独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3525】

 

ちなみに、アポロ13ラヴェル船長が(後悔先に立たずの)プラン B 認証してしまった時、一緒にマッティングリー(司令船パイロット)も同意している。

 

その 10 日後くらいに、まさかの風疹疑惑でスワイガートに交代させられるんだから(その2987参照)、ここでマッティングリーが一人でも強硬に突っ撥ねて(タンク交換をさせて)打ち上げを暫し延期させてれば、気持ちよくアポロ13 の(風疹に感染していなかった)プライムクルーとして月ミッションを(むろんトラブル発生もなく)クリアしていた―てな妄想もできましょう。

 

で、いささか不思議なのは誰も変だと思わずに 8 時間も高熱の酸素タンク boil off 状態を(ノー天気に)放置していたってことで、その理由(言い訳)がタンクの温度計(heater meter)表示(ディスプレイ)は 85℉(29℃)止まりで、ゲージが指している(上限の最高値にすぎない)温度をモニターして異常(unusual)なしと判断していたとか―って… マジ?

 

ヒータのサーモスタットは 80℉(27℃)でスイッチ・オフになるんじゃないの?

 

タンク内温度表示が最高の 85℉ まで振り切れてるんだったら変でしょ、サーモが利いてないとか、もっと温度は沸騰してるかもとか、ちったぁ異常(off-nominal)を疑わないのか?

 

普段なら誤差の範囲と見れないこともないかもしれないが、ノーマルに detanking できなかった(どっか悪いと分ってる)アブノーマル酸素タンクの長時間 boil off (the unusually long heater operations)にしてはリスク管理が雑で甘いでしょ。

 

こんな体たらくじゃ、フェイルセーフ(バックアップ・システム)が脆くも破綻していると言わざるを得ませんね。

 

もしも、この boil off の最中に(攪拌ファンも回してるんだし)酸素タンクが爆発していたなら、雁首並べてプラン B 謀議に加担した NASA(KSC)、ノースアメリカンとビーチクラフト、それにラヴェル船長とマッティングリーらは骨身に沁みて思い知らされていただろう、この地上で。

 

けれど実際には、今や時限爆弾と化した № 2 酸素タンクと共に勇躍 アポロ13 は月に向かう羽目になったわけで、哀れ(何~にも知らない)ラヴェル船長の運命や如何に…(なのでマッティングリーこそ the lucky dog だったって話ですよ)

 

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3524】

 

渋々でも嫌々でもラヴェル船長はプラン B(液体酸素の気化方式)を了承して go サインを出した―即ち、これが “go” fever であって、その時は自覚(症状)なしにイケイケ・モードに陥っていたと後からしか思いが至らない。

 

酸素タンク(液体酸素)の boil off はヒータで(じんわり、まったり)27℃(80℉)くらいに温めてやって(ゆっくり、のんびり)蒸発・放出させるので乱暴で危うい手順では決してないにしても、なヒータの使い方が推奨されてるなんてわけもなかろうに。

 

酸素タンクは問題なく充填できさえすればミッションには事足りるし、detanking てのは地上(pre-flight test)でしかやらないんだから、とにかく空になりゃ OK(文句あるまい)てなスタンスだったか。

 

で、当然その電源は地上(ground power)から引っ張る―もはや奈落の宇宙(?)への一本道を進んでいることに誰も気付かぬまま。

 

さて、ヒューマンエラーは常に起こる法則に違わず、アポロ司令船(CSM)の当初の設計で 28 VDC 仕様だったものをケネディ宇宙センター(KSC 発射台)の 65 VDC に合わせてパワーアップ改訂したはずだったのを、ノースアメリカンが酸素タンクの製造を下請けに出したビーチクラフト Beechcraft 社の(たぶん単なる)ミスで、ヒータのサーモスタット(スイッチ)だけ見落としたか 28 V を 65 V に規格変更せずスルーされていた―ゆえに、地上で電源を投入して酸素タンクのヒータをオンにするやサーモスタット(接点)が溶着してバカになってしまい、いつまでたってもスイッチ・オフ状態にならない。(くっついて普通に通電してるから)

