独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その2972
 
その935
 
アポロ 1 の事故がなければ、従ってガス・グリソムが生きていれば、月に降り立つ最初の人間はグリソムだったはず―というのは(わたしも何度か書いてるし)殆んど定説のようだが、実はシラーが(それは全くのデマだと)異を唱えている。
 
わたしにはディーク・スレイトンの(少なくとも非公式の)ファースト・チョイスがグリソムだったのは間違いないんじゃなかろうか(更にはロバート・ギルルースやクリス・クラフトも了承していたというのが本当なら非公式どころではない)と思われるものの、一方でシラーの否定的な主張には明快な根拠があり筋が通っているのも確かだ。
 
その765 で >シラーがアポロ 7 の船長を最後に NASA を辞めたのは、ひとつには もはや月に行けないと分かったせいもあろう―アポロ・ミッションでは 2 度は船長を務められないという不文律があったので。 と書いてるように、飛ばなかったとは言えアポロ 1 の船長だったグリソムが再びアポロの(何号にしろ)船長として月に行くなんてことは現実的ではなかったはずだから。
 
それでも(そのことを他の誰よりも承知している)当のスレイトンは私情として(マーキュリーの誰か、それもクーパーはもちろんシラーよりも)グリソムに最初に月に降りてもらいたかった―その率直な気持ちを周囲に洩らしていたんだろうと、わたしは(純正ライトスタッフ・ファンの独りよがり的な)憶測をしてるんですが…
 
 
その936
 
たぶん脚色だろうけど、スレイトンとグリソムが(狩猟の帰り道か)二人で森を歩きながらアポロ 1 のクルーを誰にするか話し合うシーンがあり、その時スレイトンはハッキリと「当分スケジュールは未定だが、自分としてはマーキュリー7の誰かに月に降りてもらいたい」(But I'd sure like to have one of the original Mercury astronauts still flying when Apollo makes that first moon landing.)と打ち明ける―グリソムは「いい話を聞いた…実は俺マーキュリー7の一人なんだ」(Interesting you should say that, Deke. Just so happens, I'm one of the original Mercury astronauts.)と トボケて笑う。
 
この描き方は明らかにグリソムが最初に月に降りる説を仄めかしていよう―が、それは現実にはありえないとシラーは否定するんですね。
 
早い話がマーキュリー7の役回りはもう済んでるのであって(ジェミニを介し)アポロのミッションは専ら次の New 9 (そのために選ばれた 9 人)の番なのだから。(実際そうなっている)
 
シラーに言わせると、自身のアポロ 7 でさえ特例的ミッションで、況や一旦アポロの船長となったマーキュリーの遺物が再びアポロ何号だかの船長として月に降りるなんてことが赦されるわけがない。(←それを匂わすシーンがあったのを思い出されよ)
 
 
その937
 
ミッションの概要を説明するミーティング(「A ミッション・B ミッションは無人飛行。C ミッションが司令船と機械船による最初の有人飛行―ガス、エド、ロジャーの乗るアポロ 1 号。D ミッションでは初めて司令・機械船と着陸船の二つで地球の軌道を回るテストを行う。E ミッションで更に高い軌道を使って再突入もテストする。F ミッションは月の軌道を回るが着陸はしない。そして、いよいよ G ミッションで月面着陸…」)でスレイトンが「初めて月の上を歩く男は今この部屋にいて俺を見ている」(I do know that the first man to walk on the moon walked into this room today and he's looking at me right now.)と決めゼリフを言うシーン、部屋にはシェパードを除いて 19 人いて―ガス・グリソム、ロジャー・チャフィー、ニール・アームストロング、バズ・オルドリン、マイク・コリンズ、ジム・マクディビッド、トム・スタフォード、フランク・ボーマン、デイヴ・スコット、ジム・ラヴェル、ビル・アンダース、ジョン・ヤングジーン・サーナン、ラスティ・シュワイカート、ディック・ゴードン、C.C.ウィリアムズ、ピート・コンラッド (←残り 2 名はアップで映らないので特定できないが当然いるべきエド・ホワイトと、もう一人はカニンガム or アイゼル? コンラッドは顔は映らなくても紛うことなきハゲ頭で 100% それと分る)
 
 
その938
 
注目すべきは(グリソムがいるのに)シラーの影も形もないこと―この時点でシラーは(アポロ 1 のグリソムのバックアップだったにも拘らず)月ミッションから外れていると想定されるわけで、なら逆にグリソムは(シラーやクーパーをさておいて)なぜ外されないのか、意図された演出にしてもチグハグな印象を受ける。
 
シラーは Deke said that we of the original seven are done, there's a whole new crew now. と明言しており、つまりスレイトンが(マーキュリー7は済んでいると言いながら)シラー(とクーパー)を月ミッションのラインナップから外してるくせにグリソムだけは外していない、どころかファースト・チョイスしていた―そんなことは基本方針からして(もはや 2 期生以降の新メンバーの番なので)ありえないと主張してるわけです。
 
けれども、同時にシラーはスレイトンとグリソムが非常に親密だったことも明かしてるので、二人の間で前述したシーンのやりとり(「自分としてはマーキュリー7の誰かに月に降りてもらいたい」「実は俺マーキュリー7の一人なんだ」)に近い話が実際にあっても不思議はない―それに尾ヒレが付いたデマだという心証だったか。