独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3116】

 

その1407~1413

 

ボブ・スミスは当時(1963年) NF-104 Aerospace Trainer の primaly test pilot であり、イェーガー(の NF-104 のフライトぶり)を間近で具に見ていた最も信頼しうる(誰よりも内実を知る― I was the only person working with Chuck at the time)証言者に間違いない。(2010年死去)

 

40年も経って公表された事柄は―

 

~it might be taken by some readers as an effort to denigrate some of my fellow flyers.  That is not my intention.

 

と(僚友の名を汚すのは本意ではないと)釈明するものの、やはりイェーガーへの悪意が全然ないとは思えない。(あるに決まってる)

 

 

さもイェーガーが勝手に NF-104 (F-104)をテストしたかのように「ライトスタッフ」では脚色されていたせいもあってか、墜落の責任問題を訝る声が巷に。

 

実際、責任問題は(テストパイロットが機をオシャカにした以上、正規の任務だろうとなかろうと)当然あった―ないほうがおかしい。

 

況してや、ボブ・スミスが言うには イェーガーは(もともとテストは建前で)ひたすら高高度記録狙いで NF-104 を飛ばしていたのだから(Every one of Chuck’s flights in the AST [Aerospace Trainer] was purely practice to try and establish a record, nothing more or less.  - NF104.com)本来なら相応のペナルティは免れないはず―

 

だが、一切 お咎めなし。

 

なぜか?

 

その答こそがイェーガーの決めゼリフ―

 

"Think I see a plane over here with my name on it." (「おれの飛行機が待っている」)

 

にある―と、わたしは言いたい。

 

実際のイェーガーは許可なく NF-104 をテストしたのでもなければ(よく言われるように)無断で高高度記録に挑んだのでも決してなく、まさに(逆に)記録更新狙いの計画(計略)的なフライトであり、それが当初からのコンセプト(企み)だった。

 

そこにはイェーガーの強かな政治力(圧倒的な人脈)があって、当時のカーティス・ルメイ空軍参謀総長Air Force Chief of Staff, Gen. Curtis LeMay―あのルメイですよ)が直々に NF-104 の to establish the official world’s altitude record を命じていたと言う。

 

ルメイに話を(お膳立て)したのはイェーガー本人とジャッキー・コクラン Jackie Cochran(と夫のフロイド・オドラム Floyd Odlum)―この 4人組 foursome の圧力が尋常ならざることは容易に想像できる。

 

ライトスタッフ」では(ARPS に触れることなく)イェーガーは一介のテストパイロットとして勝手に NF-104(F-104) を飛ばし高高度記録に挑んだかのように正しく(ごく 自然に)脚色される―それが 100% 正しい描き方であって、実際の(ARPS の校長だった)イェーガーが自ら(ARPS の訓練用の) NF-104 をフライトテストした(挙句に墜落した)という事実のほうが考えてみれば奇妙(不自然)なのである。

 

原作は―

 

彼が NF 104 をみずからテストしてみようとした大きな理由は、それを訓練学校で使うということがあったろうが、それには別の思惑もあった。NF 104 にその性能を最大限に発揮させられれば、自力で離陸する飛行機による高度世界新記録を達成できることは確実だ。 [中公文庫]

 

The main reason he would be testing it would be for use in the school, but there was an extra dividend. Whoever was first to push the NF-104 to optimum performance was certain to set a new world record for altitude achieved by a ship taking off under its own power.(The Right Stuff)

 

 と、さも当然 for use in the school が main reason だとしているけれど、いったい(頼まれもしないのに)イェーガー校長自ら(しゃしゃり出て)訓練機をテストしてみる必要(必然性)がどこにあるのか?

 

As the commandant of ARPS, he seized the opportunity to test the NF-104 as if it had his name on it.

 

(イェーガーは) ARPS の指揮官として、それが定められた運命で(his name on it)でもあるかのように、NF-104 をテストする機会を受け入れた。 [中公文庫]

 

と、トム・ウルフは書くが(わたしには)むしろイェーガーは ARPS の校長という立場を利用して、個人的な野心のために NF-104 を我が物のごとく使った(挙句にオシャカにした)としか思えない。

 

"Think I see a plane over here with my name on it." (「おれの飛行機が待っている」)

 

いみじくも "with my name on it." と「ライトスタッフ」のイェーガーも言うように。

 

※ he seized the opportunity to test the NF-104 は「NF-104 をテストする機会を受け入れた」では表現が消極的で弱い―このチャンスを(受け入れたのではなく)積極的に捉えた(すかさず掴んだ)というニュアンスだろう。

 

 

実際、イェーガーは(テストとは名ばかりで)専ら高高度記録狙いで NF-104 を(5 回)飛ばしたのであり、それも(無許可どころか)あのルメイの有無を言わせぬ後押し(後ろ盾)付き―しかもタイクーンのオドラム・コクラン夫妻が(強力なスポンサー/サポーターとして)かんでるとなると、威圧された事故調査委がイェーガーの問責に後込みして何ら不思議はない。

 

Chuck Yeager's accident was strictly and fully pilot error

 

と断じるボブ・スミスに言わせるなら the president of his Accident Board は―

 

lacked the courage or integrity to call it that way and risk Chuck's wrath and the potential for trouble from higher levels: Jackie Cochran and her husband acting through the A.F. Chief of Staff, General Curtis LeMay.

 

早い話が イェーガーに ビビッて(4人組に怖気づいて) “Pilot Error” との然るべき裁定を下せなかったとのこと。

 

かくして イェーガーに一切 お咎めなし―

 

かように イェーガーの決めゼリフ "with my name on it." とは 字義通り NF-104 (プロジェクト)の私物化の表明に他ならないと解釈できる―そして更には、まさに 「ライトスタッフ」 においてスタイリッシュに昇華された(100% 正しく脚色された)極め付きの名ゼリフになっていると理解できるのである。

 

※ この主張は 「ライトスタッフは名作です」 が正しいテーゼであることを論証してもいる。 (←ここなんですよ、わたしが言いたいのは)