独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3520】

 

蛇足

 

スワイガートに交代せずマッティングリーのままだったら攪拌スイッチを入れる頃合いは(when you get a chance の任意なのだから)全く展開が違っていただろうし(バタフライ効果)、酸素タンクの爆発は不可避なのだろうから LM を酸素や電力の供給源として使える chance(タイミング)で起こったかは大いに疑わしい。

 

そう考えると(考えなくても分かるけど)、はからずもマッティングリーがスワイガートに交代させられたからアポロ13 の Successful Failure があるという言い方もできましょうか。

 

《過去レス復元コーナー》

 

その 1096

 

当時、ケネディが大胆にして派手に撒き散らした病原性ウイルス(月に行くよ~ん宣言)のせいで NASA に蔓延していた “go” fever は、ついにアポロ11 で(期限内にケネディの公約を果たし)その峠を越して鎮静化に向っていたと思われるが、それでもアポロ13 は初の科学ミッション(H-mission)―隠然とイケイケ熱がぶり返していたんじゃなかろうか。

 

例えば、その 375(2004/ 5/ 8)で >アポロ13 で爆発した酸素タンクは、もともとアポロ 10 に設置されてたのを予め移し替えたやつだったとか―その取り外し・取り付け作業の際に、配線かどっかを(ギギッ、ガリガリッてな感じで)傷めて、そのまま内部の点検まではせずにしてたのが事故の原因ということになってるようですね と書いたけれど、正確に言うと作業の際(1968年)に迂闊にも酸素タンク(oxygen tank 2)をガガッ、ガタンてな感じで(5センチほど)落としてしまい(タンクそのものにはダメージはなかったものの)内部のドレーン・バルブ(パイプ)が緩んだ(ずれた)んですね。

 

そのせいで、[地上テストの際] 通常の手順では中身の液体酸素を上手い具合に抜けなくて、タンク内のヒータで加熱して気化させるという賢くも手っ取り早い(と言うか、横着な)方法をとった(←悪いことに電圧の規格変更ミスでサーモスタットがバカになっていてヒータが正常に切れず、高熱で配線が焼けて剥き出しになり、その裸電線が本番の月に向かう途中スワイガートが攪拌ファンのスイッチを入れたとたんスパークして酸素タンクを爆発させるに至った)―悠長にタンクごと交換していたらミッションの遅れを招くので。 (事故は電気系統など幾つかの不具合が重なって起こっているが、要はタンクごと交換していたら他がどうあれ爆発なんかしなかったに違いない)

 

ミッションの遅れを避けるため(当然 コストの問題とも関わってくるし)安全性が疎かになる―少なくとも慎重さを欠いたイケイケ(we’ve got to keep going, got to keep going, got to keep going!)モードになる。

 

まさに “go” fever の症状…

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3519】

 

O₂ tank 攪拌におけるスワイガートの奇跡と呼ぶべき件

 

アポロ13 の酸素タンク爆発はスワイガートが管制(ルーズマ)からの要請に応えて攪拌ファンのスイッチを入れるや起る―

 

タイムライン(その2996参照)

 

55:52:58 CapCom (Jack Lousma): "13, we've got one more item for you, when you get a chance. We'd like you to stir up the cryo tanks."

 

55:53:12 Swigert: "Okay. Stand by."

 

55:53:20 Oxygen tank No. 2 fans turned on.

 

55:55:20  Swigert: "Okay, Houston, we've had a problem here."

 

55:55:28 Lousma: "This is Houston. Say again please."

 

55:55:35 Lovell: "Houston, we've had a problem. We've had a main B bus undervolt." 

