【誰にともなしに、独り言レス―その3233】
その 421 ~426 (2004/ 7/ 4~9)
ちょっと話はずれて(ほんとは本流に戻る)―
マーキュリー7の選考で、空軍と海軍を公平にするために(それぞれ 3 名ずつにして)残り 1 名を海兵隊から選んだ―という裏話が(まことしやかに)伝えられてるようだけど、なるほど言われてみれば一見そう見えないこともない…
が、これは受け入れがたいですね、わたしには。
なぜなら、その 1 名の海兵隊が誰かを見れば、むしろ真相は逆だと考えるほうが明らかに無理がないから。
わたしは(ミスター・クリーンマリーンこと)ジョン・グレンは最初から内定していたという(NASA はグレンをえこ贔屓していた)説なので、まっ先に決まっていたグレンが海兵隊だったから残りの 6 人を空軍と海軍で等分したと考える。
仮に 3:3:1 の青写真があったんだとしても、その海兵隊の 1 名枠に(結果的に)ジョン・グレンが選ばれたのではありません。
逆に、いの一番にグレンが選ばれたので(その結果として)海兵隊の 1 名枠が実現したにすぎない― この違いは大きい。 (と、わたしは思う)
「ライトスタッフ」において、ジョン・グレンはマーキュリー7のリーダー格として NASA と対峙してはいるものの、本質的には NASA の側に立っていて、グレンと他の 6 人との対立は NASA vs 空軍(+海軍)という構図ともオーバーラップしてるように思える。
アームストロングの場合は、より直截的にアームストロング vs 空軍、即ち NASA vs 空軍に他ならないから、その意味ではディーク・スレイトンの描き方に興味が湧いてくるじゃないですか、ちょい役にしても。 (←描く間もないほどのちょい役のおそれはあるが)
あ、わたしはスレイトンがフライト・クルーを選定するにあたって(個人的に)空軍をえこ贔屓していたなんて言ってるんじゃないですよ。
そうじゃなくて、アポロ11でヘイズがコリンズに替えられたり、アームストロングが先でオルドリンが後だったことの裏には NASA vs 空軍という構図が垣間見えると勝手に思ってるだけであります―アームストロングの映画が、そういう描き方をしてくれると面白いだろうなと。
わたしはスレイトンが個人的に空軍をえこ贔屓していたとは全然思わないが、個人的にアラン・シェパードをえこ贔屓していたとは思う、どう見ても。
シェパードは海軍ですけど、何と言ってもマーキュリー以来の仲間、むしろ贔屓しないほうがおかしい。
フリーダム7のフライトから 9 年と10ヶ月と10日を経て、ついにアポロ14 で月に降り立ったシェパードの第一声は―
Al is on the surface … and it’s been a long way, but we’re here.
という、まことに贔屓のしがいのある、かつ趣のあるものでありました。(この we は当然 Mercury astronauts のことと取りたいですね、純正ライトスタッフ・ファンとしては)
参考
アームストロング(アポロ11)の第一声
That’s one small step for(a)man, one giant leap for mankind.
コンラッド(アポロ12)の第一声
That may have been a small one for Neil, but it’s a long one for me.
コンラッドは、アームストロングの(面白くも何ともない)歴史的な第一声を巧みにシャレて笑わしてるんですが、アームストロングが for a man と言うべきところを for man と言いそこびった問題の箇所も、ちゃんと for Neil (のことだ)と明快に解らせてくれてもいて、けだし上質のギャグと言えましょう。 (それにしても、アームストロングの第一声はつまらん)(その2958参照)
何度か書いてるが、内耳(メニエール)が治って復帰したシェパードは、当初アポロ13を飛ぶ予定だった。(←単刀直入には、そう自分で自分を指名したに等しい)
が、どうしても短期間の訓練では不十分で(←何せ、10 年ものブランクと 47 歳というご高齢ですから)、それで次のアポロ14 に繰り下げてもらう―こんなことは普通ありえないでしょ、えこ贔屓されてなきゃ。(そのとんだトバッチリを受けて大変なことになったジム・ラヴェルは、やっぱり運が悪いとしか言いようがない)
それと、もっと重要なポイントは、アポロ13 は本当のもともとは(アポロ10 のバックアップだった)ゴードン・クーパーが飛ぶはずだったという事実―それをスレイトン(とシェパード)が替えちゃったんです、シェパードに。
あのタイミングでシェパードを(どこかに割り込まして)飛ばすとしたら、他の誰でもない、マーキュリーの仲間(どころか、エドワーズからの付き合い)のホットドッグと入れ替える―という選択肢しかなかったんでしょうかね、スレイトンにしてみれば。(一説では、クーパーは NASA と上手くいってなくて、それが月ミッションから外された一因だとも)
空軍アスホール・トリオのクーパーを切って、そこに無理やりシェパードを持ってきたスレイトンの本心がどうであったかはともかく、これこそ(まさに)スレイトンが個人的に(空軍をじゃなく)シェパードをえこ贔屓してたことの証左だと(わたしには)思える。
シェパードはスレイトンが Director of Flight Crew Operations のポストに就いた時に、その後釜 ―即ち Astronaut Office のチーフになる。
そして、その椅子での最後の仕事が他でもない、自分自身をアポロ13 の船長にするように働きかけることだった。
結果的にシェパードのミッションは繰り下げられたように、時間的なことを考慮するなら、最初からアポロ14 にしときゃよかったものを― そうすれば、ホットドッグが予定通りアポロ13 を飛んで(ついでに、あのトラブルに見舞われて)ただろうに…とも想像するが、その選択肢はなかったんでしょう、考えてみりゃ。
と言うのも、もともとのアポロ14 の船長はジム・ラヴェル― その海軍のラヴェルをシェパードが蔑ろにするとは(何となくイメージ的に)思えないんですよ。(そんな要求が認められないのは判りきってるし)
そのくせ、平気で(マーキュリー仲間の)クーパーは大いに蔑ろにしてるけど。 (←指摘されるシェパードの裏表と言うか、二つの顔― smilin’ Al と icy Commander とは、こういったことなのかもしれませんね)
アポロ10 のバックアップはゴードン・クーパー、ドン・アイズリ、エドガー・ミッチェル。
シェパードは、アポロ13(後の14)のクルーを選ぶにあたって、あえてルーキーをピックアップしたとも言われてます―船長としての威厳を保つために。 (←10 年前の、それも僅か15分のフライト経験しかないので)
従って、クーパー組からはルーキー(で海軍)だったミッチェルを(そのまま着陸船パイロットとして)引き継いでるものの、既にアポロ 7 で飛んだことのあるアイズリは切って、バックアップの経験すらなかったスチュアート・ルーサを(司令船パイロットに)採用する。 (←もともと NASA はアイズリを二度と飛ばすつもりはなかったふうなので、どっちにしろハナから形だけのバックアップ任務だったということになろう)
ま、かように胡散臭さの拭えないシェパード組ではあるが、それでも回りの宇宙飛行士はシェパードの月ミッションをずいぶん盛り上げて喜んでくれたよう―例えば、バックアップだったジーン・サーナンを筆頭に。