独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3063
 
その565 (2005/ 2/ 5
 
ライトスタッフ」で、いつも 7匹のゾウムシ(Permanent Press Corps)と共にライフ誌の記者(Life Reporter)が出没しますが、原作ではラウドン・ウェインライトの実名を挙げてます。
 
面白いのはマーキュリー7(夫妻)がライフ誌と破格の契約をする際に、社長のヘンリー・ルースが わが社のゴーストライターが手記を書いてどうのこうの(Now I want them all to meet my people who will write their true stories.)と言ってましたでしょ、実は(その側でニコニコしてた)ウェインライトが その張本人。 (彼らの著 We Seven The AstronautsPioneers in Space は本当は Loudon Wainwright が書いたとか)
 
実際、ウェインライトはマーキュリー7 と独占契約を結んだライフ誌の記者として特権的なポジションにあって、チンパンジーの優秀さを説明するフォン・ブラウンの取材シーン、カプセルの前でのマーキュリー7の写真撮影シーン、バーベキューパーティで目ざとくホットドッグをつかまえてインタビューさせるシーン―いずれもゾウムシどもを引き連れてといった趣じゃないですか。
 
ジョン・グレンとアラン・シェパードが科学的問題について激しくやりあう(They're discussing science.)シーンでは、取材を敢行しようと "I'm from Life Magazine." と名刺を出して自分が何者であるか(I'm not with these people. ゾウムシ連中とは別だということ)をアピールしたりもしてました―あんなとこも、ちゃんと意味があるわけですね。 (これらのシーンは原作にはないけども)
 
 
その566
 
特に見逃せないのは、ジョン・グレンの(結局 キャンセルされた 1 27日の)フライトの際に、グレンの自宅にウェインライト独りだけが当たり前のように入り込んで アニーらの写真を撮ってる(他のゾウムシ連中がシャットアウトされてたのを思えば、何やら癒着めいたものすら感じさせる)シーンで、あれこそがライフ誌の(まさに独り占めの)契約のなせる業。[スクリプト CUT TO: INT GLENN HOME   ANNIE GLENN, watching the t.v. coverage. The other wives are there. There’s also the LIFE REPORTER AND A PHOTOGRAPHER who keeps snapping pictures, trying not to be as annoying as he is.]
 
ジョンソンがアニーとの面談を企てるにあたって(映画でも言ってたように NBCCBSABC で全米 TV 中継するつもりでしたから)当然ライフ誌の記者は邪魔になるんで何とか追っ払おうとしたそうですが、人のいいウェインライトが自ら遠慮しようとしたところ、アニーが引き止めて外に出さなかったと言います。(逆にジョンソンのほうがピシャっと拒絶される)
 
そう言や、アラン・シェパードの打ち上げ前のシェパード宅のシーンで、ルイーズらとは別に男の手がコーヒーをつぐ(こぼす)とこが映るが、あれも一人だけ入り込んでるウェインライトに違いなく、カメラを構えてる姿が一瞬映りますね。(ただし実際は、フリーダム7のフライト完了時までは家のなかに入れてもらえなかったらしいから、あそこは作り話なんでしょうけど、ライフ誌の独占取材という描き方は正しい)
 
 
その12591260
 
原作には―
 
Life had wanted to have two writers and aphotographer on the premises to record her reactions from start to finish, but she had held out against that. So they were waiting in a hotel on the beach,and it was agreed they could come inside as soon as the flight was completed.The Right Stuff
 
『ライフ』は、記者二名とカメラマン一名を彼女の家に派遣して、彼女の反応を終始漏らさず取材したいと望んでいたが、それには彼女は抵抗を示した。そこで彼らは浜辺のホテルで待機し、飛行完遂と同時に屋内へ入れて貰うという同意を取りつけた。 [中公文庫]

 

 
 
とあるので(グレンの時と同様に)既に入り込んだウェインライトが―
 
This is it, ladies. This is for Life Magazine.
 
と、ルイーズらの写真を撮らせてもらったりしてるのは(つぎはぎ細工の)脚色にしても、シャットアウトされた他のゾウムシ連中は外から何とか取材せんとして押合い圧合い、右代表のレッチワースが窓ガラス越しに―
 
We are here live at the house of Louise Shepard... wife of Astronaut Al Shepard, who is about to go into space. Who will be cannonballed...
 
などと現場からの生中継を敢行。
 
その殺到する(ライフ誌以外の)マスコミの狂騒ぶりは―
 
They're on their knees. They're slithering in the ooze. They're interviewing the dog, the cat, the rhododendrons… These incredible maniacs were all out there tearing up the lawn and yearning for their pieces of Louise's emotional wreckage.
 
彼らは跪く。彼らはぬかるみの中をずるずる滑って行く。犬猫や石楠花にまでインタヴューする始末だ… 。 これら途方もなく頭に血ののぼった連中は、みな外の庭にいて、芝生を引きちぎり、ルイーズが緊張のあまり身のおきどころもない有様を記事にしてやろうと、うのめたかのめだった。 [中公文庫]

 

 
と描写されている。
 
 
原作の一節―
 
The rest of the press had resented the Life deal from the beginning and had argued that it cast a venal shadow on the astronauts' patriotic service.
 
報道界はそもそも最初から『ライフ』誌の特約に憤慨し、こんな特約を結んだのでは、宇宙飛行士の愛国的な献身がいかにも報酬目当てのものであるかのような印象がついてまわると主張してきた。
 
 
The deal with Life kept all but Life reporters away from him, and so the other fellows were out trying to root up whatever they could.
 
『ライフ』誌との契約で他社の記者は彼からの直接取材を締め出されているから、それ以外のソースからできる限りのものを根こそぎにしようとしているのだ  [中公文庫]