 

 

「アポロ 13」を見てアホのスワイガートがアホみたいに(何にも考えずに)スイッチを入れたりしなけりゃ爆発しなかった―なんて勘違いさせられてるかもしれないけれど、あれが(打ち上げ後)初めてタンクの攪拌をしでかしたわけじゃなくて実際は 5 回目のこと。

 

本来、タンクの攪拌は 24 時間毎(once/day)のルーティン(a standard chore for the crew)だったのが № 2 タンクのゲージ(センサー)が不正確にしか読めなかったので管制は不具合のトラブルシューティング的にファンを頻繁に作動させるようクルーに促していた。(ルーズマの when you get a chance という頼み方にも窺える)

 

Flight Journal では 023:20、036:47、046:44 に管制から攪拌希望の交信があり、4 回目のジョー・カーウィンcapcom)は―

 

051:07:08 Kerwin: Roger, 13. Because of the O2 tank 2 quantity sensor drop out, EECOM wants to keep a little closer track of the cryo quantities, and he's going to be asking you to stir all the cryo tanks at slightly more frequent intervals than had been planned, and the first time is now, and we will be calling you probably every 5 or 6 hours, except during sleep period and high activity periods. We'd like you to do it now. Over.

 

と明快に事情説明している。(なので、ヘイズがスワイガートに「攪拌する前に目盛りを読んだのか」なんて詰る脚色は意味不明の中傷でしかない―その3328参照)

 

仮に(what if の話にはなるが)5 回の攪拌スイッチオンで(ついに攪拌モーターのテフロン被覆の剥がれた電線からスパークして)酸素タンクが爆発する流れ(プロセス)にあったのだとすれば、通常なら 120(24×5)時間後に起った現象だったはずで、スケジュールでは既にラヴェルとヘイズは(CM から分離した)LM で月面に降り立っている(たぶんアクエリアス内で休憩中)。

 

だとすると、その場合スワイガートは(月軌道上)一人っきりで CM のトラブル発生に対処しなければならない("Okay, Houston, I've had a problem here.")―って…(酸素も電力も喪失した孤立無援の司令船、命綱の LM なしに)どう対処する?

 

たとえ都合よく月面から LM(ラヴェルとヘイズ)が瀕死の CM に戻ってこれたとしても(まだ使用前だったからこそ LM は救命ボートになりえたわけで)もはや LM lifeboat としては役立つまいし、フツーに万事休すでしょ、どう考えても。(考えなくても分かるけど)

 

つまり、スワイガートが攪拌スイッチを入れたせいで爆発したとして、それを正しく言うならスワイガートが絶妙の when you get a chance で攪拌スイッチをオンにしてタンクを爆発させてくれたおかげでアポロ13 は地球に帰還できたのであって、そのスワイガートの任意の神対応―まさしくスワイガートの奇跡だと感じ入る次第です。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3518】

 

《過去レス復元コーナー》

 

その 1111

 

ロン・ハワードの「アポロ 13」でも(メル・ブルックスならずとも)面白いセリフがあり、スワイガートが(マッティングリーに指示されて) CM を再起動させるシーン、ひどく結露して水滴だらけの計器パネルのスイッチ(メインバス B)を入れようとするが、もしもショートしたら一巻の終わり、その時(吹き替えで)―

 

「トースター抱いてシャワー浴びる気分だぜ」

 

と呟く。 (字幕は舌足らずに「水浸しのトースターだな」)

 

ホントはもっとヒネッた言い回しをしていて―

 

It's like trying to drive a toaster through a car wash.

 

つまり、toaster (← roadster と音が似てる?)を運転して洗車機を抜けようとしているみたいだというジョーク。

 

ただ、吹き替えはスワイガートのシャワー(with a girlfriend)シーンに(いみじくも)かかってるので、抱いてる相手が(電源の入った)トースターだったらとイメージ(ニヤリと)させてくれる(いかにもスワイガートが言いそうな)巧いセリフになってますね。

 

 

参考:ジム・ラヴェルの証言―Apollo Expeditions to the Moon("Houston,We've Had a Problem" by James A. Lovell NASA - SP-350 January 1, 1975)

 

A most remarkable achievement of Mission Control was quickly developing procedures for powering up the CM after its long cold sleep. They wrote the documents for this innovation in three days, instead of the usual three months. We found the CM a cold, clammy tin can when we started to power up. The walls, ceiling, floor, wire harnesses, and panels were all covered with droplets of water. We suspected conditions were the same behind the panels. The chances of short circuits caused us apprehension, to say the least. But thanks to the safeguards built into the command module after the disastrous fire in January 1967, no arcing took place. The droplets furnished one sensation as we decelerated in the atmosphere: it rained inside the CM.

