独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その2907
 
その笑えない「ラ・ラ・ランド」の主人公が「ファースト・マン」のニール・アームストロング役なのであるから(内容が particularly Neil Armstrong’s personal saga である限り)必然的に(実際のアームストロングよりも尚更)暗~く笑えない作りになってるんでしょうか。
 
映画館に出掛ける気はないゆえ、そのくせ見てきたような講釈を致しますけども、アームストロング自身の持前の暗さもさることながら、その裏側(背景・状況)に娘カレンの死とか同じ 2 期生(New Nine)のエリオット・シー Elliot Seeエド・ホワイト Ed White の死などが描かれるので、どだい笑える映画になんぞなりようがないのは確かで、それでも何もアームストロング一人(と、その家族)だけが悲劇的状況にあったわけでは全然ないのも確かであって、まあアームストロングの映画だからアームストロングだけの裏側であるかのように暗~く着目させてるってことでしょうけど。
 
アポロ 1 で(ガス・グリソム、ロジャー・チャフィーと)事故死したエド・ホワイト本人の裏側なんかについては(とっくの昔に)「人類、月に立つ」で悲劇的に語られてましたね。
 
関連レス―
 
その916
 
アポロ 1 の運命の日(1967 127日)、パット・ホワイトが娘のボニーと帰宅すると(思いがけず)ジャン・アームストロングが玄関先で待っていて、それだけで何も言われぬうちに事態を察してしまう―この(短いが)巧みなシーンには胸が痛む。(←アームストロング宅とホワイト宅は隣同士で、実際にジャンはビル・アンダースが正式に訃報を伝えに来るまでパットの傍についてやる役目だった)
 
パットはとてもシャイでマスコミのインタビューが苦手なとこなど「ライトスタッフ」のアニー・グレンを想わせる(ちなみにエド・ホワイトはジョン・グレン的だったとか)―スーザン・ボーマンに「時々どうやって息をしたらいいのか分らなくなる」ほどの苦悩の日々を打ち明け、ヒューストンを去っていく。
 
1983年、パットは(再婚していたが)おそらく エド・ホワイトの不慮の死から癒されないまま自ら命を絶つ―
 
 
その917
 
追記  1
 
ここではパットがタバコに火をつけるためマッチを擦る、その炎でアポロ 1 の火災を暗示するにとどまり、事故について特に説明はない―もとより話は Part 2 Apollo 1 (「アポロ 1 号の悲劇」)と呼応していて、上述のジャンがパットの帰りを待っていたシーンなどは先に使われていた。
 
追記  2
 
Part 2 でアポロ 1 のクルーがディーク・スレイトンのために密かに作ってやっていた宇宙飛行士のピンを形見として渡すシーンがあり、パットは「あなたは心臓のせいで飛べないけど誰にも負けない宇宙飛行士だと 3 人は思っていた―これをミッションの後でプレゼントするつもりだったのよ」The guys knew you would never get into space cos of your heart problem but they wanted you to know they considered you as much of an astronaut as any of them.They were gonna give that to you when they got back.とディークを泣かせます。 (←このピンは後にアームストロングが月に持って行く)
 
 
追記  3
 
スーザンはパットを誘って昼間(午後 3 時)から飲み始める―実際にスーザンの酒量が度を過ぎ始めたのはアポロ 1 の事故辺りからで、当たり前のことだがアポロ 1 のクルーの妻でなくても事故のショックは酷かったらしい。
 
 
その918
 
パット・ホワイトとパット・マクディビット(←二人とも同名の Patricia)がジェミニ 4 で飛行中のエド・ホワイトとジム・マクディビットと交信するシーンがあって、その時の実際の写真と見比べると髪型や服装がまるで違う―そんなとこまで拘る必要は更々ないけども、少しは似せてもよかろうに。
 