 

タンク内温度 27℃ でサーモスイッチが切れる前提の boil off のつもりが、延々とヒータ(65 V power)加熱し続けること 8 時間…

 

そりゃ、プラン B の狙いどおり液体酸素は消えてなくなりますよ、きれいさっぱり。

 

ただし、当然それだけじゃ済みませんで、推定 538℃(1000℉)以上にも達したタンク内の攪拌(ファン)モーターのテフロン(被覆電線)が焼け剥がれたと考えられる。

 

もちろん絶縁のテフロンは優れて耐熱・難燃性だけれど、そこは酸素が充満したタンクの中… ほら、何か思い当たってゾッとしません?

 

そう、アポロ 1 の火災事故(その2908~9参照)―

 

アポロ 1 の司令船は地上テストで純粋酸素に満たされた内部が突如として炎に包まれる。

 

否応なしに重なるでしょ?

 

アポロ13 の酸素タンク ≒ アポロ1 の司令船という(厭~な)気がして滅入ってくるが、幸か不幸かアポロ13(の酸素タンク)は地上では爆発しなかった―まぁ、やはり幸いだったと言うべきか。(むしろ地上テスト中なら大惨事になってもおかしくないし)

 

ちょっと違う意味でラヴェル船長は―

 

"I have to congratulate Gene Cernan, Tom Stafford, and John Young, the lucky dogs, for getting rid of it."

 

と、ヤバすぎ酸素タンクの最初の持ち主(アポロ10 のサーナン、スタフォード、ヤング)に冗談めかして苦情を入れてます―そっちで爆発しなくてよござんしたね、と。

 

もっとも、事はアポロ10 から(グレードアップのため)取り外して後に始まってるんで、仮にアポロ10 に設置したままなら(地上でも宇宙でも)爆発はしてないだろうけど。

 

それに(落っことしたのを元に戻して使ったとしても)地上テストで酸素タンクに何か異常があったら、アポロ10 のスタフォード船長は go サインを出さないでしょ、絶対に。(月面着陸の dress rehearsal だから―その2949~50参照)

 

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3523】

 

そもそもから考えると(考えなくても分かるけど)、そもそもの事の発端は一本のネジの外し忘れヘマだったぁ!な~んて単純化しすぎの話じゃなくて、そもそもアポロ宇宙船(プログラム)は過剰なまでのフェイルセーフ(念には念のバックアップ・システム)が確立している(ことになっている)にも拘わらず、それでも起るはずのない(ミスの連鎖による)事故は発生した。

 

結論から先に言うと(とっくに言ってるが)、スケジュールが遅れたって(ちゃんと適切に)不具合のないタンクに交換しておけば酸素タンクの爆発は起きてないでしょ、ってこと。(その2990、2999、3520参照)

 

アポロ13 の爆発した酸素タンク O₂ tank № 2 は最初アポロ10 の機械船(service module SM-106)に載せてたもので、その頃は電磁干渉(electromagnetic interference)の問題があり、№ 1 タンクと№ 2 タンクをセットした据え付け棚(oxygen shelf)全体を取り外してアップグレード redesign(修正・改良)し、後回しで a later spacecraft 即ち後のアポロ13(SM-109)に充当したという経緯らしい。

 

作業の際(October 21, 1968)shelf ごとクレーンでリフトしてたら № 2 タンク側を固定してたボルトは外してたのに(うっかり)№ 1 タンク側のボルトを付けたままだったんで、№ 2 タンク側だけ 5 cm(2 inches)ばかり持ち上がるやガタンッと落下して(元に戻って)しまった―外見は別にどうってダメージもなかったけれど、この時どうもタンク内の fill(vent)tube(パイプ)に歪みが生じた(緩んだ)らしいんですね、中までチェックしようがなく気付かれもしなかった(さして気にもされなかった)けども。

