独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3094
 
ジーン・クランツの情緒論的な擁護(if Gus says he didn't do it, then he didn't do it.)はともかく、ハッチのデザイン変更(with an explosive primer)が何らかの不具合を起こした(Something must have screwed up in the new hatch.)との常識論的な見解を原作「「ザ・ライト・スタッフ」は真っ向から否定する―
 
爆発可能ハッチは今回初めてマーキュリーのカプセルに採用されたが、これはジェット機では一九五〇年代初めからすでに使われていたものである。~ ハッチが「ひとりでに爆発した」などということは、誰も聞いたためしがない。~ もちろん、爆発物を装填してある装置はどんなものでも、思わぬ時に爆発する可能性はある。その後 NASA は、起爆装置のボタンに手をふれないでハッチを爆発させてみようと、エンジニアに考えられるあらゆる実験をしてみた。水をためし、熱をためした。振動を加え、叩き、百フィートの高さからコンクリートの上に落してもみた。しかし、決して「ひとりでに爆発する」などということは起こらなかった。[中公文庫]
 
 
The explosive hatch was new to the Mercury capsule, but explosive hatches had been in use on jet fighters since the early 1950's.
   Of course, any apparatus rigged up with explosive charges had the potential of exploding at the wrong time. Later on, NASA put a hatch assembly through every test the engineers could dream up to try to make the hatch blow without hitting the detonator button. They subjected it to trial by water, trial by heat; they shook it, pounded it, dropped it on concrete from a height of one hundred feet—and it never just blew.The Right Stuff

 

 クランツが I knew the limitations in testing. と言うように、たぶん事前も事後もヘリの静電気なんかは試してないんじゃないか―そもそも(ジェット機とは違って)宇宙飛行してスプラッシュダウンしたリバティベルの厳密な再現テストができるわけなかろう。
 
なのにトム・ウルフは断定口調で―
 
決して「ひとりでに爆発する」などということは起こらなかった(it never just blew
 
と宣い、フィリップ・カウフマンは安直に追従して―
 
ハッチがひとりでに吹っ飛ぶことは一度もなかった(not one of them has ever 'just blown'
 
とセリフに使う。
 
そして、あざとく(あくどく)もクランツの "Dammit, get Gus, forget the damn spacecraft." を逆利用して、さもグリソムが自分で "forget the fucking capsule" と叫んだ如くに脚色(捏造)した―と、わたしは推測している。