独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3022
 
その259  (2003/12/31
 
ゴードン・クーパーのフェイス7は、screw the pooch どころかホットドッグならではの見事なフライトをやってのけております。
 
周回軌道 22周(34時間1949秒)ってだけでも凄いのに、初めて全くの手動で再突入してるんですから。
 
おそらくは、何でもパイロットの汗を集める装置(って、何のこっちゃ?)の故障が原因で、余分な水分が電気系統をショートさせたらしく(A plunger intended to collect Cooper's sweat was pumping moisture into the cabin, shorting out much of the electrical system.)、悪くもないはずの警告ランプが点いたりしたもんだから、念のためにと自動制御じゃなく手動に切り替えて再突入したもようです。
 
想像するに、こりゃ相当のテクニックを要するのは勿論でしょうが、それ以前にクソ度胸が―

そこは、さすがにジ・ホットドッグ、泰然自若と言うか、傍若無人と言うか、悠然と(リカバリーの空母から7,000ヤードの至近距離に)完璧なスプラッシュダウンを披露してくれておりますよ。
 
ライトスタッフ」でも描かれてたとおり、ホットドッグは打ち上げ前のカウントダウンの最中にフェイス7のなかで、本当にぐうぐう居眠りしましたし、19周目に電気系統のトラブルが発生した時には既に 8 時間くらい惰眠を貪ってたとか。
 
ラストシーンで、フェイス7が遥か大空を飛翔していくなか、ナレーションが入りますね―
 
The Mercury program was over.  Four years later, Astronaut Gus Grissom was
 
あそこ、いいなあ…
 
 
その1237
 
ライトスタッフ」においてクーパーは(グリソムから)「ホットドッグ」と呼ばれる。
 
いや、正しくは自ら(ホットドッグの一人じゃなく)「ホットドッグその人(ジ・ホットドッグ)」だと主張する―
 
I am not one of them hot dog pilots.
 
I am the hot dog man himself.  
 
この自惚れた「ジ・ホットドッグ」宣言は(深読みするなら)イェーガーからクーパーへのライトスタッフの系譜(継承)を先取りした表明と取りうるだろう。
 
と言うのも、原作でイェーガーをホットドッグ(hot dog)と称するクダリがあって―
 
There were even other pilots with enough Pilot Ego to believe that they were actually better than this drawlin' hot dog. But no one would contest the fact that as of that time, the 1950's, Chuck Yeager was at the top of the pyramid, number one among all the True Brothers.
 
イエーガーみたいな訛りのひどい業師よりも自分の方がすぐれていると信じるほどパイロットとしての自惚れをもったものたちもいた。しかしその当時つまり五〇年代に、チャック・イエーガーがピラミッドの頂点に立っており、すべての「真の兄弟たち」の中でかれがナンバー・ワンであるという事実に異議を申したてるものはいなかった。 [中公文庫]

 

 
と、ここで("hot dog" は「業師」と訳されている)イェーガーこそ「ジ・ホットドッグ」であることが明言されていて、「ライトスタッフ」のクーパーは初めは単に other pilots with enough Pilot Ego の一人(グリソムの言うように one of them hot-dog pilots―パンチョに至っては二人を rookies 呼ばわりし pudknockers と馬鹿にする)にすぎないが、ついには(エンディングで) "the greatest pilot anyone had ever seen" (ナレーション)と称えられる―神々しいまでのスポットライト("Lord, what a heavenly light.")が眩ゆい…
 
 
その1238
 
実は 「クーパー = イェーガーⅡ世」 とのネタばれ的(うっかり口走った的?)なクダリすら原作に見られ―
 
It was second-generation Yeager, now coming from earth orbit. Cooper was having a good time. He knew everybody was in a sweat down below. But this was what he and the boys had wanted all along,wasn't it They had wanted to take over the complete re-entry process―become true pilots in this damned thing, bring her inmanually―
 
それは地球周回軌道からやってくる、まさにイエーガー二世の口調だった。クーパーは楽しんでいた。地上では誰もが手に汗を握っているのを、知っていた。しかし、これこそ、自分や宇宙飛行士仲間が一貫して望んでいたことではなかったのか。大気圏再突入の操作を完全に自分たちの手でやりたい―カプセルのやつを、手動で地球上につれもどして、本物のパイロットになりたい― [中公文庫]

 

 
その837で―
 
わたしの見るところ、フィリップ・カウフマンが(原作「ザ・ライト・スタッフ」に基づき)表立って描こうとした大筋は、イェーガーからホットドッグへのライトスタッフの系譜とでも言うか、イェーガーのライトスタッフが(←そのものではないにしても)マーキュリー7のアラン・シェパードでもジョン・グレンでも他の誰でもないゴードン・クーパーに継承されていく過程だと思う。
 
これは、いわゆる一子相伝ではないけれど、空軍のエース中のエースであるイェーガーのライトスタッフは空軍のホットドッグにこそ伝えられなければならないはずだから。(←ガス・グリソムとディーク・スレイトンはその資格を手に入れそこなった)
 
と述べたように、イェーガーのライトスタッフはクーパーという次世代型ライトスタッフ、即ち―
 
"second-generation Yeager"
 
へと継承される―そんな展開になってるわけです。 (原作に書いてあろうとなかろうと ライトスタッフ」で "ホットドッグ" クーパー "second-generation Yeager" であるのは明快だろう)