 

で、アポロ13 打ち上げ前の地上テスト countdown demonstration test(CDDT March 16, 1970~)、この(アップグレード済み oxygen shelf の)№ 2 酸素タンクに液体酸素を充填しテスト(打ち上げリハーサル)が順調に終了後、いざ(気体酸素 gaseous oxygen を注入し中身の液体酸素 liquid oxygen を圧し出して)抜き取ろうとしたところ、ゆるゆるでスカスカのパイプ(a loosely fitting fill tube)のせいなのか「あらっ? 全然 抜けんじゃん… どうゆうこと?」てな(気の抜ける)事態になった―

 

ここが運命の分かれ道だった気がしますね、わたしは。

 

これが例えばアポロ11 だった場合なら 100% この時点で the troublesome oxygen tank を(当り前に操作できるものに)交換してるはず。(どっか悪いけど、まぁいいっかぁなんて軽~いノリで初の有人月着陸に向かうわけないから―命より?大事だから酸素は―燃料電池 fuel cell に必須だから―それで発電して水もできるんだから―今更で申し訳ないけど)

 

が、もうアポロ11(July 1969)、アポロ12(November 1969)と 4 人のムーンウォーカーが見事に成功してるんで、アポロ13(April 1970)ともなると世間の注目も薄らいできたし、まぁいいっかぁ的ネガティブ “go” fever とでも言うか、フェイルセーフへの過信(慢心)による(このままで)イケイケ気分だったのか―

 

面倒でもバラして分解点検してみるなど手間暇かけず、どうせアポロ10 から取り外す時にドジって配管ねじ曲げたせいとかだろうとの(タンク履歴からの)憶測で、手っ取り早くタンク内のヒータで液体酸素を気化して排出 detanking O-ka~y(問題な~し)と相成った―って、手っ取り早くたってタンクを空にするのに何時間もヒータで熱(boil off)してるんですよ、な安易かつ横着な姿勢でいいのか?

 

いくら厳重なバックアップ・システムがあろうと、たとえ想定内のセカンド・チョイスであっても、やむを得ずプラン B(それダメ~的オプション)を選んでしまった―ここが運命の分かれ道と言う他ないでしょう。

 

※ 果たせるかなジム・ラヴェルは(まことに愚かにも)―

 

"Hold it. Wait a second. I'm riding on this spacecraft. Just go out and replace that tank."

 

と、その時タンクの交換を断乎として主張するべきだったと後になって(つくづく)悔やみ反省しております。(遅せーよ、ったく)

 

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3522】

 

リーバーゴットの “I'd sure like to”、ジーン・クランツの “at their convenience”、ルーズマの “when you get a chance” という言い方でも分るが、スワイガートの(基本ルーティンを逸脱した)タンク攪拌のニュアンスは管制からの指示と言うより要望(頼まれ事)であって、たとえ何にも考えずに(お利口さんなんでちゅよ、ホントは)ぼ~っと攪拌ファンのスイッチを入れてしまったとしてもスワイガートに責められるべき点は露ほどもなく、どころか結果が示しているのはスワイガートなればこその chance で奇跡の引き金を引いていた(おかげで未使用の LM を救命ボートにフル活用できた)という見方すらできる事実。(←この逆転の発想的なタイミングの問題は Apollo 13's warning system engineer の Jerry Woodfill によっても提唱されている―13 Things That Saved Apollo 13, Part1: Timing)

 

にも拘らず「アポロ 13」で理不尽に(ネチネチ、うだうだ)難癖を付けるヘイズに This is not my fault ! と激高するスワイガートを人間臭く見せる(seem more human)ためのハリウッド式脚色だなんて(その3328参照)しょーもなくも片腹痛し―こんな浅~いペラペラ捏造は純正ライトスタッフ批判の対象には全然なりませんて。

 

逆にスワイガートを「さすがノースアメリカンの司令船パイロット、よくぞグッタイミングの攪拌してくれたなぁ、おかげで命拾いしたよ」とヘイズが手放しで褒めて、「いや~、うるさく催促されてたんで、おやすみ前にスイッチオンしたら、たまたま結果オーライだっただけだし…」とスワイガートが照れる―てな感じでよくない?

