【誰にともなしに、独り言レス―その2929】
その1301―
その629
ノン・フィクションである「ザ・ライト・スタッフ」をベースにしてるはずの映画「ライトスタッフ」ですが、ハリー・シェアラーとジェフ・ゴールドブラム扮する凸凹リクルータ・コンビは、原作を知らなくても映画のオリジナル・キャラ―架空の存在だというのは分かります。
同じように、デヴィッド・クレノン扮する謎の連絡官 liaison man 然り、ロイヤル・ダーノ扮する黒服の牧師然り、そしてレボン・ヘルム扮する(X-1A以降の)リドリー然り…
これら架空の存在は、あくまで映画の狂言回しであって、言い換えれば―つぎはぎ細工のつなぎ役といったところでしょうか。
歴然としてるのが、凸凹リクルータ・コンビがパンチョの店に出向くシーンで、ふたりの会話で the right stuff という言葉を解説させ、イェーガーを the ace of aces と呼ばせてましたね。
その1304―
その652~653
その 60 に、その 59 の余談として―
出世のはしご ladder (We'll climb right up that ladder just like we did at Langley.)は、字幕では「昇進の階段」となってますが、「昇進」だと、もろホットドッグ限定って感じがしません?
I move up, you move up. たって、トゥルーディは昇進なんかしないんだから、話のつながりが悪いですよねぇ。
せめて「出世」くらいにしときます、わたしの脳内字幕は
と書いてます。
ところが、原作には 「軍隊では、夫が昇進すると、妻も昇進した」(In the service, when the husband moved up, the wife moved up.) という(ミもフタもない)クダリがちゃんとあって、「夫婦は一体であり、二人とも軍隊に入っている」(precisely because they were a team and both were in the service.) (夫が中尉から大尉に昇進すると、妻も中尉夫人から大尉夫人に昇進する If he advanced from lieutenant to captain, then she became Mrs.Captain)という実態が述べられてるんですよ。
字幕が この原作訳を踏まえたものかは定かでないけども、その意味では単純に「昇進」としてるのが正解だと言えないこともない…
が、確かに映画のこのホットドッグのセリフは原作をもとにしてはいるものの(そのままでは全然なくて、いつもの巧妙なつぎはぎ細工ですので)微妙に言わんとすることが違ってるように感じられます。
ホットドッグはトゥルーディに Hon, we're a team! I move up, you move up 「俺たちはチームだ 2 人して極めるのさ」と言い、目指すは to the top of the pyramid 「ピラミッドの頂上をな」―これは直前のシーンで連絡官が少佐に言うセリフ「ピラミッドの頂上を目指す」(But soon, every fighter jock, rocket ace, and rat-racer in the country...will be headed this way, wanting to push the outside of the envelope...and get to the top of the pyramid.)をそのまま引っぱってきていて、このピラミッドとは要するにライトスタッフのピラミッドであり、その頂上がエドワーズ空軍基地にある(Edwards Air Force Base. This is the place to be. They're going faster, farther and higher than anywhere else. とホットドッグが説明する)という話の流れになっていますから、ホットドッグは何も昇進のピラミッドを登るためにエドワーズに来たわけではないし、またトゥルーディが We? You mean you. と常識的な反応を示すのも、原作とは全く逆の描かれ方をされてる(トゥルーディは We're a team.「夫婦は一体」と思っておらず、むしろサンディエゴに別居することの伏線になっている)と言えるんですね。
つぎはぎ細工である 映画「ライトスタッフ」は、同じセリフであっても 原作「ザ・ライト・スタッフ」とは違った状況や別の人物が言ってる場合が多々あるため、その原作訳を映画字幕にそのまま機械的に当てはめると微妙におかしな言い回しになる―と、わたしは思う。