 

まるで雨で濡れたようになっていた司令船内は見るからにショートする惧れがあったものの、アポロ 1 後になされた安全対策(safeguards)のおかげで発火せずに済んだ―と、ラヴェルは明言しております。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3517】

 

スワイガートは a test pilot/ astronaut/ politician(/ bachelor)としての短い生涯(August 30, 1931~December 27, 1982)だったわけだけど、やはり不運だったとしか言えない―コロラド州選出下院議員に就任する一週間前に死去(bone marrow cancer)。

 

スワイガートがアポロ13 のバックアップのままだったら(マッティングリーが交代させられず飛んでいたら)アポロ16 の CMP になってたはずで(実際そのローテーションどおりマッティングリーがアポロ16 で飛んだし)、当たり前に月着陸ミッションを成功させていただろう。(アポロ13 に比べりゃ何ら印象には残らなかったにせよ)

 

せっかくスレイトンが決めてくれていた ASTP(Apollo-Soyuz Test Project)の CMP も(切手スキャンダルの流れ弾にやられた感じで)取り消し処分になってしまった。(その2988、3331参照)

 

ガス・グリソムはマーキュリーでリバティベルを沈めて惨憺たるものだったが、ジェミニの(今度は沈みませんよとばかりの)モリーブラウン Unsinkable Molly Brown(その3084参照)で失地回復し、ついには月着陸の First Man にさえなりえたと思われたのにアポロ 1 の火災事故―あまりに痛ましくも悲運の最期だった。

 

ついてない宇宙飛行士ツートップの二人、実はスワイガートのアポロ13 とグリソムのアポロ 1 には指摘するのも辛くなる因縁めいた関連がある。

 

「アポロ 13」でスワイガートが節電のため power-down していた司令船の電源を再び入れる際のセリフ(これショートすんじゃね?)―

 

Ken, there's an awful lot of condensation on these panels. What's the word on these things shorting out ?

 

スワイガートは水滴まみれのスイッチパネルがショートして発火したりしないかビビり腰で操作するが、何事もなく司令船の電気系統は復活―

 

ここですよ、冒頭のアポロ 1 の火災事故シーン(その2996参照)にも意味付けしうる(意図されていないとしても深読みすべき)ポイントは。

 

あの地上テスト司令船火災事故の後、NASA(North American)は司令船 Command Module 内部を(結露でショートなど起らないよう)全面的に不燃処理の fire-proof 仕様に見直していて、でなけりゃアポロ13 のオデッセイ(CM)は再突入以前に火だるまになってた可能性が嫌と言うほどあったろう。

 

スワイガートの司令船(スリープ状態からの)power-up シーンはアポロ月ミッションがアポロ 1 の犠牲の上に立っていることを如実に示してくれているってことです。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3516】

 

そもそもスワイガートは学歴からして全~然アホじゃありません。

 

コロラド大で学士(機械工学)Bachelor’s in Mechanical Engineering in 1953、レンセラー工科大で修士(航空宇宙工学)Master’s in Aerospace Engineering in 1965、おまけに(ついでに?)ハートフォード大で修士経営学)Master's in Business Administration in 1967 になっている。(お利口さんなんでちゅよ)

 

NASA 宇宙飛行士 Group 5(the 19 astronauts)1966 に採用される前は North American Aviation の engineering test pilot(1964~6)。

 

いくら私生活がチャラチャラしてたって文句のない(とやかく言われない)仕事がデキる有能テストパイロット/アストロノートとしての確たる定評が間違いなくあった。

 

参考: 同期(Group 5)のアル・ウォーデンの証言(Al Worden’s Falling to Earth)―

 

All of this behavior was generally considered okay; no one cared about Jack’s private life as long as he did his job as well. Thankfully, he was very good at what he did. He’d been a fighter pilot and a great test pilot before joining NASA and was well regarded in the flying fraternity.