 

何にしてもリーバーゴット(EECOM)がジーン・クランツ(Flight)にクルーが寝る前にタンクの攪拌をさせるよう示唆するシーンは(もや~っとじゃなく)はっきり分かる仕方で描いたほうが絶対よかったと思うけど。

 

些細な(心配するまでもない)タンク圧力低下アラートで既にクルーが安眠を妨害されてた事情も示しておくと更によいでしょう。

 

参考:船長の(眠ってんのに警報が鳴ってビビりまくったよ)クレーム

 

046:44:36 Lovell: It might be interesting that just after we went to sleep last night we had a Master Alarm and it really scared us. And we were all over the cockpit like a wet noodle.

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3521】

 

「アポロ 13」で宇宙からの TV show live(文字どおり地上の TV 放送ではどこもオンエアされなかった)船内実況生中継シーンに一瞬(ミッション・コントロールの)ジーン・クランツ Gene Krantz(Flight director)が誰かと内線通話する(何かを確認している)カットが唐突に挟まれる―

 

EECOM, that... that stir's gonna be on both H2 and both O2 tanks, is that correct ?

 

ここは(いきなり何のこっちゃ?で)マニアックにもほどがあると言うか、事情通マニア向け(くすぐり)サービスとも感じられ、スワイガートがアホみたいに酸素タンクの攪拌(による爆発)をやらかす(ように捏造することへのエクスキューズ的な)背景説明でしょう。(説明不足すぎだけど)

 

呼びかける相手(EECOM)は管制官(Electrical, Environmental and COMmunication systems 担当)サイ・リーバーゴット Sy Liebergot で、水素タンク(×2)と酸素タンク(×2)を攪拌するよう進言してきたんですね、きっと。

 

この時の実際のやりとり―

 

55:47

 

EECOM:And at the same time, I'd sure like to have a cryo stir, all 4 tanks.

 

FLIGHT:Let's wait until they get settled down a little more.

 

それをジーン・クランツは CapCom(ルーズマ)に指示する―

 

55:52

 

FLIGHT:CAPCOM, looks like the last item we need here is a stir on H₂ and O₂ at their convenience.

 

CapCom:Okay.

 

そしてルーズマがスワイガートに―

 

"13, we've got one more item for you, when you get a chance. We'd like you to stir up the cryo tanks."

 

と伝えた。(その3519参照)

 

※ 「アポロ 13」では後ろのコンソールのリーバーゴットが何やらモニターの異変(おそらくタンクの圧力低下を示すアラート)に訝し気の細か~い演技を見せてますよ、目ざといマニア向けに。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3520】

 

蛇足

 

スワイガートに交代せずマッティングリーのままだったら攪拌スイッチを入れる頃合いは(when you get a chance の任意なのだから)全く展開が違っていただろうし(バタフライ効果)、酸素タンクの爆発は不可避なのだろうから LM を酸素や電力の供給源として使える chance(タイミング)で起こったかは大いに疑わしい。

 

そう考えると(考えなくても分かるけど)、はからずもマッティングリーがスワイガートに交代させられたからアポロ13 の Successful Failure があるという言い方もできましょうか。

 

《過去レス復元コーナー》

 

その 1096

 

当時、ケネディが大胆にして派手に撒き散らした病原性ウイルス(月に行くよ~ん宣言)のせいで NASA に蔓延していた “go” fever は、ついにアポロ11 で(期限内にケネディの公約を果たし)その峠を越して鎮静化に向っていたと思われるが、それでもアポロ13 は初の科学ミッション(H-mission)―隠然とイケイケ熱がぶり返していたんじゃなかろうか。

