独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3331】

 

「女を口説こうと月にもチョコを持っていった」(その3329参照)

 

“It’s a great day in New York today. It’s girl-watching weather. And speaking of girl watching, did you know our first bachelor astronaut is on his way to the Moon? It’s Swigert, right? He’s the kind of guy who they say has a girl in every port. Well, that may be, but I think he’s kind of foolishly optimistic though, taking nylons and Hershey bars to the Moon.”

 

- Dick Cavett(The Dick Cavett Show, April 13, 1970)

 

スワイガートがストッキングとチョコバー(nylons and Hershey bars)をチャラチャラ持って行ったというのはジョークにしても、何か月旅行の土産になるものを(「ライトスタッフ」のガス・グリソムがそうだったように―その3086参照)隠し持っていたには違いなく、やはり(当初は否定していた)同様の不始末に手を染めていたことを後に認めている。

 

なので、この TV 放送シーンは遠回しに切手スキャンダルを匂わせてると深読みできなくもないか。(その3000参照)

 

切手スキャンダル(Apollo 15 stamp incident)関連―

 

その 783~785    (2005/10/30~31)

 

ASTP (その3228参照)の司令船パイロットは ヴァンス・ブランド― もともとは ジャック・スワイガートが内定していた。

 

が、スワイガートは(風疹にかかってたわけでもないのに)リストから外され、ミッションの 2 年前(1973年)に NASA を離れる。 (←同年 NASA を退くジム・ラベルの場合は 2 期生のベテランで アポロ13 が last mission になると公言していたし、同じ 5 期生だったフレッド・ヘイズは 1979年、ケン・マッティングリーは 1985年まで NASA にいた― 2 期生で 2004年12月31日まで 42年間も NASA に在籍していたジョン・ヤングという極端な例はおいとくとしても)

 

スワイガートが ASTP から消えたのは、どうやら アポロ15 の切手スキャンダル(postage stamp scandal)の煽りのようですね。

 

 

アポロ15 切手スキャンダルの概略は―

 

デイヴ・スコット船長は NASA に出入りしていた人物に(カクテルパーティで)美味い話を持ちかけられ、3 人のクルーに それぞれ 7,000ドル(子供の信託基金)という見返りで、398 通ものアポロ15 の初日カバー First Day Cover (記念切手発行日消印のオリジナル封筒 )などを宇宙服に忍ばせて月に行った。

 

内 100 通(Dave Scott Al Worden Jim Irwin 3 人のサイン入り)が その人物から切手ディーラーに渡るや(アポロ計画が終るまで売りに出さないという約束だったのに)ドイツで 1 通 1,500ドルで売却されたのを知り、慌てて何も見返りを受け取らないことにしたものの、分別を欠いた行いに対し譴責処分が下される羽目に (残りの 298 通は NASA が保管)―

 

というもので、これまで NASA は似たようなことを見て見ぬふりしてきたし、別に [当時は] 違法でも何でもないのだけれど、ちょいと度が過ぎたのと表沙汰になった手前だろうか。

 

ふと思い浮かぶのは、「ライトスタッフ」で ガス・グリソムがココアビーチのバーのおねえちゃんを口説くシーン、明日 宇宙に持ってく(I'm taking these up with me tomorrow. Would you like a souvenir after I get written in history ?)と言うミニチュアのカプセルを見せびらかして誘う―あんな感覚なのかも。 (何たって空軍だし)

 

 

他にも スコットは知人に頼まれた腕時計とストップ・ウォッチ [Bulova] をバックアップとして(いざという時に役に立つかもしれないと [実際に Omega Speedmaster の代わりに EVA で役に立ったのだが] )黙って持ち込んでおり、責められるべきは その "lack of judgment" だというわけです。 (←あの F-104 着陸事故の際に絶賛された瞬時の判断力とは別の judgment らしい)

 

先に書いたように、アポロ15 の空軍トリオは Army Air Corps Song のオリジナル・スコアも月に持って行ってます(その3028参照)―たぶん、そんな軽い気持ちなんでしょうか、一事が万事で。

 

更なる後日談もあって、スコット(とアーウィン)が全く個人的に、つまり NASA の許可なしに月に置いてきた小さな人型の像のレプリカが(ミュージアムに展示するための 1 個だけ作るのを了承したはずが)ニューヨークで 950 個(@ 750ドル)も売りさばかれるという事態も起き、下世話なごたごたで折角のミッションの成功にケチをつけたのみならず、宇宙飛行(士)のイメージを著しく 損ねてしまう結果になったのでした。[アポロ15 のクルーはアポロ17 のバックアップに就くローテーションから外され宇宙飛行士としてのキャリアを終える]

 

参考

 

小像は "Fallen Astronaut" と名付けられ、死亡した 14 人の astronauts and cosmonauts ― Charles Bassett Roger Chaffee Yuri Gagarin Gus Grissom Vladimir Komarov Elliot See Edward White C.C. Williams らの名前がアルファベット順に列記されたプラークに添えて 月 (Mount Hadley Delta)に置かれている。(その3230参照)