独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3090
 
原作「ザ・ライト・スタッフ」及び 映画「ライトスタッフ」が提示した―
 
グリソムはパニックだった グリソムは焦ってハッチを吹っ飛ばした
 
という図式(マイナスイメージ)は、グリソムの手は無傷だった事実から少なくともボタンを押してはいないことが証明されているゆえ、とっくに否定され取り下げられるべきものであって、後にグリソムがジェミニの一番手(Gemini 3 command pilot)となり、更にはアポロ月ミッションの 一番手とさえ目されていたとされる NASA の評価・信頼を見ても、グリソムの実像には合致していないのは確か。 
 
その256 2582003/12/28
 
ここで、ガス・グリソムがジェミニ 3 で飛んだ時の、さもありなんというエピソードを紹介しときましょう―
 
コンピュータの計算違いか何かでモリー・ブラウンの着水ポイントが 84 km程ずれてしまったんで、本当はパイロット 2 名はリカバリーの空母にカプセルと一緒に回収してもらう手筈だったのが、グリソムは急遽ヘリを要請して自分たちだけを先に拾ってもらっております。
 
ジェミニのカプセルは(マーキュリーと違って)なぜか横向きにスプラッシュダウンするようになってて(←その時のショックで、グリソムのヘルメットは割れました―危ないじゃん)、むろん完全防水で浮きますし、ハッチ(爆発ボルト式じゃなくてラッチ式)は当り前に上向きになるようになってますから(と言っても、この時は着水の後パラシュートが風に煽られて海中に引きずり込むように作用してたので、グリソムはとっさにリリースしてカプセルの体勢を立て直してますが)、さっさとハッチを開けて顔を出しても(せめて新鮮な外気を入れても)平気なんですけど、モリー・ブラウンの船長さんは、頑としてハッチを開けようとはしませんでした―言うまでもなく、screw the pooch の汚名(←濡れ衣)は二度とご免だからですね。
 
海軍のレスキュー・ダイバーがモリー・ブラウンの周りにフロート flotation collar を装着して、文字通りの The Unsinkable Molly Brown になるのを待つ 30 分の間、密閉されたカプセル内は(スペーススーツを着てられないほど)暑くなるワ、波のうねりで揺り回されるワで、ついにガス・グリソムは宇宙酔いならぬ、普通に船酔いしてしまったのでありました―とさ。
 
余談
 
そのせいもあってか(たぶん、ハッチから出やすい順で)、グリソムが先に(ヘリに吊り上げられる前に一旦)救命ボートに乗り移った際、後に残されたジョン・ヤングが「昔から船長が最後って決まってるんじゃないの?」とからかうと、モリー・ブラウンの船長さんはスマして↓こう言い返しております―
 
 I just made you captain as I got out.  おまえを船長に任命したよ、出る時に。
 
 
ついでに、年忘れ爆笑「サンドイッチ事件」の話を―
 
ガス・グリソムとジョン・ヤングは同じ朝食(伝統の打ち上げ定食)をとり、かつ同じ状況下にありながら(ヤングはモリー・ブラウンのことを「素晴らしい宇宙船 spacecraft だが、最低の船 boat だった」と評しております)、ヤングが辛うじて我慢できたのにグリソムが戻してしまったのは、ひょっとしたらサンドイッチが原因なのかも―
 
ヤングは、グリソムのためにと(こっそり)サンドイッチ corned beef sandwich を持ち込んでます。
 
それは、バックアップだったウォーリー・シラーが差し入れてやったものでした。(冗談好きのシラーにすれば「宇宙じゃテイクアウトできないから、ケイタリングしてやったんだ」と軽~いシャレのつもりでしたが、もちろん規則違反)
 
で、予定通り用意されてた公認の(つまり旨くも何ともない)宇宙食をとる段になるや、ヤングはやおらスペーススーツのポケットからその隠し持ってた何やら非公認の(つまり美味なる)ブツを取り出して「食べるかい、船長?」と、グリソムに手渡して驚かしてやったんですね。(←「ライトスタッフ」で、シラーがビックリ箱でふざけてるシーンを思い出すでしょ? ちなみにヤングも海軍のテストパイロット)
 
それ見てビックリ仰天のグリソム船長が言うには―こりゃ、オオゴトだぞ。(in big trouble
 
ヤングが、何が?と訊くと―マスタードがついてない! No mustard
 
グリソムが(何しろ大好物ですから)さっそくパクつくと、ゼロ G のカプセル内で、無重力サンド(ライ麦パン)のクズが計器パネルのほうに漂い散って行くんで、慌てて食べるのをやめたそうです。
 
この一件は、後に「如何なものか?」と議会で問題になって(グリソムが言ったとおり)本当にオオゴトになったんですよ。(チーフのディーク・スレイトンまでもが、監督不行き届きってことで厳重注意されたらしい―なのに、真犯人のシラーは知らん顔してたらしい)
 
それ以降、手荷物検査?が厳しくなって、ずいぶん締め付けられる羽目になったのでありました。
 
 蛇足
 
サンドイッチはココアビーチの Wolfie's から、シラーが前の日に買ってきたもので、シラーに言わせると一晩中冷蔵庫に入れてたから全然大丈夫だということらしいけど、やっぱりな… 絶対、それが怪しい。