 

 

同じく後に国会議員になったジョン・グレンはマスキンガム大(Muskingum College)で he received his Bachelor of Science degree in Engineering などと(詐称)されているけれど(その2935~6参照)、学歴から見る限り(ミスター・クリーンマリーンと対極的なチャラチャラの)スワイガートは政治家としても優秀だったかもしれない―その資質を証明する間は不運にもなかったが。(その3000参照)

 

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3515】

 

>ホントは凄かったスワイガート

 

「アポロ 13」のアホ丸出しのスワイガートが一瞬だけ(アホはアホなりに)賢い素振りを覗かせるシーンがあって、船長のラヴェルに “That's good thinking.”(お利口さんでちゅねぇ)と褒められる―

 

《過去レス復元コーナー》

 

その 2755~6 (2018/ 5/31)₂

 

CO₂ フィルターのシーンにしても、スワイガートではなく(実際はタッチしてなかったはずの)ヘイズが capcom の指示を受け、3 人で(やけにスワイガートは朦朧として)作る―明らかにスワイガート一人を疎外した(わざとらしくもベタな)構図を崩さないための脚色(方便)だろう。

 

四角で丸い CO₂ フィルターは実際には(ヘイズを除く)スワイガートとラヴェル二人の共同作業で(essentially Jack and I started to build this thing.)、これは想像するに ヘイズが一人で、スワイガートとラヴェルが二人で、それぞれ交代制で眠る(常に誰かは起きている)ようにしていたためらしい。 (we kept somebody awake. And usually it was Fred by himself and Jack and I trying to get some sleep.) (←あざとくも、このシフトを逆転した構図で「アポロ 13」のストーリーは作られているわけです)

 

その1108―

 

そんな(不当に疎外された)スワイガートを「アポロ 13」で最終的にラヴェルが(曲がりなりにもチームの仲間として)認めるのは、救命ボートにしていた LM(アクエリアス)から CM(オデッセイ)に戻り LM を切り離すシーン、計器パネルのスイッチに貼られた付箋("NO" sign)に気づく―

 

L : What is that?

 

S : Oh... I was getting a little punchy and I... I didn't wanna cut the LM loose with you guys still in it.

 

 

スワイガートは(何だか朦朧としてるので)うっかり二人がまだ LM に残ってる内に切り離してしまわないようにと殊勝にもスイッチに "NO" と貼り付けていたもので、実際にラヴェルは(CM に戻らない内にハッチを閉められやしないかと)一抹の不安を感じていたらしく(交信記録に Lovell:"I'm scared Jack will have it closed before I get up there. " とある)、きっとスワイガートから逆疎外(?)されて宇宙におっぽり出されずに内心ホッとしたんでしょう―

 

L : That's good thinking.

 

と真顔で応え、そこでようやく スワイガートの(ずっと引きつっていた)頬がゆるむのだった。

 

参考

 

LM を切り離すや ヒューストンの(たぶん、その時 capcom やってる)マッティングリーの声(←TV の吹き替えでは、手抜きしてるのか勘違いしてるのか、ヘイズが実際に言った「いい船だった She sure was a good ship.」の後、そのままヘイズが「さよなら アクエリアス 今日までありがとう」と続けてるように捏造している)が言う―

 

Farewell, Aquarius.  And we thank you.

