【誰にともなしに、独り言レス―その3512】
スワイガートは唯一の独身(Swigert the bachelor)であること(“a girl in every airport from coast to coast” の遊び人キャラ)を不当にイジられまくっていたが(その3329参照)、厳密に言うと唯一の独身ではなくて唯一の(Swigert ≒ swinger てなシャレめかして)チャラチャラした独身宇宙飛行士(the most swinging of all the bachelor astronauts)で、実は交代させられたマッティングリーもアポロ13 の時点では独身だったけれど 2カ月後(in June 1970, two months after Apollo 13)に a steady girlfriend と結婚してるんで、全~然チャラチャラしてない独身だったゆえ。
そんな日頃の行ないの結果か、マッティングリーはアポロ16(April 1972)の司令船パイロットとして月ミッションを(船外活動 EVA を含め)成し遂げる―
《過去レス復元コーナー》
その 1024―
「人類、月に立つ」 Part 11 はアポロ16 についてのセグメントながら("The Original Wives' Club" 「栄光の陰で 妻たちのアポロ計画」というタイトルどおりの内容なので)ミッションそのものには殆んど触れられないが、月に向うアポロ16 (CM 内)のケン・マッティングリーが結婚指輪を紛失するシーンで始まり、その指輪は一週間後(地球への帰還途上で)チャーリー・デュークが奇跡的に(目の前をフワフワ浮遊していくのを)発見する―
デ : おい、ケン いいもの見つけたぞ(Hey, Ken, guess what I just found.)
マ : 何?(What's that?)
デ : 指輪(A ring.)
マ : 本当かい?(Is that right?)
デ : ああ、お前のじゃないか?(Yeah. I think it's yours.)
マ : あぁ…ラッキーだった (Boy, how's that for luck?)
デ : ラッキーなんてもんじゃない 凄い幸運だ(That's luck, boy. That is good luck.)
これは実際の話で、その時のデューク(D)、ヤング(Y)、マッティングリー(M)の会話が交信記録に―
D : Guess what I caught floating out the hatch?
Y : What?
M : What's that -
D : A ring.
M : Oh, is that right?
D : Yeah. I think it's yours.
Y : Yeah, it is.
D : In fact, it had already gone out and hit you and was coming back when I saw it.
M : Boy, how's that for luck?
と残っている。 (最後のデュークのセリフは作ってあるのか見当たらない)
その 1025―
細かくてどうでもいいこと(でもないこと)を指摘しておくと、マッティングリーの「あぁ…ラッキーだった」というセリフはデュークが指輪を見つけてくれたことをラッキーだと受け取れるが、交信記録にあるように厳密にはデュークが指輪を見つけた奇跡的な状況をラッキーだったと言っていて、そのウソみたいな状況が(デュークの証言に基づいてに違いない)具体的に描かれている。
折りしもマッティングリーはハッチの外(out over the hatch)で EVA の最中、指輪はデュークの目の前をかすめ(一度つかみそこなう)、あわやハッチめがけて外(つまり宇宙)へ流出せんと思いきや、何も気付いてないマッティングリーのヘルメットに跳ね返され、またフワフワ戻ってきたのを今度こそデュークがつかむ―
何が起こったかをデュークが説明し(it had already gone out and hit you and was coming back when I saw it.)、それを聞いたマッティングリーが「ラッキーだった」と応えてるのが実際のやりとり。
このマッティングリーの(そうとは知らぬ)ヘディング・パスをデュークが巧くキャッチするという絶妙のコンビネーションは、ここでは一切触れられないアポロ13 における例の風疹にまつわる因縁話のハッピーエンド的なオチになってもいようか。
その 1026―
それと、ヤングの発言が削除されているのは意図的な演出に思える―でなければ、最初のマッティングリーが指輪をなくすシーンでは当然そこにいるヤング船長も一緒にワイワイやっており、それなのに指輪が見つかるシーンで(実際には口を挟んでいる)ヤングを外すのは不自然。
これは、ヤングと離婚していたバーバラのこともエピソードに描かれるので(「アポロ16 はバーバラのミッションでもある」I think it's her mission too.)、マッティングリーの結婚指輪が奇跡的に見つかるシーンにはテーマ上(←それを指輪が象徴し糸口にする体裁になってるわけだけれど)そぐわないという理由か。 (←流れ的にもバーバラがアポロ16 の打ち上げをココアビーチから見送るシーンの後にある―両手を胸に当てて祈るように見送る、そのバーバラの指にリングはない…)
参考
アポロ16 の打ち上げは 1972年 4 月16日―前年(夏)にバーバラと離婚したジョン・ヤングは、この時既に(12才年下の相手 Susy Feldman と)再婚していた。
ケン・マッティングリーの「俺は新婚だぞ」というセリフ―実際は 1970年(アポロ13 の年)の結婚で、少なくとも新婚ホヤホヤではないはず。 (←ご多分に漏れず結局は離婚)