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ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3015
 
[ "screw the pooch"―諸々関連レス ]
 
キーワード screw the pooch
 
(米俗) 無為に時間を過ごす
 
としている辞書があるけども、そりゃ元の意味で(間違いで)すね。
 
"Screwed the pooch," meaning "made a terrible mistake," is a cleaned-up paraphrase that author Tom Wolfe popularized. Wolfe's book "The Right Stuff," which dealt with the early years of America's manned space program, used the phrase "screwed the pooch" in describing a calamitous error made by Mercury Astronaut Gus Grissom: Google Answers
 
 
その89 (2003/ 8/ 5
 
謎シリーズ・第5弾 「謎の screw the pooch 」―
 
今回の独り言ゼミの研究テーマは、トム・ウルフが「ライトスタッフ」で使って広く知られるようになったと言われる screw the pooch 、このわけのわからない言い回しを(くそ暑いなか汗をふきふき)みんなでじっくり考えてみましょう―冷えたビールでも飲みながら。
 
まず、その一般的な意味は「とんだヘマをやらかす」とか「大どじを踏む」とかが、こなれた日本語としては近いと思われますが、どこをどうひねったら、そんな意味になるのか?
 
pooch は俗語で「犬」のことです。
 
screw はこの場合「ねじ込む」でしょうか。
 
screw the pooch ― 犬をねじ込む
 
って、どこに? 何のため? 
 
まったく、何のこっちゃですが、実はその語源は判ってまして、もともと軍隊用語というか、兵隊さんのスラングからきてるんですね、これは。
 
彼らは何らかの命令待ちのスタンバイ状態に(ず~と)長い時間あることを f*ck the dog と言っておりました。
 
それが「時間を浪費する」とか「てれてれ仕事をする」とかの意味になって、更には「仕事を上手くやれない、しくじる、失敗する」という意味に転化したんじゃないかと思われます。
 
そもそもこれが、なぜそんな意味になったかは定かではないんですが、昔からサシサワリのない言い方では feed the dog と言ってまして、ここから勝手に想像するに、犬にエサでもやるしかすることがない、そんなことしかできないということなのか、それとも、犬にエサをやる時のいわゆる「オアズケ」が、命令待ちのスタンバイ状態を連想させるのか―
 
何にしても、この feed the dog f*ck the dog と訛って、それが screw the pooch の語源になったと考えて、さほど外れてないと思われます。
 
では、その f*ck the dog screw the pooch に変化したのはどういうわけ?
 
pooch は、まさしく dog でした。
 
同様にスラングでは screw f*ck で、のみならず「時間を浪費する」screw around 、「失敗する」screw up という用法がもともとあります。
 
要するに、人前を憚るハシタナイ表現を控えて(ソフトに婉曲に)ごまかしてるんですね、こう言い換えて。(それでも、やはりハシタナイけど)
 
ただし「ライトスタッフ」(つまりエドワーズのテストパイロットのあいだ)では screw the pooch とは、必然的に「ヘマをしてテスト機をオシャカにしてしまう」(当然パイロットはあの4回に1回のチャンスをつかんで農場を買う)ことを意味してるよう。
 
ですからリドリーは、ガス・グリソムが(その 14 のチャンスはつかみそこねたものの)自分たちにとってのテスト機であるリバティベルを沈めてしまったことを指して―
 
I say he screwed the pooch. 
 
と言ってるのです。
 
字幕は単に「彼のミスだ」となってますが、リドリーはそれ以上のことを主張してるんですね―あいつがヘマしてカプセルを沈めちまったんだからな、と。
 
そして、それを認めた上でイェーガーが 「時には、やむをえないミス(a pooch that can't be screwed)もある」 と、わたしが敢えてそう訳したいセリフを言います―字幕では「問題にされないミスもある」(「この際 問題にならない」)
 
これを受けて、連絡官が(わたしの説では、イェーガーの真意を誤解して)大統領はピッグス湾(キューバ侵攻)のヘマを宇宙飛行士で挽回したいんだから「連中は決して失敗しないことになってるのさ」(Nothing these guys do is going to be called a failure.)と講釈を垂れるんです。
 
そうじゃない―イェーガーは(まさに原作のつぎはぎ細工であっても)そんなことを言ってるんじゃないんですよ。
 
イェーガーは、今や認めてるんです、ガス・グリソムを―即ち自ら Spam in acan と嘲笑っていたマーキュリー7を(自分と同じライトスタッフだと)ここではっきり認めてるんです。
 
そしてもっと言ってしまえば、イェーガーが「ガスはよくやった(he did all right.)」と庇う発言をするのも、この screw the pooch の本当の意味を踏まえてこそ、ガス・グリソムと同じライトスタッフである自分自身が全く同じヘマをしでかすということへの伏線でもあると、初めて理解しうる―
 
イェーガーはガス・グリソムと同じように(まさしく)あの NF-104 で、ものの見事に screw the pooch してしまうのですから。