 

は、いかにも作りものめいたセリフのようで、実は(その時の本当の) capcom だったカーウィンの名文句。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3514】

 

>「アポロ 13」のスワイガートが「ライトスタッフ」のガス・グリソムと重なり合う のは確かにしても、その意味合いは似て非なる全く異質の別もの―

 

さもスキル不足(ポンコツ)のスワイガートが目盛りをチェックせずにタンクを撹拌したヘマのせいで爆発したかのような特に必要性のない嘘の脚色(その3328参照)とリバティベルのグリソムを(パニックでハッチを吹っ飛ばした)Squirming Hatch Blower として描く必然的な構成(その3099参照)とは話が別次元で重なり合いはしない。

 

「アポロ 13」と「ライトスタッフ」を一緒くた(同じカテゴリー)にする向きもあろうけれど、少なくとも「アポロ 13」のスワイガートは純正ライトスタッフ批判の対象からは完全に外れるのであって、ロン・ハワードフィリップ・カウフマンの違い(決定的な差)は明確です。

 

仮に「アポロ 13」をスワイガートを軸(センター)に描くとするなら(タイトルは "Houston, we've had a problem here.")、チャラチャラの遊び人テストパイロットが宇宙飛行士になり、いざ絶体絶命のトラブルを並外れたスキルを発揮して見事に切り抜ける―なんてのが定番(ハリウッド式)だろうに、そのほうが実際にも近い作りだし。

 

「ジャック・スワイガート物語」でホントは凄かったスワイガートをアピールしてやれば、世間の目(偏見)も変わりますかね。

 

North American レジェンド・テストパイロットの系譜―ジョージ・ウェルチ、ボブ・フーバー、スコット・クロスフィールド そしてアポロ13 のジャック・スワイガート… てなオープニングで。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3513】

 

スワイガート自身は別に独身主義じゃない(“I don’t think I’m a confirmed bachelor”)としながらも生涯(1931~1982)一度も結婚しなかった。

 

アポロ13 帰還後の TV ショー(Apollo 13 Crew - Jim Lovell, Fred Haise, and Jack Swigert on Johnny Carson Tonight Show 8/1/1970)を YouTube などで見ると、スワイガートが意外に生真面目ふうの全~然チャラチャラしてない印象で、メディアが Swigert the bachelor を殊更イジってたのは、通常なら宇宙飛行士の奥さんや子供たちにインタビューしたりして紹介するのに突然にして直前(72 hours prior to launch)の交代で新顔パイロットの(型どおりの)イージーなネタが取れなかったのも一因か。

 

あたふた焦った記者がスワイガートの大家にインタビューして「ここに住んでるよ」なんて訊き出してた(it drove the newsmen crazy because they weren’t quite prepared to report on Jack Swigert and they ran around I saw them interviewing your landlord and the landlord says ‘Yes he lives right here.’)と司会のジョニー・カーソンが笑ってたんで。

 

ちゃんと取材する余裕があったらスワイガートが North American の civilian test pilot だったことを何よりもアピールしてたはず―なぜならスワイガートは司令船パイロット CMP(command module pilot)であり、North American Aviation 製のアポロ司令船  CSM(Apollo command and service module)に誰よりも精通したエキスパートだったと言われてるから。(その3326参照)

 

なので「アポロ 13」でスワイガートがチャラチャラの独身宇宙飛行士に描かれるのは(脚色として)まだしも、司令船パイロットのスキルを未熟で不慣れとする 100% 正しくない作り(印象操作)は致命的で不快にして不要な捏造―だと、わたしは思う。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3512】

 

スワイガートは唯一の独身(Swigert the bachelor)であること(“a girl in every airport from coast to coast” の遊び人キャラ)を不当にイジられまくっていたが(その3329参照)、厳密に言うと唯一の独身ではなくて唯一の(Swigert ≒ swinger てなシャレめかして)チャラチャラした独身宇宙飛行士(the most swinging of all the bachelor astronauts)で、実は交代させられたマッティングリーもアポロ13 の時点では独身だったけれど 2カ月後(in June 1970, two months after Apollo 13)に a steady girlfriend と結婚してるんで、全~然チャラチャラしてない独身だったゆえ。