それ以前に capcom らしきゴードン・クーパーが世話をしてやったように描かれてるが、本当はジェミニ 4 のヒューストンの capcom はガス・グリソムで(←Part 1 ではそう描かれている)、実際の写真ではフライト・ディレクターのコンソールで当然 クリス・クラフトが同席しており、少なくとも(そこにいたかどうかも定かでない)クーパーの席で交信してるのは脚色でしょう。
 
それとホワイトが「テディとボニーはどう?」と子供たちのことを訊き、パットが「元気よ」と応えるのも脚色に違いなく、実際は二人の子供も一緒に来ていてホワイトと交信している―クリス・クラフトはエド・ホワイトが宇宙遊泳に夢中になって(capcom のガス・グリソムが何度も呼びかけてるのを無視して)なかなか船内に戻らないのに業を煮やし「あのバカを早く戻せ」と怒り心頭でありましたゆえ、パットと子供たちには(苦虫を噛み潰したような顔なりに)ちゃんと愛想よく応対してくれたのか少々気になる…
 
 
その919
 
Part 1 でのジェミニ 4 の描き方はガス・グリソムが再三 "Gemini 4, Houston capcom. Gemini 4, Houston capcom." と呼びかけても(まともに繋がってないのか)知らん顔して応答せず、暫くしてマクディビットが "Gus, got any messages for us" と寝とぼけた返事をしてきてから、ようやく "Gemini 4, get back in" と伝えられる―その前に宇宙遊泳しているホワイトと船内のマクディビットが「一日中こうしていたいよ」「フライト・ディレクターは何て言うかな」などと好き勝手にお喋りしてるので、クリス・クラフトは(「だから戻れと言ってるだろ」The Flight Director says "Get back in" と吐き捨てながらも)グリソムに「あの son of a bitch に戻れと伝えろ」と指示している。(←どうやら船外のホワイトと船内のマクディビットが回線を使ってる最中は地上からの交信がカットされてしまうシステムだったもよう)
 
それに実際にはホワイトは("Hate to come back to you, but I'm coming." と)しぶしぶ了解したものの、さっさとは船内に戻らず相当てこずらせた―
 
Part 2 でボーマンが「宇宙遊泳にはしゃぐあまり戻れという命令を無視したという噂があるが、ウエストポイントを出たあのエドが命令に逆らうなんてありえない」There was a story going around that when he was on his space walk, he stayed out after being ordered in because he was having sucha good time. It's a funny story but it would have meant that Ed White disobeyedan order. Not gonna happen. Ed was a West Point man and duty, honour, country weren't just words to him, they were him.と擁護してやってるけれども、即座には従わなかった(全くの不承不承だった)ことに間違いはなく、ホワイトは戻る際に "This is the saddest moment of my life." とまで言って嫌がっております。
 
 
その920

かように能天気なエド・ホワイト当人にとって宇宙遊泳は(アメリカ人初でもあり)"I feel like a million dollars" (吹き替えは「最高の気分だ」)だったが、パットは("It looked like you were having a wonderful time yesterday." と宇宙遊泳のことを嬉しそうに話しかけてはいても)内心は不安で堪らなかった。 
 
パット・マクディビットに「NASA は何でもまずエドにやらせようとする―宇宙遊泳も今度のアポロ 1 号も」とこぼし、「とても心配だ 時々すごく不安になる」と胸の内を打ち明けるシーンもあって、危険なミッションに臨む宇宙飛行士自身に劣らぬ(むしろ、それ以上の)プレッシャーに苦しめられていた。
 
それは(個人差こそあれ)他の宇宙飛行士の妻とて同様であり、スーザン・ボーマンの場合はアルコール依存という顕著な形で現われる。
 
以前、わたしが―
 
>このとおりの 8 の字の軌道を描いて、実際にアポロ 8 が初めて月を周回して無事に戻ってきた時、ディーク・スレイトンは(至極当然、まことに道理に適ったことに)ボーマン船長(と、そのクルー)に最初の月着陸ミッション(即ち、アポロ11 のミッション)をオファーしてるんですが、なぜかボーマンは(家庭の事情とやらで)これを断ってます。 (どころか、NASA と空軍を辞めちゃってますね、とっとと) 
 