 

例えば、その 375(2004/ 5/ 8)で >アポロ13 で爆発した酸素タンクは、もともとアポロ 10 に設置されてたのを予め移し替えたやつだったとか―その取り外し・取り付け作業の際に、配線かどっかを(ギギッ、ガリガリッてな感じで)傷めて、そのまま内部の点検まではせずにしてたのが事故の原因ということになってるようですね と書いたけれど、正確に言うと作業の際(1968年)に迂闊にも酸素タンク(oxygen tank 2)をガガッ、ガタンてな感じで(5センチほど)落としてしまい(タンクそのものにはダメージはなかったものの)内部のドレーン・バルブ(パイプ)が緩んだ(ずれた)んですね。

 

そのせいで、[地上テストの際] 通常の手順では中身の液体酸素を上手い具合に抜けなくて、タンク内のヒータで加熱して気化させるという賢くも手っ取り早い(と言うか、横着な)方法をとった(←悪いことに電圧の規格変更ミスでサーモスタットがバカになっていてヒータが正常に切れず、高熱で配線が焼けて剥き出しになり、その裸電線が本番の月に向かう途中スワイガートが攪拌ファンのスイッチを入れたとたんスパークして酸素タンクを爆発させるに至った)―悠長にタンクごと交換していたらミッションの遅れを招くので。 (事故は電気系統など幾つかの不具合が重なって起こっているが、要はタンクごと交換していたら他がどうあれ爆発なんかしなかったに違いない)

 

ミッションの遅れを避けるため(当然 コストの問題とも関わってくるし)安全性が疎かになる―少なくとも慎重さを欠いたイケイケ(we’ve got to keep going, got to keep going, got to keep going!)モードになる。

 

まさに “go” fever の症状…

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3519】

 

O₂ tank 攪拌におけるスワイガートの奇跡と呼ぶべき件

 

アポロ13 の酸素タンク爆発はスワイガートが管制(ルーズマ)からの要請に応えて攪拌ファンのスイッチを入れるや起る―

 

タイムライン(その2996参照)

 

55:52:58 CapCom (Jack Lousma): "13, we've got one more item for you, when you get a chance. We'd like you to stir up the cryo tanks."

 

55:53:12 Swigert: "Okay. Stand by."

 

55:53:20 Oxygen tank No. 2 fans turned on.

 

55:55:20  Swigert: "Okay, Houston, we've had a problem here."

 

55:55:28 Lousma: "This is Houston. Say again please."

 

55:55:35 Lovell: "Houston, we've had a problem. We've had a main B bus undervolt." 

 

 

「アポロ 13」を見てアホのスワイガートがアホみたいに(何にも考えずに)スイッチを入れたりしなけりゃ爆発しなかった―なんて勘違いさせられてるかもしれないけれど、あれが(打ち上げ後)初めてタンクの攪拌をしでかしたわけじゃなくて実際は 5 回目のこと。

 

本来、タンクの攪拌は 24 時間毎(once/day)のルーティン(a standard chore for the crew)だったのが № 2 タンクのゲージ(センサー)が不正確にしか読めなかったので管制は不具合のトラブルシューティング的にファンを頻繁に作動させるようクルーに促していた。(ルーズマの when you get a chance という頼み方にも窺える)

 

Flight Journal では 023:20、036:47、046:44 に管制から攪拌希望の交信があり、4 回目のジョー・カーウィンcapcom)は―

 

051:07:08 Kerwin: Roger, 13. Because of the O2 tank 2 quantity sensor drop out, EECOM wants to keep a little closer track of the cryo quantities, and he's going to be asking you to stir all the cryo tanks at slightly more frequent intervals than had been planned, and the first time is now, and we will be calling you probably every 5 or 6 hours, except during sleep period and high activity periods. We'd like you to do it now. Over.

