独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3065
 
あれやこれやカウフマンの操る(変幻自在の)カードのなかで、わたしには何となくジョーカー的な狂言回しに見えるのが―
 
謎の liaison man
 
スクリプトの最初のセリフ(パンチョの店でイェーガーに打診するシーン)―
 
LIASON MAN  (confidential tones) 註)スクリプト LIAISON ではなく LIASON と綴る

That guy… Yeager’s his name… He’s had some experience testing the X-1. He was some kinda war hero, shot down five Germans in one day. They say he’s a natural born stick ‘n rudder man…  As the Press Liason Man for the Air Force, I think…
 
MILITARY GUY
…Any problems with him ?
 
LIASON MAN
Only one. Holding him back.
 
演じるデヴィッド・クレノンは―
 
That guy in the corner. Yeager is his name. Some kind of a war hero. Shot down five Germans in one day. He's a natural-born stick and rudder man. As press liaison man for the Air Force, I think...
 
と言っていて、脚色と辻褄の合わない He’s had some experience testing the X-1. は当然カットしたようだが、原作のクダリ(説明文)を Press Liaison Man の口で簡略に語らせている。
 
Shot down five Germans in one day.
 
On October 12, 1944, Yeager took on and shot down five German fighter planes in succession.(一九四四年十月一二日、イエーガーはたてつづけにドイツ戦闘機五機を撃墜した。)
 
He's a natural-born stick and rudder man.
 
That plus his up-hollow drawl had everybody saying, "He's a natural-born stick 'n' rudder man."(このすぐれた技倆と田舎弁まるだしの話し振りが人々の注目をひき、「彼こそ生まれついてのパイロットだ」と言われるようになった。)
 
Only one. Holding him back.
 
The only trouble they had with Yeager was in holding him back.(しかし、こんどは、逸るイエーガーを抑えるのが大変だった。)
 
 
いきなり Press Liaison Man for the Air Force と(訊かれもしないのに)自ら正体を明かしてくれてはいるけれど、この(一見、胡散臭いトップ屋ふう)連絡官のキャラは決して明確(一義的)ではない。
 
 
その40  (2003/ 6/17
 
好評の謎シリーズ、今日は「謎の liaison man」のお話―
 
以前ちょっと書いたように、No bucks,no Buck Rogers. 「金がヒーローを作る」という名コピーを説くデヴィッド・クレノンは liaison man とクレジットされてます。
 
この liaison man って liaison officer―たって、とても(空軍)士官には見えない。(イェーガーから sir 付けされ、少佐からは pal と呼ばれる)
 
ですから liaison man は(まあ)連絡官とでも訳しときますか。
 
で、その連絡官ってどういうことをする人かというと、要するに連絡をする人なんでしょうけど、空軍的には―
 
air liaison officer an officer attached to a ground unit who functions as the primary advisor to the ground commander on air operation matters.
 
てな感じですか。
 
もともと liaison は、辞書によると communication, mediation, linkage などを意味するフランス語、一般的に―
 
a communication link between groups or parts of an organization
 
となってますから、やはり liaison man one that maintains communication―つまりは、連絡(仲介・リンク)をする人、となりますね、要するに。
 
確かに「ライトスタッフ」では、あちこち連絡・仲介・橋渡しの役をやっておりました。
 
いつも空軍やパイロットやベル社の連中なんかと情報のやりとりをしてるようですし、何よりプレス(マスコミ)対応もそうなのでありましょう。
 
印象的なのは、パンチョの店に凸凹リクルータ・コンビが宇宙飛行士のスカウトに来たシーン。(イェーガーはモルモット探し Scouting for lab rabbits, more likely. と皮肉ってたが)
 
その時、デヴィッド・クレノン扮する連絡官が凸凹コンビを迎えて、自分とこ(つまりエドワーズ)のテストパイロットを売り込んでたじゃないですか。(These must be our gentlemen from Washington...scouting for astronauts. Welcome to Edwards.
 
あのシーンで、はは~ん(そういうポジションだったのか)と感じたんですよ、わたし。
 
イェーガーは、そこで「人間の缶詰」 Spam in a can になることを自ら拒否し、また学歴がないという理由で拒否されます。
 
一方、ゴードン・クーパー、ガス・グリソム、ディーク・スレイトンの空軍アスホール・トリオは(弁解がましくも?)出撃命令には絶対服従 "Never refuse a combat assignment." と「スターボイジャー star voyager たらんとする。
 
ここです―ここで、あの連絡官は凸凹リクルータ・コンビとパイロットを仲介しつつも同時にイェーガーと他の(マーキュリー7となる)3人を切り離すことで逆に(アクロバティックにも)イェーガーとマーキュリー7とをリンクさせる。
 
即ち、イェーガーとマーキュリー7という対立項、この(本来的には)相容れることのないはずの両者を liaison させるという最も重要な任務―「ライトスタッフ」のなかで、それなくしては映画が成立しえないほどの欠くべからざる役割を、この liaison man は担ってたわけであります。(ちょいとコジツケっぽいけど、我ながら)