【誰にともなしに、独り言レス―その3107】
イェーガーの the commandant of ARPS、その立ち位置での笑えるエピソード "charm school" をカウフマンはスクリプトにしながらも使わなかった。
ここでイェーガーは “Is that a fact ?” とギャグ的セリフを繰り返すのだが、これを使っていれば―
>悔しいくせに悔しくないやいと自分を肯定し、もがく(その2983 参照)
といった(本心では宇宙飛行士になりたかった説的)むしろ一般的かもしれない見方は少数派になっていたか。
イェーガーの心情は「ホンマかいな(んな、アホな)」的な疎外感―イェーガーが(宇宙飛行士になれなかったと)疎外されてるんじゃなくて「何か違うなぁ」的な自己疎外感、自身のテストパイロットの在り方、ライトスタッフの道から外れているという疎外の意識のように感じられる。
まさしく NF 104 奇跡の生還はイェーガーのテストパイロット(スペース・テストパイロット)としての正しい在り方を自らに(ゆえに、孤高のライトスタッフであることを)見せつけるシーンとも解しうるだろう。
やはりカウフマンは筋金入りの純正ライトスタッフ・ファンに違いあるまい。
関連レス―
その1377~1378
なるほど NF-104 のイェーガーは見るからに宇宙飛行士然 としたスペーススーツ(pressure suit)―アストロノート(でございって)姿をアピールはしている。
が、あえて言うまでもない注釈をしておくと、イェーガーは自ら拒否した Spam in a can ではないアストロノートたらんとしているのであって、言い換えれば スペースパイロット、より正しくは スペース・テストパイロット たらんとしている―ここを見誤っては、およそ「ライトスタッフ」の何たるかを解せはしまい。
イェーガーは NF-104 を自らの意志で―即ち 自らを "pushing the envelope" し、その限界の地平で宇宙(星空)を垣間見たのである。
真のライトスタッフには >イェーガーが目指したものも結局は宇宙だったことを悟ったときの虚脱感 なんぞ無縁であり、でなければイェーガーのライトスタッフは(奇跡の生還によって)とうてい維持されはしないだろう。
その 698 (2005/ 8/ 5)
その 47 で―
前に、NF-104 のシーンのイェーガーが >パイロットスーツ姿 などと不用意な書き方をしてしまいましたが、正確にスペーススーツ姿と言うべきでした、あれは。
わたしとしたことが、何たる迂闊―この違いは、途方もなく大きい。
あるページ(NF-104 Space Pilot Trainer - Michael Wright Page)に、↓ こうあります―
Because it flys to the edge of space, pilots of the NF-104 have to wear spacesuits, just like “real” astronauts.
そうでした、まさにアストロノートたらんとしてたんですね、あのスペーススーツ姿のイェーガーは。
そのイェーガーを平気でパイロットスーツ姿などと書くということは、即ち「ライトスタッフ」という映画の何たるかを、まるで理解していないに等しい。
と、訂正(かつ 反省)レスをいたしました。
ひょっとしたら、この見方には違和感をお持ちの方もあるやもしれません―あの時のイェーガーは単に NF-104 だからスペーススーツ(与圧服)を着てるだけで、何もアストロノートたらんとしていたわけではなかろうと。
むろん、わたしが言ってるのは実際のイェーガーが宇宙飛行士たらんと考えてたなんてことじゃなく、映画 「ライトスタッフ」の NF-104 のシーンにおけるイェーガーはスペーススーツを―それもマーキュリー7と同じに見えるもの(←ここが重要)を着ており、これは明らかにテストパイロットであると同時にアストロノート(つまりはスペースパイロット)の姿に他ならないと申し上げてるんですね。
そう断言できる確かな根拠があって、実際の NF-104 のイェーガーが身に付けていたのはマーキュリー7の(あんなアルミホイル様の、いかにもスペーススーツっぽいやつ)とは全然違う見てくれ(地味で野暮ったい感じ)の与圧服なんですから―従って、フィリップ・カウフマンが あのコスチュームで何を意図 してるのかは自明でありましょう。
余談
一説によると、「ライトスタッフ」のコスチュームはシェールのステージ衣裳か何かの残り(お古)を流用したとかで、案外 そんな経済的理由がイェーガーのスペーススーツ姿の真相だったりして…
で、イェーガーのアルミホイル様のスペーススーツ姿の話に戻すと、あれも一応は原作に基づいたコスチュームではあって、いわく―
計画としては、まず ARPS 訓練生たちは宇宙飛行シミュレーターで感じを掴み、それから宇宙飛行士スタイルの銀色の与圧服(silver pressure suits)をまとって―
というクダリが もとネタであるのは明らかですけども、あくまで「計画としては」(The plan was that)であり、そのための NF-104 の飛行テストをやってる段階なんですね、あのスペーススーツ姿のイェーガー校長は。
であるから、もちろんイェーガーは勝手に NF-104 をテストしたわけじゃないのだけれど、ワザとらしくも笑える管制とのやりとり(>あのテストは実際はイェーガーの気まぐれじゃなくて、ちゃんとプログラムされた計画的なフライトでしたから、管制官が 「何じゃ、あれは?」 What kind of a plane is that ? とか、「そこの、フライトプランは出してんの?」 Aircraft on ramp, did you file a flight plan ? とか、「(あちゃ~、イェーガーじゃん)ノー・サー、問題ありません(どうぞ飛んじゃってください)」 No sir, no objections. なんて寝とぼけたこと言うわけありません)で―
I'm taking her up to wring her out a bit, any objections ?
「ちょいと こいつを飛ばして(試して)みる」(字幕)
とかますのは、原作の―
The only problem was, nobody had ever wrung out the NF-104.
問題はただ一つ、誰も NF 104 をしごいた者はまだいないという点だ。 [中公文庫]
というクダリを(例によって)つぎはぎ細工的に使ってます。
その1209―
わたしは家で「ライトスタッフ」を(TV 放映やビデオ録画で)見る際、随所の(お気に入り)シーンのセリフを(はっきり口に出して)なぞる癖があり、例えばイェーガーの NF-104 のシーンの管制のやりとり―
Hey, what's that? Anyone got clearance?
What kind of a plane is that?
イェーガーが応答する (Any objections?)
It's Yeager…
イェーガーに応答する (No objections. You are clear to taxi.)
He must have clearance. Right?
Yeah. Sure, he must. It's here someplace.
ここは必ず(アフレコと言うより、更に英語で吹き替えを被せるみたいなノリで)セリフを言う。
もちろん「午前十時の映画祭」では(なるべく)声を立てないようにしたし、観客が(予想に反して)疎らだったので、別にハタ迷惑ではなかったと思う―にしても、考えてみたら(条件反射的な癖ながら)何だか恥ずかしくはある…