独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3524】

 

渋々でも嫌々でもラヴェル船長はプラン B(液体酸素の気化方式)を了承して go サインを出した―即ち、これが “go” fever であって、その時は自覚(症状)なしにイケイケ・モードに陥っていたと後からしか思いが至らない。

 

酸素タンク(液体酸素)の boil off はヒータで(じんわり、まったり)27℃(80℉)くらいに温めてやって(ゆっくり、のんびり)蒸発・放出させるので乱暴で危うい手順では決してないにしても、なヒータの使い方が推奨されてるなんてわけもなかろうに。

 

酸素タンクは問題なく充填できさえすればミッションには事足りるし、detanking てのは地上(pre-flight test)でしかやらないんだから、とにかく空になりゃ OK(文句あるまい)てなスタンスだったか。

 

で、当然その電源は地上(ground power)から引っ張る―もはや奈落の宇宙(?)への一本道を進んでいることに誰も気付かぬまま。

 

さて、ヒューマンエラーは常に起こる法則に違わず、アポロ司令船(CSM)の当初の設計で 28 VDC 仕様だったものをケネディ宇宙センター(KSC 発射台)の 65 VDC に合わせてパワーアップ改訂したはずだったのを、ノースアメリカンが酸素タンクの製造を下請けに出したビーチクラフト Beechcraft 社の(たぶん単なる)ミスで、ヒータのサーモスタット(スイッチ)だけ見落としたか 28 V を 65 V に規格変更せずスルーされていた―ゆえに、地上で電源を投入して酸素タンクのヒータをオンにするやサーモスタット(接点)が溶着してバカになってしまい、いつまでたってもスイッチ・オフ状態にならない。(くっついて普通に通電してるから)

 

タンク内温度 27℃ でサーモスイッチが切れる前提の boil off のつもりが、延々とヒータ(65 V power)加熱し続けること 8 時間…

 

そりゃ、プラン B の狙いどおり液体酸素は消えてなくなりますよ、きれいさっぱり。

 

ただし、当然それだけじゃ済みませんで、推定 538℃(1000℉)以上にも達したタンク内の攪拌(ファン)モーターのテフロン(被覆電線)が焼け剥がれたと考えられる。

 

もちろん絶縁のテフロンは優れて耐熱・難燃性だけれど、そこは酸素が充満したタンクの中… ほら、何か思い当たってゾッとしません?

 

そう、アポロ 1 の火災事故(その2908~9参照)―

 

アポロ 1 の司令船は地上テストで純粋酸素に満たされた内部が突如として炎に包まれる。

 

否応なしに重なるでしょ?

 

アポロ13 の酸素タンク ≒ アポロ1 の司令船という(厭~な)気がして滅入ってくるが、幸か不幸かアポロ13(の酸素タンク)は地上では爆発しなかった―まぁ、やはり幸いだったと言うべきか。(むしろ地上テスト中なら大惨事になってもおかしくないし)

 

ちょっと違う意味でラヴェル船長は―

 

"I have to congratulate Gene Cernan, Tom Stafford, and John Young, the lucky dogs, for getting rid of it."

 

と、ヤバすぎ酸素タンクの最初の持ち主(アポロ10 のサーナン、スタフォード、ヤング)に冗談めかして苦情を入れてます―そっちで爆発しなくてよござんしたね、と。

 

もっとも、事はアポロ10 から(グレードアップのため)取り外して後に始まってるんで、仮にアポロ10 に設置したままなら(地上でも宇宙でも)爆発はしてないだろうけど。

 

それに(落っことしたのを元に戻して使ったとしても)地上テストで酸素タンクに何か異常があったら、アポロ10 のスタフォード船長は go サインを出さないでしょ、絶対に。(月面着陸の dress rehearsal だから―その2949~50参照)