 

と明快に事情説明している。(なので、ヘイズがスワイガートに「攪拌する前に目盛りを読んだのか」なんて詰る脚色は意味不明の中傷でしかない―その3328参照)

 

仮に(what if の話にはなるが)5 回の攪拌スイッチオンで(ついに攪拌モーターのテフロン被覆の剥がれた電線からスパークして)酸素タンクが爆発する流れ(プロセス)にあったのだとすれば、通常なら 120(24×5)時間後に起った現象だったはずで、スケジュールでは既にラヴェルとヘイズは(CM から分離した)LM で月面に降り立っている(たぶんアクエリアス内で休憩中)。

 

だとすると、その場合スワイガートは(月軌道上)一人っきりで CM のトラブル発生に対処しなければならない("Okay, Houston, I've had a problem here.")―って…(酸素も電力も喪失した孤立無援の司令船、命綱の LM なしに)どう対処する?

 

たとえ都合よく月面から LM(ラヴェルとヘイズ)が瀕死の CM に戻ってこれたとしても(まだ使用前だったからこそ LM は救命ボートになりえたわけで)もはや LM lifeboat としては役立つまいし、フツーに万事休すでしょ、どう考えても。(考えなくても分かるけど)

 

つまり、スワイガートが攪拌スイッチを入れたせいで爆発したとして、それを正しく言うならスワイガートが絶妙の when you get a chance で攪拌スイッチをオンにしてタンクを爆発させてくれたおかげでアポロ13 は地球に帰還できたのであって、そのスワイガートの任意の神対応―まさしくスワイガートの奇跡だと感じ入る次第です。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3518】

 

《過去レス復元コーナー》

 

その 1111

 

ロン・ハワードの「アポロ 13」でも(メル・ブルックスならずとも)面白いセリフがあり、スワイガートが(マッティングリーに指示されて) CM を再起動させるシーン、ひどく結露して水滴だらけの計器パネルのスイッチ(メインバス B)を入れようとするが、もしもショートしたら一巻の終わり、その時(吹き替えで)―

 

「トースター抱いてシャワー浴びる気分だぜ」

 

と呟く。 (字幕は舌足らずに「水浸しのトースターだな」)

 

ホントはもっとヒネッた言い回しをしていて―

 

It's like trying to drive a toaster through a car wash.

 

つまり、toaster (← roadster と音が似てる?)を運転して洗車機を抜けようとしているみたいだというジョーク。

 

ただ、吹き替えはスワイガートのシャワー(with a girlfriend)シーンに(いみじくも)かかってるので、抱いてる相手が(電源の入った)トースターだったらとイメージ(ニヤリと)させてくれる(いかにもスワイガートが言いそうな)巧いセリフになってますね。

 

 

参考:ジム・ラヴェルの証言―Apollo Expeditions to the Moon("Houston,We've Had a Problem" by James A. Lovell NASA - SP-350 January 1, 1975)

 

A most remarkable achievement of Mission Control was quickly developing procedures for powering up the CM after its long cold sleep. They wrote the documents for this innovation in three days, instead of the usual three months. We found the CM a cold, clammy tin can when we started to power up. The walls, ceiling, floor, wire harnesses, and panels were all covered with droplets of water. We suspected conditions were the same behind the panels. The chances of short circuits caused us apprehension, to say the least. But thanks to the safeguards built into the command module after the disastrous fire in January 1967, no arcing took place. The droplets furnished one sensation as we decelerated in the atmosphere: it rained inside the CM.

