独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その2946
 
ファースト・マン」は(言うまでもなく映画であるから)まるでアームストロングだけが様々なトラブルに見舞われていた(そして、ついにファースト・マンとなった)かのような印象(操作)なのかもしれないが、少なくともジェミニ 8 は同乗してたデイヴ・スコットも当然アームストロングと同じトラブル下にあったわけだし、たいていのテストパイロットや宇宙飛行士は(多かれ少なかれ)危機一髪の目に遭うのが普通なんじゃなかろうか―
 
ファースト・マン」の X-15 のシーンは「ファルコン・フェザー」(デイヴ・スコット物語)では F-104 のシーンが該当、いや凌駕するに違いない。
 
関連レス―
 
その771  (2005/10/14
 
そのアームストロングとジェミニ 8 で飛んだデイヴ・スコット David Scott 3 期生の The Fourteen グループ アポロ15 の船長)は ARPS のなかでも取り分けイェーガー校長の覚えめでたきパイロットで、F-104 着陸訓練(X-15 のシミュレート)時の推力低下・奇跡の脱出事件における瞬時の判断・操作を(あの口の悪い)イェーガーが激賞してるほど。 (←原作の表現では「いたく感銘を受けた」Yeager was tremendously impressed とある)
 
この時、スコットの操縦する F-104 two-seat が滑走路に落下・接地(と言うより激突)するや、後部座席から(コンマ何秒かの絶妙なタイミング―早ければパラシュートが開ききれず、遅ければエンジンに直撃されていたとかで)射出し無事降下したのがマイク・アダムズ Michael Adams で、強運と思われたアダムズは(悲運にも)この 5 年後(1967年)に X-153 号機)が高度 62,000フィートで空中分解し墜落死しています。
 
参考
 
アダムズは高度 266,000フィート(50.38マイル)に達していたので 後に宇宙飛行士と認められ、the first American astronaut to die during a space mission となる。
 
 
その772
 
スコットのほうは F-104 が滑走路に激突しても(後部座席のアダムズとは逆に)射出しない決断をした―この一瞬の選択も正しく、仮にスコットが焦って射出レバーを引いていたら(操縦席の装置は潰れていたので)その場で爆発していた(か、せいぜい不完全な射出で叩きつけられていた)とこだったらしい。
 
スコットとジム・アーウィンThe Nineteen グループ)がアダムズを挟んで並んだ ARPS の卒業写真みたいなのがあって、後にアーウィンはアポロ15 でスコット船長と一緒に月を歩くことになる。
 
参考
 
ARPS 卒の最初の宇宙飛行士はフランク・ボーマンとジム・マクデビットで、ジェミニ 4 のマクデビット船長のバックアップがボーマンでした。 (そう言えば、アポロ 8 のボーマン組とアポロ 9 のマクデビット組には、ジム・ラヴェルにとって実に皮肉な交代劇がありました)
 
余談
 
デイヴ・スコットは(ジム・ラヴェルらと共に)「アポロ13」の technical consultant に加わってますが、その縁でか トム・ハンクスMagnificent Desolation (←ほんとのドキュメンタリー)でもプロジェクトに協力してるようです。
 
 
F-104 奇跡の脱出事件の一節(「ザ・ライト・スタッフ」及び The Right Stuff から抜粋)
 
その984
 
またデイヴ・スコットやマイク・アダムズのようなパイロット―二人ともイエーガーARPS 訓練生である―もいた。 彼ら二人はある日 F104 に乗って、低空での「リフト・オーバー・ドラッグ」着陸訓練をおこなっていた。 X15 の着陸をまねたこの演習では、速度をあげる(そうして安定性を高める)ために再燃焼装置を急激に燃焼させ、昇降舵を引いて機首をあげ、機体を二百ノットで滑走路上になめらかに着地させるように努めなくてはならない。  スコットとアダムズが地面に近づいたとき、再燃焼装置の「目ぶた」が故障をおこして開きすぎ、推力が最大の場合の二〇ないし三〇パーセントに落ちてしまった。 機体は目にみえて急速に降下していった。 操縦席にいたスコットは必死に燃焼させようとするが、ほとんど何の反応もない。 まるでレンガのように機体は落下していく。 後部座席にいたアダムズは、降下角度から判断して、スコットが推力を取り戻せなければ、機尾がまず滑走路にあたると考え、もし機尾があたったら射出すると無線回路でスコットに告げた。 機尾が地面にあたり、その瞬間彼は射出ハンドルを引っ張り、高度ゼロで射出した。 スコットは機内にとどまる道を選んだ。 胴体が滑走路に激突し、機体は左右に大きく傾きながら滑走路を走りぬけ、メスキートの繁みに突っこんだ。 機体がやっと止まったとき、スコットがふりかえってみると、アダムズがすわっていた位置にエンジンが飛び出していた。 二人の判断は正しかったのだ。 アダムズは空中に撃ち上げられパラシュートで無事帰還していた。 スコットの射出装置は、最初の衝撃によって生じた回転モーメントのために破壊されていたので、もし彼が射出ハンドルを引っ張っていたら、ニトログリセリンの爆発か中途半端な射出によって死んでいただろう。
 
イエーガーは死の深淵を目の前にした彼ら二人の決断にいたく感銘を受けた。[中公文庫]

 

 
 
その985
 
Then you had men like Dave Scott and Mike Adams, who were two of Yeager's ARPS students. They were practicing low lift-over-drag landings one day in an F-104. In this maneuver, which simulated an X-15 landing, you gunned the afterburner for speed (and stability) and flared the flaps and tried to grease the ship onto the runway at 200 knots. As Scott and Adams neared the ground, the "eyelids" on the afterburner malfunctioned, opening too wide, cutting the thrust down to 20 or 30 percent of maximum. Visually they could tell that the ship was sinking too fast. Scott,who had the controls, gunned it but got very little response. They were dropping like a brick. Adams, in back, knew that the tail would hit the runway first, due to the angle of attack they were in, if Scott couldn't regain power. He told Scott over the radio circuit that if they tail hit he was ejecting. The tail hit, and in that moment he pulled his cinch ring and ejected at zero altitude. Scott elected to stay with the ship. The belly smashed onto the runway and the ship went careening down it and off into the mesquite. When the beast finally came to a stop, Scott looked back, and the engine was jammed upinto the space where Adams used to be. Both men had made the right decision. Adams had been exploded up into the air and had come down safely by parachute. Scott's ejection mechanism had been broken in the torque of the initial impact and he would have been killed had he pulled the cinch ring, either by the nitroglycerine explosion or by a partial ejection.
 
Yeager was tremendously impressed by these two decisions by two men in the very mouth of the Gulp. The Right Stuff