独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3085
 
その679  (2005/ 7/ 9
 
かように、ベティ・グリソムの(本人は認めるはずもない)人となりが(原作のつぎはぎ細工によって)巧みに描かれてるんですが、あそこで彼女が “Honorable Mrs. Squirming Hatch Blower (原作訳は「あがいているハッチ爆破者夫人閣下」 字幕は「着水ミスをした男の妻」「爆破した男の妻」)と夫に面と向かって自嘲するのは、いくらなんでも思いやりのない描き方なんじゃ…
 
ベティは、やっと Mrs. Honorable Astronaut になれたと思ったら、Mrs. Squirming Hatch Blower 扱いされてると、夫に訴える―squirming というのはグリソムが海水の流れ込むリバティベルから(あたふたと)這い出る様を揶揄してるんでしょう。
 
こんな皮肉な表現を失意の夫に直接投げつけるのか―原作では、あくまで(そういう扱いをする)周りへ向けられた怒りとして描かれてるのに。
 
ベティ本人が決して「ライトスタッフ」(並びに原作「ザ・ライト・スタッフ」)を認めないのも無理からぬことだと、わたしは思う。
 
 
その910
 
その 679 で言及した "Honorable Mrs. Squirming Hatch Blower" の旧 NHK字幕 「爆破した男の妻」は「爆破ミスした男の妻」に変っていて、「ミス」を付けたことで少し意味が通るようになってはいるものの、それでも(レンタル字幕の「着水ミスをした男の妻」と同様に)やはり正確ではない。
 
ベティは(原作訳の「あがいているハッチ爆破者夫人閣下」のとおり)"Hatch Blower" たるガス・グリソム夫人なのであって、"Hatch Blower" の意味内容は厳密には「爆破ミスした男」でも「着水ミスをした男」でもなく、あくまで爆破式ハッチを(カプセルが着水してヘリが吊り上げる前に)焦って作動させ(事もあろうにカプセルを沈め)てしまった男であり、このヘマ(screw the pooch)を単に爆破ミスや着水ミスの一言で片付けては(元の皮肉な表現をさておいても)意訳としては舌足らず―字数制限を持ち出すなら、原作訳(直訳)の「ハッチ爆破者夫人」のほうがよほどマシだと思うが。
 
追記
 
爆破式ハッチが吹っ飛んだのは普通にスプラッシュダウンした後なので「着水ミス」でも何でもないのは明らかで(←そもそもチンプ・モードゆえ文字通りの人為的な着水ミスなどありえまい)、着水してハッチから脱出する際の手順のミスと解釈してやっても「着水ミス」は苦しい。
 
それに「爆破ミス」にするなら "Hatch Blower" の重点の hatch のほうも訳出しないと、何を爆破したのかも(爆破そのものはミスでも何でもなくて)爆破のタイミングのミスということも分からない―爆破式ハッチを早まって吹っ飛ばしカプセルを沈めた男という皮肉なのだから。(むろん映像で描かれてることだけれど、見りゃ分るというものでもなかろう)