独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3016
 
原作(つまり、トム・ウルフ)は、この時 グリソムが考えてたことを(本人に直接聞いて確認したとしか思えないほどの臨場感溢れる筆致で ←言うまでもなく、できない相談ですが)いやに具体的に記しており(第11 「開けられないカプセル」)、そこに―
 
やつらはくだらんカプセルなんかに夢中になり、おれは彼らの見ているところでおぼれかけている…(The stupid bastards! They were going crazy over the goddamned capsule and he was drowning before their very eyes…
 
というクダリがあります。
 
ひょっとしたら、これが―
 
Hey, forget the fucking capsule
 
と、グリソムが(カプセルより俺を助けろと)あっぷあっぷしながら必死に叫ぶ捏造シーンのもとネタなのかもしれない。
 
わたしが、このセリフを捏造とする根拠は(以前どこかに書いたけど)あの時グリソムが何を叫ぼうと(ヘリの音で)誰にも聞こえなかったはずで、後にそう言ったと自らバカ正直に(何の得にもならない)報告をしたとも思えないから。 [ 実際には、ガスは「おぼれそうだ!―畜生め―おれはおぼれそうなんだぞ!」と手をふっていたのだ。In fact, Gus's waves were saying, "I'm drowning!—you bastards—I'm drowning!" と原作は明言している]
 
だからこそ、TV ニュースで "here we see America's newest hero, Gus Grissom, he is shouting to save the capsule first." などと逆に(カプセルを先に救えと叫んだように)体裁よく捏造する余地もあるわけで…
 
 
原作の該当箇所は―
 
And at Edwards… the True Brothers… well, my God, as you can imagine, they were… laughing !
Naturally they couldn't say anything. But nowsurely!it was so obvious! Grissom had just screwed the pooch! In flight test, if you did something that stupid, if you destroyed a major prototype through some lame-brain mistake such as hitting the wrong button—you were through! You'd be lucky to end up in Flight Engineering. Oh, it was obvious to everybody at Edwards that Grissom had just fucked it , screwed the pooch, that was all. It was doubtful that he had hit the detonator on purpose, because even if he were feeling a little panicky in the water (you have to be afraid to panic, old buddy), he wasn't likely to ask for trouble by blowing the hatch before the helicopter hooked on and was overhead with the horse collar.The Right Stuff
 
エドワーズ基地では…「真の兄弟たち」は…そう、誰にでも想像つくことだが…笑っていた。もちろん、何も口にだして言うことはできない。だが、いまや―確実だ!―明白だった!グリソムはハッチを爆破するというへまをやらかしたのだ!飛行テストの場合、間違ったボタンを押すなどという間の抜けたことをしでかし、重要な試作モデル機を破壊しようものなら―そんな馬鹿げたことをしようものなら― 一生の終わりだ。飛行機関士にでも拾ってもらえば幸運なほうだ。エドワーズにいるものにとっては誰にも明らかだった。グリソムはへまをやったのだ。爆破したんだ、それしかない。わざわざ起爆ボタンを押したとはいわない。たとえ水中で少々パニック状態にあったとしても、(パニックにおちいってはいけないんだぜ、きみ)ヘリコプターが回収作業をおえ、馬の首当てが頭上におりてくる前に、ハッチをわざわざ爆破したりして、好んで苦境を招いたりするはずはないからな。 [中公文庫]

 

 
 
原作のこの辛辣なクダリは、映画ではリドリーにエドワーズの声(陰口)を代表させて―
 
Pull that stuff in flight test, it's all over for him. I say he screwed the pooch. 
 
Plain and simple. 
 
と言わせてます。
 
あれは 1961年で、イェーガーは大佐になってる頃ですが、実際はエドワーズどころか既にこの世にいなかったリドリー(1957年没)と、はなから架空の存在である連絡官とのスリーショットは、まだイェーガーが大尉だった(そして、リドリーも確かにいた) 1947年のエドワーズのシーンと何の変わり(年代的変化)も感じさせません―その意味では、当時 実際にエドワーズに戻っていたらしいイェーガー(←ただし ARPS の校長先生になるのは翌 1962年)でさえ、何やら架空の存在めいてきますね。