独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3227】

 

その 962~963

 

スレイトンが煮え切らないシェパードに Chief of the Astronaut Office を引き受けさせようとするシーン―「そもそもだな、俺を(このポストに)推薦したのは誰だっけ?」と事の起こり(もともとシェパードがスレイトンを担ぎ上げた)を持ち出して説得しようとする。

 

この経緯は「ザ・ライト・スタッフ」(第13章「オペレーショナル・スタッフ」)でも―

 

ディークはシェパードに大いに恩義をうけていた。 アルはある日ほかの飛行士をよび集め、「ディークのために何かやってやろうではないか。 誇りをとりもどさせるためにな」と言った。 ディークを宇宙飛行士のいわば責任者として、肩書と仕事とオフィスを与えてやろうではないか、とシェパードは具体的に提案した。 全員この提案にとびつき、ギルラスに早速それを伝えた。 間もなくディークには「宇宙飛行士活動コーディネイター」の肩書があたえられた。[中公文庫]

 

  Deke had plenty to be thankful to Shepard for. One day Al had gotten the other boys together and said, "Listen, we've got to do something for Deke. We've got to do something to give him back his pride." Shepard's suggestion was that Deke be made a sort of chief of the astronauts, with an office and a title and official duties. They all went for the idea and took it to Gilruth, and in no time Deke had the title "Coordinator of Astronaut Activities." (The Right Stuff)

 

 と説明されていて、スレイトンの勿体ぶった(もっともらしくも大して中身のなさそうな)肩書「宇宙飛行士活動コーディネイター」Coordinator of Astronaut Activities は「たんに名目上仕事を与えてやるだけの称号でしかない」(this would be a supernumerary make-work job for the fallen astronaut)はずが、どっこいシタタカにも実権を握るようになる(「ディークは NASA 内部において無視できない一つの力となる」 Soon Deke was a power within NASA)という次第。

 

 

メニエールのため地上任務に回されたシェパードは、ジェット機の操縦も副操縦士同伴という屈辱的な条件付きでやっと許される始末で、これには最高のテストパイロットとしての自負をいたく凹まされたもよう(Can you imagine the world’s greatest test pilot has to have some young guy in the back flying along with you?  I mean, talk about embarrassing situations!―本人談)―「人類、月に立つ」では T-38 の後部座席に(若いと言うよりヒヨッコみたいな)ステュ・ルーサがお供するシーンがある。

 

スレイトンが自分は副操縦士に認めてくれない(Of course, they're not gonna let you and I fly together.―吹き替えは 「ま、俺とは組めないけどな」)と残念がる―「ああ、酷いこと言われたんだって?」

 

「半人前 × 2 は 1 じゃないってさ」 (Two half-pilots don't make a whole one.)

 

そう苦笑する半人前の二人が悪の結託をするのもむべなるかな…

 

ライトスタッフ」においては、初め(ラブレースのシーンで)スレイトンはムッとした面持ちで(Fella, I said, how's that? と)シェパードに詰問するが、フリーダム7 打ち上げの際には You're on your way, Jose! と快哉を叫ぶ―二人の絡みは(空軍と海軍だし、まだ当時は結託してないので)殆んどありません。

 

 

その 125 (2003/ 9/23)

 

Okay, Jose, you’re on your way!

 

このディーク・スレイトンが実際はこう叫んだという文は、むしろ「オウケイ、ホウゼイ」とカタカナで書くと解りやすいが、語呂合わせになってますでしょ、Okay と Jose が―そして一気に読むと、最後の way「ウェイ」とも合ってリズムがよろしい。

 

スレイトンは予め考えてたか、案外こっちのほうが後から作られたのかもと疑いたくなるくらい、よくできてるじゃないですか。

 

一方、「ライトスタッフ」でのセリフ―You’re on your way, Jose!

 

なぜ、このように実際の名文句を変えてるのかは(そうだと仮定して)判然としないけど、こっちはシャレみたいなもんかいな―つまり、No way, Jose. という(No を強調する)言い回しに引っかけたシャレかいなと。

 

この No way, Jose. の Jose は「ノウ ウェイ、ホウゼイ」と単に語呂合わせの調子付けで、別に「ホセ」という人名を意味してなくて、その Jose に引っかけたシャレなんじゃなかろうか。

 

で、更によくよく考えてみるに、打ち上げの瞬間にスレイトンがとっさに口にしたんだとしたら、やはり実際は You’re on your way, Jose! のほうじゃなかったのか、という気がしてくる。

 

Okay, Jose, you’re on your way! は、ちょっと巧すぎると言うか、そこはかとなく作為的な匂いが…

 

ま、どっちでもいいことではあるけれど。

 

註)たぶん、カウフマン(スクリプト)の―

 

DEKE SLAYTON, CONTROL, now on the microphone to Shepard:

DEKE

Fire !  You’re on your way, Jose !

 

は律儀に原作に倣ってるだけで、トム・ウルフの描写は―

 

彼のイヤフォンに流れてきたディーク・スレイトンの「十…九…八…七…六…」という最後の秒読みの声にしても、またその他のどんなことにしても、彼は生半可な注意しか払わなかった。このぎゅう詰めになった小さな豆さやの中では、重要な言葉は最後の言葉だけであった。彼は、ディーク・スレイトンがその最後の言葉を口にするのを聞いた、「点火!……さあ、ホセ、行って来いよ!」[中公文庫]

 

He only half paid attention to Deke Slayton's voice over his headset as he read out the final "ten… nine… eight… seven… six…" and the rest of it. The only word that counted, here in this little blind stuffed pod, was the last word. Then he heard Deke Slayton say it: "Fire!… You're on your way, Jose!"(The Right Stuff)