【誰にともなしに、独り言レス―その3087】
その132~136 (2003/10/ 3)
リバティベルは 1999年にフロリダ沖の海底から引き揚げられて徹底的に調べられたものの、結局のところハッチが吹っ飛んだ原因は解らずじまい―ということのようですが、もとより調査するまでもなく 100% はっきりしてるのは、ガス・グリソムが screw the pooch したのではない、そんなことはありえないということでした。
ハッチを吹っ飛ばすには、手を傷つけて装置を作動させなければならないという、明々白々な反証がある以上、グリソムが(「ライトスタッフ」で仄めかされてるように)パニックに陥ってとか、うっかり装置に触ったとかいう説明は全く成り立たないからですね。("There was only a very remote possibility that the plunger could have been actuated in advertently by the pilot."―シラー証言)
従って、調べなくても原因はグリソム以外にあると断言できるわけです。
グリソム以外のどこかにこそ、リバティベルのハッチを吹っ飛ばした原因がある―
では、グリソム以外のどこかとは、いったい?
そもそも、ハッチは飛行士自らが当然カプセル内で作動させることができると同時に、カプセルの外からも操作できるようになっていたという(早く言ってよぉ的)事実―
ん… とすると、グリソム以外とは、即ちカプセルの外を意味してるのでは?
それは、小さなパネルで覆い隠された T 字型のハンドルなんですが、ひょっとしたらと思わせる実に興味深い報告を当時グリソムはしていて―
スプラッシュダウンする前、パラシュートが開く。
そのパラシュートに小さな穴があいていた―そう報告してるんです。
その穴は、まさに T 字型ハンドルを覆っていたパネルくらいの大きさだったと想像される…
この事実から、容易にひとつの仮説を立てることができますね―
カプセル内のグリソムが何もしないのに、なぜハッチは吹っ飛んだのか?
やはり、あのハッチは(グリソムが悲痛なまでに強く訴え続けた) malfunction だったのか?
この仮説は(意外にも)それを否定します―あれは malfunction なんかではない、と。
仮説 1
リバティベルのパラシュートが開いた際に、そのショックからか T 字型ハンドルを覆っていたパネルが外れてしまい、それがパラシュートに小さな穴をあけた。
仮説 2
リバティベルがスプラッシュダウンした時、むきだしの T 字型ハンドルに(例えば)パラシュートのひもが引っかかり、装置を作動させた。
「ライトスタッフ」では、10 年に及ぶジェット戦闘機での使用において、またありとあらゆる耐久テスト(100 フィートの高さからコンクリートの上に落下させてまで)においても、ハッチがひとりでに吹っ飛んだ例は皆無だと言ってましたね。(Explosive hatches have been on jet fighters for 10 years. The things have been wrung inside out...subjected to trial by heat, by water, by shaking,pounding. We even drop them from a height of 100 feet onto concrete...and not one of them has ever "just blown.")
だから、グリソムが焦ってスィッチを入れてしまったんだとばかりに。
そんなアホな… むちゃくちゃでっせ、その理屈は―全く論理的じゃない。
ハッチはひとりでに吹っ飛ばないを真とするなら、論理的にはこうです―
ハッチは、ひとりでに吹っ飛ぶことはない(前提)
↓
ハッチを吹っ飛ばす装置は、カプセルの内と外にある
↓
カプセル内の飛行士は何もしていないと証言している
↓
ゆえに、カプセルの外の装置が作動した可能性がある(結論)
そのとおり、外の装置の T 字型ハンドルが引っぱられた可能性が(じゅうぶん過ぎるほど)あるんです。
ハッチは、ひとりでに吹っ飛んだのではない―つまり malfunction ではない。
外の装置が、まさに正常に作動した結果、ハッチが吹っ飛んだにすぎない―
と、この仮説は主張してるのであります。
しつこく言ってるように、グリソムの手は傷ついてなかったという事実からして(その時どんな精神状態であったにせよ)カプセル内の装置を作動させたということはありえない―手を傷つけずに装置を作動させることはできないことが既に実証されてますから。
一方、カプセルの外の装置を作動させるに足る何らかの力が働いたのかもしれない、と考えることに何ら論理的な矛盾はない。
それどころか「ハッチは、ひとりでに吹っ飛ぶことはない」と前提するならば、そう導くことこそが論理的に必然でありましょう。
そして、リバティベルのパラシュートには小さな穴があいていたという観測事実をもとに、ハッチが吹っ飛んだ状況をシミュレーションすることができる―つまり、矛盾のない具体的な仮説を立てることができる。
更に言うなら、この仮説は、もはや決して証明されることのない永遠の仮説であるにしても、もともと証明される必要などない、その可能性があるというだけで 100% A-OK なんですよ。
なぜなら、ガス・グリソムの無実を立証する、いわば傍証にすぎないのだから。
蛇足
ここで念のために、前提(の真・偽)について考えておきましょう―
つまり、本当にハッチがひとりでに吹っ飛ぶ("just blow")ことはありえないのか?
装置の malfunction は絶対にないと言い切れるのか?
という問題ですね。
10 年間の使用例においても、あらゆる耐久テストにおいても、ハッチがひとりでに吹っ飛ぶことは一度もなかった(not one of them has ever "just blown.")―
これが果たしてカプセルの外の装置にも当てはめてもよいことなのかという素朴な疑問を別にしても、誰しも思うことは、機械の故障はいつか必ず起こる―それも必ず予想に反して、ということでありましょう。
実際、リバティベルのハッチが吹っ飛んだのは装置の malfunction だったという説がないわけじゃないんですよ―
カプセルは再突入の摩擦熱で非常な高温になるので、冷たい海にスプラッシュダウンすると、急激な温度変化を受ける。
鋼鉄製の T 字型ハンドルは、パネルが外れたことで通常以上の影響を受けたかどうかはともかく、当然わずかながらも瞬間的に収縮したと考えられる―それが、誤作動の引き金になった…
正直(わたしには小学生並だと思える)この初歩的な説はそれでも、少なくとも malfunction は絶対にない―とは絶対に言い切れない、という一例にはなっていると思われます。