【誰にともなしに、独り言レス―その2930】
その1306―
その656
その 201~204 に、ガス・グリソムが(と言うより、フォン・ブラウンらが)リバティベルの打ち上げ前日に ココアビーチのバーで飲んでるシーンのことを取り上げ―
何で、こんな構成にしてるのか、わたしには意味不明ですね、どう考えても。
単純に原作に従ってるだけなのか(原作にそのままのクダリがあるとして)、色んな部分を映画的に編集してるのか―
何にしても、そんな無理を押してまで、あのシーンを前日に持ってこなきゃならない、何か特別な意味があるとは思えないんですけど、わたしには…
と書いてます。
原作に そのままのクダリなどなく、やはり映画の作り話(つぎはぎ細工)なんですが、あのシーンを前日に設定した理由と言うか、もとネタらしきクダリはあって―
ガスは事実上飛行前日までホリデイ・インに滞在し、精神は平静だった。 (中略) 飛行直前のある晩、ガスが緊張を少しほぐそうとカクテル・ラウンジで飲んでいると、他ならぬジョー・ウォーカーがやって来た。(Gus stayed at the Holiday Inn until practically the day before his flight, maintaining an even strain. ~ One night just before the flight, when he was in the cocktail lounge evening out the strain a bit, who should Gus run into but Joe Walker.)
と、グリソムとウォーカーの(ちょっとした酒の上の)エピソードに触れた箇所がそうじゃないかと。 (←つまり、これも特別な意味はなく、まことに無頓着かつ適当に打ち上げ前日ってことにしたんでしょうね)
その1307―
その715~716
ジョンソンが これは本当にそう言ったんだろうと思われるのは―
Isn’t there anybody who can deal with a housewife?
該当するクダリの原作訳は 「おれのスタッフにはたかが家庭の主婦を説得できるものは一人もいないのか」 で、注意すべきことには映画とは全く違って、NASA の説得工作が失敗する(ジョン・グレンがアニーを電話で逆に励ます)前の発言になっている。
つまり、こう言われたスタッフが NASA に手を回すように頼み込み(←ジョンソンが NASA に働きかけるように指示したのではない)、それでも NASA が説得に失敗したので、ジョンソンはスタッフを Pansies! Cows! Gladiolas! と罵倒した―というのが話の流れです。
ところが、映画ではこのセリフは(レンタルの字幕は 「貴様らは家庭の主婦 1人説得できんのか!」 NHKは 「家庭の主婦 1人説得できんとは!」)後先構わず Pansies! Cows! Gladiolas! と一緒にまとめられて(流れを無視した)つぎはぎ細工になってます。
ですから、家庭の主婦を説得できる anybody は、原作ではジョンソンのスタッフに限定されてるのに、映画は NASA の上層部をも巻き添えにして 罵倒の対象に含めてるように受け取れますね。 (←カウフマンがそれを意図してのことか、ただ無頓着なだけかはともかく、つぎはぎ細工されたセリフは微妙に意味が変わってくる―これは不可避でありましょう)
NHK の字幕 「家庭の主婦 1 人 説得できんとは!」は正しい訳ですけども、映画ではジョンソン本人が指示して NASA に手を回させたように脚色してあるので、罵倒の対象に NASA が含まれるどころか、一義的に NASA の上層部に対して言っていると受け取られるんじゃなかろうか。
対し、レンタルの字幕が 「貴様らは家庭の主婦 1 人 説得できんのか!」と anybody をジョンソンのスタッフ限定ふうに訳してるのは、おそらく 原作に則ってのことでしょうが、むしろ 映画の描き方ではジョンソンのスタッフと NASA の上層部のどいつもこいつもって感じが普通の受け取り方だと思われます。
その1308
かくの如く、名作「ライトスタッフ」は(殆んどパロディめいた)つぎはぎ細工の所産と言う他はないのであって、なぜか殊更 トゥルーディのセリフ(だけ)を引き合いに出し―
the movie merely used the fictional Mrs.Cooper as a vehicle for the statement
と今更の(アホらしい)ご教示をする Wikipedia の訳知り顔なんぞ… (以下自粛)
その1260―
映画ではライフ誌のウェインライトが(さも優先的に取材する権利があると言わんばかりに)"I'm from Life Magazine." と名刺を見せると、他社のゾウムシ右代表 レッチワースは(そりゃないよと)憤慨するそぶり―
要するに一事が万事、映画 「ライトスタッフ」 は(実に細かい部分も)こんな調子のノリで作られている。
なので、全体的に トム・ウルフの 「ザ・ライト・スタッフ」 を(原作と言うより)原案とするコメディ仕立てのパロディとさえ、わたしには感じられるのであります。
約言するなら―
「ライトスタッフ」 は笑えるパロディです
となりましょうか。 (トム・ウルフのお気に召さないのも道理―)