 

そんな日頃の行ないの結果か、マッティングリーはアポロ16(April 1972)の司令船パイロットとして月ミッションを(船外活動 EVA を含め)成し遂げる―

 

《過去レス復元コーナー》

 

その 1024―

 

「人類、月に立つ」 Part 11 はアポロ16 についてのセグメントながら("The Original Wives' Club" 「栄光の陰で 妻たちのアポロ計画」というタイトルどおりの内容なので)ミッションそのものには殆んど触れられないが、月に向うアポロ16 (CM 内)のケン・マッティングリーが結婚指輪を紛失するシーンで始まり、その指輪は一週間後(地球への帰還途上で)チャーリー・デュークが奇跡的に(目の前をフワフワ浮遊していくのを)発見する―

 

デ : おい、ケン いいもの見つけたぞ(Hey, Ken, guess what I just found.)

 

マ : 何?(What's that?)

 

デ : 指輪(A ring.)

 

マ : 本当かい?(Is that right?)

 

デ : ああ、お前のじゃないか?(Yeah. I think it's yours.)

 

マ : あぁ…ラッキーだった  (Boy, how's that for luck?)

 

デ : ラッキーなんてもんじゃない 凄い幸運だ(That's luck, boy. That is good luck.)

 

 

これは実際の話で、その時のデューク(D)、ヤング(Y)、マッティングリー(M)の会話が交信記録に―

 

D : Guess what I caught floating out the hatch?

 

Y : What?

 

M : What's that -

 

D : A ring.

 

M : Oh, is that right?

 

D : Yeah. I think it's yours.

 

Y : Yeah, it is.

 

D : In fact, it had already gone out and hit you and was coming back when I saw it.

 

M : Boy, how's that for luck?

 

と残っている。 (最後のデュークのセリフは作ってあるのか見当たらない)

 

 

その 1025―

 

細かくてどうでもいいこと(でもないこと)を指摘しておくと、マッティングリーの「あぁ…ラッキーだった」というセリフはデュークが指輪を見つけてくれたことをラッキーだと受け取れるが、交信記録にあるように厳密にはデュークが指輪を見つけた奇跡的な状況をラッキーだったと言っていて、そのウソみたいな状況が(デュークの証言に基づいてに違いない)具体的に描かれている。

 

折りしもマッティングリーはハッチの外(out over the hatch)で EVA の最中、指輪はデュークの目の前をかすめ(一度つかみそこなう)、あわやハッチめがけて外(つまり宇宙)へ流出せんと思いきや、何も気付いてないマッティングリーのヘルメットに跳ね返され、またフワフワ戻ってきたのを今度こそデュークがつかむ―

 

何が起こったかをデュークが説明し(it had already gone out and hit you and was coming back when I saw it.)、それを聞いたマッティングリーが「ラッキーだった」と応えてるのが実際のやりとり。

 

このマッティングリーの(そうとは知らぬ)ヘディング・パスをデュークが巧くキャッチするという絶妙のコンビネーションは、ここでは一切触れられないアポロ13 における例の風疹にまつわる因縁話のハッピーエンド的なオチになってもいようか。

 

 

その 1026―

 

それと、ヤングの発言が削除されているのは意図的な演出に思える―でなければ、最初のマッティングリーが指輪をなくすシーンでは当然そこにいるヤング船長も一緒にワイワイやっており、それなのに指輪が見つかるシーンで(実際には口を挟んでいる)ヤングを外すのは不自然。

 

