【誰にともなしに、独り言レス―その3050】
その907~908―
先日 BS で放映された「ライトスタッフ」を念のために録画しておいたら、どういうワケか所々字幕が微妙に変更されてるのに気付き、同じ担当者だったので(後先は不明ながら)何か考えがあって改訂してるのだろうから、もしやと期待して(その707 で)指摘した箇所をチェックしてみると、残念ながら手付かずの「もう少しで 4 万 2000メートルだ」のままだった―これは単なる数字の間違いでは済まない、わたしら字幕に頼って見てる者をミスリードしかねない誤訳だと思われるゆえ(例によって重箱の隅とのご批判を承知の上で)再度レスいたします。
イェーガーが NF-104 で字幕どおりの 4 万 2000メートルに達していたのならソ連の高度記録 3 万 4200メートルを遥かに更新したことになり、字幕に従い(白紙の状態で)素直に見るなら、イェーガーは難なく新記録を達成したのに尚も上昇し続け(ホットドッグがバーベキューパーティで "Going up each day in a hurtling piece of machinery, putting their hides out on the line,hanging it out over the edge, pushing back the outside of that envelope and hauling it in." と解説する如く)まさに限界に挑んだ果てに(スラスターの不良とかで)やむなく墜落したと取れる―これでは X-1A のシーンとそっくりそのまま同じ展開(なぞり)で、ややもすると字幕のせいで(過剰にライトスタッフ的な)この解釈にミスリードされるやもしれない…
けれど、そう誤解するのは「ライトスタッフ」をちゃんと見てないに等しい―とは言い過ぎにしても、限界に挑んだ果てに(スラスターの不良とかで)やむなく墜落したのはそのとおりだとしても、難なく新記録を達成したのに尚も上昇し続けたのでは決してない。
注意していれば明らかに字幕が間違っているのが分ることに、何度かアップで映る高度計 ALT (altimeter ちょうど時計の文字盤と同じ仕様)の最高位は 120,000 FT と記されており、「もう少しで 4 万 2000メートルだ」の字幕が出る直前の針は 10 (墜落し始めた時は 10 を一目盛り超えたあたり)を指していて、その上の 11 が赤いレッドゾーンになっていることも目を引く―よって、どう見ても高度は 110,000フィート以下だということは直感できる。
ま、ありゃ高度 104, 000フィート 即ち 3 万 1200メートルが正しい―あくまでもソ連の高度記録 3 万 4200メートルに届かず、イェーガーは記録挑戦に失敗(←これが肝心)して墜落した(わたしの理解では screw the pooch した)と念頭に置きつつ、ぞくぞくするほどの名場面を堪能させてもらうことに致しましょう。
と(わたしにしては)控えめに書いてますけども、ちゃんと字幕を追って見てる人なら(14 万フィート/4 万2000メートルという間違った数字に)むしろミスリードされないほうがおかしいくらいで、実際ネット上にざらにあるレビュー 3 例―
〇 イェーガーは無断で最新戦闘機のテスト飛行を試み、ソ連の上昇記録を更新し、世界最高記録を達成する。
〇 チャック・イエーガーは相棒に「ガムがあったらくれないか。後で返すから」といつものやり取りをするとソ連が持っていた到達高度記録に挑んだ。ソ連の記録を大幅に更新し、成層圏のギリギリまで行ったイエーガーの目には星が見えた。
こういう見方(解釈)は「ライトスタッフ」の映像(フィリップ・カウフマンの意図したもの)とは違う誤解であって、その意味では間違い(勘違い)なのだけれど、わたしは決して否定はしない。
高度 104, 000フィート 問題 の要旨
テストパイロットの(ピラミッドの)頂点に立つイェーガーが NF-104 で screw the pooch するも(尚も)自らを pushing the envelope し続ける姿―即ち、真のライトスタッフとしての姿(ライトスタッフとは何か?という問いに対する凝縮された答)を見せつけるシークエンスなのだから、高度記録の挑戦には論理的に(映画の構成上)失敗する、イェーガーは必然的に失敗しなければならないのである。
従って、イェーガーの NF-104 が達した最高高度は(記録更新したことになる)140, 000フィートなどでは論理的にありえないのであって、映画の構成とは全くチグハグの(単純な数字のミスでは済まない)根本的に間違った字幕と言える。