独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3226】

 

その 960~961

 

シェパードを称える席(1966 と表示されるが the sixth anniversary of Alan Shepard’s flight は 1967年)で司会のスレイトンが―

 

I'm Deke Slayton, the only astronaut who'd been in space for less time than Alan Shepard.

 

と自己紹介して笑わせる。

 

自分はシェパードより短時間しか宇宙にいたことがない宇宙飛行士だ(吹き替えは「NASA で唯一飛行時間がアラン・シェパードよりも短い宇宙飛行士でして」)と自嘲したジョークですが、これが満場に大受けするのは実際のところスレイトンは(短時間も何も)まだ全然飛んだことがないので、アメリカ初の快挙ではあっても 15 分余り 弾道飛行しただけ(ゼロ G 状態に至っては 5 分程度)のシェパードより短時間しか宇宙にいたことがない宇宙飛行士は一度も飛んでない自分くらいなものだと(「ザ・ライト・スタッフ」によれば「もう何年間も〈おれが最初に飛んだんだ〉と言いつづけてきた」"And finally, this is Alan Shepard, the man who's been saying for years, 'But I was first!'")シェパードへ(むろん冗談で)あてこすりをしてるからで、この時はスレイトンはもとよりシェパードも再び宇宙に飛べる見通しなどなく、同病相憐れむ的状況での(気心の知れた仲同士の)自虐ギャグなのだった。

 

 

余興で 「たいして飛ばないで出世する方法」 (Alan B. Shepard, Jr. Astronaut !  Hero  or)How to Succeed in Business Without Really Flying—Much と題された爆笑ドキュメンタリー(シラーの悪ふざけ制作“the fabulous Wally Schirra” production)が上映される―言うまでもなくブロードウェイの「努力しないで出世する方法」 How to Succeed in Business Without Really Trying のもじりで(原作のシェパード・ミード Shepherd Mead をシャレてもいる?)、really flying の後に(もとネタにはない)much を一言付け足してる(つまり「たいして飛ばないで」とシャレてる)とこがミソ、いかにも(たった 15分しか飛んでない)シェパードを茶化した感じが出てますね。(もっとも、シェパードは実際の business では大成功してるけど)

 

が、そのナレーション(シラーの声)で「彼の前に飛んだのは僅か二人―その輝けるパイオニアの名はハムとイノスである」[ Onward to the fledgling space programme, where only two had gone before. Fellow pioneers into the unknown Ham and Enos. ] との解説―これはギャグにしても(要らざる)間違いで、確かにハムは(「ライトスタッフ」で描かれてるとおり)シェパードのフリーダム7(1961年 5月)の前、同年 1 月に飛んだけれど、イーノスが(ジョン・グレンに先がけて)初の軌道飛行をしたのは同年 11月、弾道飛行のシェパードより先に飛ぶわけがない。(なのでイノスの名前は全く余計―シェパードの前に飛んだパイオニアはハム一人だけという冗談じゃ不足なのか? ←二人にしたいのなら辛うじて 85kmまで飛んだ サム Sam, a rhesus monkey だろうし)

 

註) 原文からすると「彼の前に飛んだのは」(only two had gone before)が単純な間違い(誤訳)とも思えて、海軍航空士 Naval Aviator のシェパードが新たに宇宙飛行士 NASA Astronaut(マーキュリー計画)へと進出した時、そこには未知なる宇宙へのパイオニアが二人だけ先んじていて、それがハムとイノス―という意味なら(「ライトスタッフ」でも訓練ぶりがシェパードやグレンとチンプを巧みに重ね描いて笑わせてくれてたように)話は分かるが、その場合であっても(ハムはともかく)イーノスが宇宙計画(ホローマン空軍基地)に配属されたのは 1960年 4月、マーキュリー7のお披露目 1959年 4月の 1 年後なので、やはりイーノスがシェパードより先なんてことにはならない。(ま、そんなシラーお得意の gotcha なんでしょ、これは―その3149~3151参照)

 

※ シェパードが「たいして飛ばないで」に Schirra had nothing to do with this? - I don't think.(どうせシラーの仕業だろ)とスレイトンに苦笑する脚色は実際にはありえなくて、フィルムはエンドタイトル後に渋い顔のシェパード本人が(Icy Commander モードのセルフ・パロディめかして)「明朝 8 時、オフィスに出頭せい」(Wally, I expect to see you in my office at oh-eight-hundred Monday morning.)とばかりにシラーを恫喝して見せる Shepard production の(どっきり的)オチが付け加えられている。