 

まるで雨で濡れたようになっていた司令船内は見るからにショートする惧れがあったものの、アポロ 1 後になされた安全対策(safeguards)のおかげで発火せずに済んだ―と、ラヴェルは明言しております。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3517】

 

スワイガートは a test pilot/ astronaut/ politician(/ bachelor)としての短い生涯(August 30, 1931~December 27, 1982)だったわけだけど、やはり不運だったとしか言えない―コロラド州選出下院議員に就任する一週間前に死去(bone marrow cancer)。

 

スワイガートがアポロ13 のバックアップのままだったら(マッティングリーが交代させられず飛んでいたら)アポロ16 の CMP になってたはずで(実際そのローテーションどおりマッティングリーがアポロ16 で飛んだし)、当たり前に月着陸ミッションを成功させていただろう。(アポロ13 に比べりゃ何ら印象には残らなかったにせよ)

 

せっかくスレイトンが決めてくれていた ASTP(Apollo-Soyuz Test Project)の CMP も(切手スキャンダルの流れ弾にやられた感じで)取り消し処分になってしまった。(その2988、3331参照)

 

ガス・グリソムはマーキュリーでリバティベルを沈めて惨憺たるものだったが、ジェミニの(今度は沈みませんよとばかりの)モリーブラウン Unsinkable Molly Brown(その3084参照)で失地回復し、ついには月着陸の First Man にさえなりえたと思われたのにアポロ 1 の火災事故―あまりに痛ましくも悲運の最期だった。

 

ついてない宇宙飛行士ツートップの二人、実はスワイガートのアポロ13 とグリソムのアポロ 1 には指摘するのも辛くなる因縁めいた関連がある。

 

「アポロ 13」でスワイガートが節電のため power-down していた司令船の電源を再び入れる際のセリフ(これショートすんじゃね?)―

 

Ken, there's an awful lot of condensation on these panels. What's the word on these things shorting out ?

 

スワイガートは水滴まみれのスイッチパネルがショートして発火したりしないかビビり腰で操作するが、何事もなく司令船の電気系統は復活―

 

ここですよ、冒頭のアポロ 1 の火災事故シーン(その2996参照)にも意味付けしうる(意図されていないとしても深読みすべき)ポイントは。

 

あの地上テスト司令船火災事故の後、NASA(North American)は司令船 Command Module 内部を(結露でショートなど起らないよう)全面的に不燃処理の fire-proof 仕様に見直していて、でなけりゃアポロ13 のオデッセイ(CM)は再突入以前に火だるまになってた可能性が嫌と言うほどあったろう。

 

スワイガートの司令船(スリープ状態からの)power-up シーンはアポロ月ミッションがアポロ 1 の犠牲の上に立っていることを如実に示してくれているってことです。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3516】

 

そもそもスワイガートは学歴からして全~然アホじゃありません。

 

コロラド大で学士(機械工学)Bachelor’s in Mechanical Engineering in 1953、レンセラー工科大で修士(航空宇宙工学)Master’s in Aerospace Engineering in 1965、おまけに(ついでに?)ハートフォード大で修士経営学)Master's in Business Administration in 1967 になっている。(お利口さんなんでちゅよ)

 

NASA 宇宙飛行士 Group 5(the 19 astronauts)1966 に採用される前は North American Aviation の engineering test pilot(1964~6)。

 

いくら私生活がチャラチャラしてたって文句のない(とやかく言われない)仕事がデキる有能テストパイロット/アストロノートとしての確たる定評が間違いなくあった。

 

参考: 同期(Group 5)のアル・ウォーデンの証言(Al Worden’s Falling to Earth)―

 

All of this behavior was generally considered okay; no one cared about Jack’s private life as long as he did his job as well. Thankfully, he was very good at what he did. He’d been a fighter pilot and a great test pilot before joining NASA and was well regarded in the flying fraternity.

 

 

同じく後に国会議員になったジョン・グレンはマスキンガム大(Muskingum College)で he received his Bachelor of Science degree in Engineering などと(詐称)されているけれど(その2935~6参照)、学歴から見る限り(ミスター・クリーンマリーンと対極的なチャラチャラの)スワイガートは政治家としても優秀だったかもしれない―その資質を証明する間は不運にもなかったが。(その3000参照)