これは、ヤングと離婚していたバーバラのこともエピソードに描かれるので(「アポロ16 はバーバラのミッションでもある」I think it's her mission too.)、マッティングリーの結婚指輪が奇跡的に見つかるシーンにはテーマ上(←それを指輪が象徴し糸口にする体裁になってるわけだけれど)そぐわないという理由か。 (←流れ的にもバーバラがアポロ16 の打ち上げをココアビーチから見送るシーンの後にある―両手を胸に当てて祈るように見送る、そのバーバラの指にリングはない…)

 

参考

 

アポロ16 の打ち上げは 1972年 4 月16日―前年(夏)にバーバラと離婚したジョン・ヤングは、この時既に(12才年下の相手 Susy Feldman と)再婚していた。

 

ケン・マッティングリーの「俺は新婚だぞ」というセリフ―実際は 1970年(アポロ13 の年)の結婚で、少なくとも新婚ホヤホヤではないはず。 (←ご多分に漏れず結局は離婚)

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3511】

 

元 North American の civilian test pilot で NASA astronaut になったのは(ご存じ)ジャック・スワイガート―急遽 ケン・マッティングリーと司令船パイロットを交代したアポロ 13("Houston, we've had a problem here.")で月をスイングバックして無事に帰還する。(その3324~3331参照)

 

映画「アポロ 13」のスワイガートが「ライトスタッフ」のガス・グリソムと重なり合うんですよねぇ、これが。(スワイガートはコロラド大の機械工学卒)

 

その意味(グリソム経由)でもウェルチはスワイガートとも(わたしの感覚では)繋がっております。

 

 

その3324  再掲―

 

アルカトラズからの脱出」(1979)(その2938参照)から好印象だったフレッド・ウォードは「レモ/第 1 の挑戦」(1985)なんて拾い物を映画館で見たし、「トレマーズ」(1990)も笑えていいねぇ―相棒がケヴィン・ベーコンですよ。

 

ガス・グリソムとジャック・スワイガート―そう見えてしまうのは、わたしだけかいな。

 

その1089

 

「アポロ 13」における嘘(見ようによっては大きな嘘)の一つにスワイガートの(役回り的にネガティブな)描き方がある。

 

その786で―

 

実際のジャック・スワイガートの人となりがどうだったにせよ、わたしは 「アポロ 13」 におけるスワイガートの描き方に(わずかながら) 「ライトスタッフ」 のガス・グリソムと共通するものを感じる―グリソムと同様に スワイガートも何か文句を言おうにも言えなかったので。 (←1982年12月、下院議員に就任する一週間前にガンで死亡)

 

 

その3328  再掲―

 

「アポロ 13」のラストに トム・ハンクスラヴェル)のナレーションがあって、ヘイズは予算削減のためアポロ18 がキャンセルされ二度と飛ばなかった(Fred Haise was going back to the Moon on Apollo 18, but his mission was canceled because of the budget cuts,he never flew in space again.)と語り(←アポロ 13 前にアポロ 20 が、アポロ 13 後にアポロ 18、19 がキャンセルされた―ヘイズの予定ミッションは実際はアポロ 18 ではなくアポロ 19)、続けて―

 

Nor did Jack Swigert. Who left the astronaut corps and was elected to Congress from the state of Colorado,but he died of cancer before he was able to take office.

 

と、スワイガートの死に触れる。

 

これは「ライトスタッフ」のラストのナレーション(リドリーの声)が―

 

The Mercury program was over. Four years later, astronaut Gus Grissom was killed, along with astronauts White and Chaffee, when fire swept through their Apollo capsule.

 

と、ガス・グリソムの死に触れていることと完全にオーバーラップしているように(わたしの目には)映るけれど、「ライトスタッフ」に心酔するロン・ハワード(その3223参照)が「アポロ 13」のスワイガートを「ライトスタッフ」のガス・グリソムに重ね合わせる仕方で(それを 100% 意図してではないとしても、少なくとも明確に意識してに違いない)演出したことの現れ―そして、実はライトスタッフ・ファンであることの(手の込んだ、それでいて遠慮がちな)告白のように(わたしの目には)映る。