>で、その時点で最も月着陸ミッションに適任なのは、言うまでもなく アポロ 8 のボーマン(と、そのクルー)ですから、スレイトンは当初ボーマン組で行こうと考えてました。(←マクデビットにはアポロ 9 での月着陸船のテストが控えていた) が、ボーマンは(2 年間も家を空けていて)まともな家庭生活が望めない、あくせくした任務が厭になってたようで、とっとと辞める旨をスレイトンに打ち明けてたらしいんですよ、既に。
 
などと述べた(フランク・ボーマンに月着陸ミッションから外させるほどの)いわゆる >家庭の事情 とは、要するに妻(スーザン)の事情に他なるまい。
 
 
その921
 
Part 4 1968 (「激動の1968年 アポロ 8 号」)で月軌道上のアポロ 8 のフランク・ボーマンにヒューストンのマイク・コリンズが―
 
The custard is in the oven at 350.  (「プリンは 180 度のオーブンに入れました」)
 
と「奥さんからのメッセージ」を伝えるシーンがある。
 
これは本当の話で(ただし、この時の capcom は実際はコリンズではなくジェリー・カー)、常日頃ボーマンは "You worry about the custard and I'll worry about the flying." とスーザンに言って聞かせていた。
 
ボーマンは自身を part-time father と認めており、自分は任務にかまけて家庭(二人の息子)を顧みれないのでスーザンに丸投げしている―それが(こっちは大丈夫だから)「君はプリンの心配をしていればいい」(家庭のことは頼んでおくよ)の意味で、capcom のジェリー・カーが(「奥さんからのメッセージ」とも何とも説明しないで)唐突に The custard is in the oven at 350. と暗号めいた交信をしてくるものだから、ボーマンは No comprendo. (何のこっちゃ?)とピンとこなかったもよう。 (このシーンでは「よく聞こえなかった」と訊きなおし笑顔で「了解」する演出になってるけれど)
 
余談
 
アポロ 8 のクルーは他に例を見ない奇跡的な組み合わせになっていて、フランク・ボーマン、ジム・ラヴェル、ビル・アンダースは 3 人ともずっと離婚せずにいる。
 
 
その922
 
Part 11 " The Original Wives' Club" (「栄光の陰で 妻たちのアポロ計画」)のラストで紹介されるが、New 9 の妻のうちスーザン・ボーマンとマリリン・ラヴェルの二人を除いて(死別したパット・ホワイトとマリリン・シーはともかく)パット・マクディビット、フェイ・スタフォード、ジェーン・コンラッド、ジャン・アームストロング、バーバラ・ヤングは離婚した。
 
中でも時期的に異例と思えるのはバーバラ・ヤング―ジョン・ヤングとバーバラは早くもアポロ1619724月)を待たずして離婚していて、アポロ16 の打ち上げをココアビーチから見物人に混じって(マリリン・ラヴェルが「アポロ16 はバーバラのミッションでもある」I think it's her mission too. と宇宙飛行士の妻はかくあるべし的な主張をして必ず来ると予想していたとおり)感慨深げな笑みで独り見送るバーバラの姿(←調べた限りでは不届きにもヤングは年内に再婚してるようで、いっそう不憫なシーン)が描かれています。
 
余談
 
マーキュリー7 はと言うと、ベティ・グリソムはともかく、アニー・グレン、ルイーズ・シェパード、ジョー・シラー以外の トゥルーディ・クーパー、マージ・スレイトン、リーン・カーペンターが離婚していて、離婚率では 37    59 New 9 に負けて(勝って?)おります。
 
 

ちなみに、イェーガーは 1990年にグレニスに先立たれ、2003年に 81才で45の相手と)再婚した。(←式には身内も友人も招かず、とうてい周囲の祝福を受けてとは言い難い—どころか、イェーガーと子供たちの骨肉の裁判沙汰と相成りました…)