at Edwards to take any advice)と、あのイェーガーをして苦笑させるエピソードとは―
ある日のこと、X-15のフライトを計画していた NACA(NASA)が、着陸地に Smith’s Ranch Lake(dry lake bed 即ち、砂漠化した乾湖の平地のひとつ)を予定してるんだがとイェーガーに相談してきたと思ってください。
前日にそこの上を飛んで雨でびちょびちょだったのを見て知ってたイェーガーが、濡れてるから使えんだろうと応えたところ、今日は乾いてるという報告だったと言うので、「そう思うなら、お好きなように」とあしらったんですね。
ところが不安になった NACA は、アームストロング(←海軍出身で NACA 所属のテストパイロットだった)の T-33 を試しに Smith’s Ranch Lake に着陸させてみるので同乗してやってくれないかと、嫌がるイェーガーに拝みこんで承知させたらしい。
で、イェーガーは(どうなっても責任は持たんぞと断りながらも)渋々アームストロングの操縦する T-33 の後部座席に乗り込む羽目になったのでした―
その385 (2004/ 5/24)
それでも、雨でびちょびちょになった(つまり、もはや dry じゃなくて wet でぬかるんだ) dry lake bed への着陸は絶対に無理だと判っていたイェーガーは、こんこんとアームストロングを諭します―
A 「じゃ、着陸はしない。 タッチ・アンド・ゴーで地面をテストするだけで」
Y 「おまえはアホか。 人ひとり乗せてんだろ、タッチダウンした瞬間に泥にはまって抜け出せんよ、どうあがいても」
にも拘らず、アームストロングは(いっちょまえに)こう嘯いております↓
No sweat, Chuck. I’ll just touch and go.
その余裕こいた言葉とは裏腹に、たっぷり冷汗をかかされる結果になったんですけども―
誰にともなしに、独り言レス―その386 (2004/ 5/25)
エンジニアとしては優秀だが、パイロットとしてはイマイチ、というのがイェーガーによる率直なアームストロング評らしい。
この時もイェーガーの忠告を無視して(アームストロングが言い張るには、じゅうぶん乾いてる)wet な dry lake bed にタッチダウンしたところが、案の定―たちまち車輪が泥にはまって(イェーガーの例によって皮肉な表現では「ハエ取り紙にくっついた蛾」like a moth stuck on flypaper よろしく)いくらフルパワーでふかしても(機体ががたがたするだけで)どうにも脱け出せなくなったんですよ。(←だから言わんこっちゃない。ったく、どこが No sweat なんだか…)
ついにイェーガーは、にっちもさっちも行かなくなった T-33 の後部座席から前の操縦席(のイマイチのパイロット)に向かって↓こう言ったそうです―
「ニール、いい加減エンジンを切ったらどうだ? そりゃ何の役にも立ってないぞ」"Neil,why don't you turn off the sumbitch, it ain't doin' nuthin' for you."
そしてエンジン音が止むと、T-33 のふたりに静寂と沈黙が訪れたのでありました…
参考文献 : American Hero by Chuck Yeager