独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3316】

 

「人類、月に立つ」 シラー 関連―

 

その1636~1638(2014/ 8/21~29)

 

その855(2006/ 8/14)

 

ひょっとして勘違いされてる向きもあるやもしれないが、「人類、月に立つ」は ドキュメンタリーではなしに(「アポロ 13」と同様に)あくまでも ドキュメンタリー・タッチの ドラマであって、フィクション部分も多い―と言うより、堂々と架空のニュース・キャスターを狂言回し的に据えていたり、それこそ架空の ドキュメンタリー・フィルムの撮影クルーを使ってギュンター・ウェントやディー・オハラやシラーやスレイトンらを追わせるという巧妙な手法で、史実(原作は Andrew Chaikin の "A Man on the Moon" )をベースにした ドラマ仕立てになっていることが分る。

 

なので(悪名高き「ライトスタッフ」ほどではないにしろ)迂闊に真に受けないようにしてるけども、わたしが以前 > NASA は事故の原因を「想像力の欠如」などと体裁つけて申しておりますが、それは即ち「無能」であることの謂いに他なりません とアポロ 1 の火災原因について書いてることは、厳密には NASA 当局が主張したのではなく、聴聞会でフランク・ボーマンが(NASA を代弁して?) "It was a failure of imagination." と証言したもよう。 (←もひとつ得心できない…)

 

参考

 

ボーマンは事故原因は何かと問われ "It was a failure of imagination. We were preparing to deal with a capsule fire 180 miles above the earth. We never imagined that one would happen in a simulated test on the launching pad." と(我々の誰も地上での事故を想定していなかった―つまり、NASA 或いはノースアメリカン社だけが悪いのではなく、宇宙飛行士を含む全員の想像力の欠如という)却って責任の所在を曖昧にした(NASA には都合のいい)言い訳をしている。

 

 

その850~852(2006/ 7/15~27)

 

ライトスタッフ」でスレイトン以上に影の薄かったウォーリー・シラーにも「人類、月に立つ」では(アポロ 7 のミッションで)スポットライトが当てられており、その人となりを示すのに例の尿検イタズラ事件が使われてまして、もちろん看護婦のディー・オハラも登場する。

 

これは原作「ザ・ライト・スタッフ」でも紹介されてるから、よく知られた爆笑エピソードなんでしょう。

 

ここでのディー・オハラは(短いシーンながら)シラーのキャラを説明する >狂言回し的な役回りになってますね。(←ま、誰でもそう考えるということか)(その3197参照)

 

 

スレイトンと浜辺で釣り(サーフ)をしながら、シラーが NASA を辞める話をするシーンで「グレンもカーペンターもゴードも NASA を去った」(They look at Glenn and Carpenter and Gordo.)というセリフがあるけれど(IMDb でも指摘されてるように)ゴードン・クーパーはこの時点ではまだ NASA を辞めてはいない―これは単純な間違いと言うより、話をややこしくしないための意図的なもの(臭いものに蓋?)のような気がする。

 

クーパーをアポロ(月ミッション)から外したのがスレイトン(とシェパード)の企みかどうかはともかく、シラーも「もう月に行くチャンスはない、そうだろうディーク?」(It's not as if I'm going to the moon. Right? Deke?)という冗談めかしたセリフがあって、やはり NASA を辞める理由としているが、それを決めるのは(宇宙飛行士の運命を握っているのは)自分ではない(Everyone thinks that I got this big master plan for all the crews, but I don't.)とスレイトンは否定していた―この描き方が微妙に曖昧と言うか、何やら含みがありそうな感じなので。

 

今のところ(part 1 ~ part 4)「人類、月に立つ」は(かねてより考えていたことですけど―その3225参照)スレイトンを軸に展開していて、わたしにとっては(このトピで鍛えられたおかげで)一々が微に入り細を穿って実に解りやすい話になっております。

 

 

前レスの >「グレンもカーペンターもゴードも NASA を去った」 と書いてるのは、見直してみると正確には「アポロを離れた」(I know why they bailed out.)と言ってますね―なら間違いではないのかというと(結局は「NASA を去った」と同じ意味合いゆえ)やはり間違いでありまして、クーパーは(アポロ10 のバックアップを務めてるくらいで)アポロ7 の時点では当然まだプログラムから外れてはいません。

 

それにグレンはケネディが(万が一を心配して)フレンドシップ7以降のフライトを控えさせたのであり、またカーペンターはクリス・クラフトの逆鱗に触れて海の底(シーラブ計画)に沈められたんだから(その3202参照)、クーパーとは違って自らの意志でプログラムを(アポロどころか既にジェミニの段階で)外れたわけでは全然ない。

 

この三者三様、それぞれ事情も経緯も全く異なるクーパーとグレンとカーペンターを一括りにして「アポロを離れた」としてるところが、まさに意図的な臭いものに蓋かと…

 

 

その925~927

 

ウォーリー・シラーは "My wife says our marriage has lasted so long because I was away half the time!" と語っており、それが「人類、月に立つ」 Part 3 : We Have Cleared The Tower (「試練を乗り越えて」)でも そのままセリフに使われていて、架空のインタビューで「家庭円満の秘訣は?」(How have you two kept your marriage together for so long?)と訊かれたジョーが「こんなに永い間別れずにいられたのは、きっと彼があまり家にいないからね」(Well, I think the reason we've been married for so long is because Wally's been away half the time.)と屈託なく応える。 (続けて「この間この人が帰ってきた時、泥棒だと思って警察を呼びそうになった、ホントに」He walked into the house the other day. I thought we were being robbed.I almost called the cops.と笑わせる―こういったジョーの面白さについては 3196参照)

 

かれこれ 60 年いい関係で連れ添った二人だが(←シラーがジョーに電話で「よう、相棒」Hey,buddyと呼びかけるシーンがある)、ついに Final flight May 3, 2007 をもって永遠の別れとなった…

 

余談

 

YURIE さんの訃報連絡からも窺えるように、シラーの記事は >米国初の有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」で選抜されたライトスタッフ(正しい資質)と呼ばれる7人の宇宙飛行士候補生の1人 などと紹介していて、相変わらずライトスタッフという言葉の(我が国に特有の)間違った使い方(訳し方)をしている―「ライトスタッフ」における凸凹リクルータ・コンビの説明も要領を得ませんが(その3042参照)、少なくとも現地(?)ではマーキュリー7(なりイェーガーなり)をライトスタッフと呼んだりしませんので注意しましょう。 (わたしは例えば「イェーガーはライトスタッフだ」とは言っても「イェーガーはライトスタッフと呼ばれる」とは決して言わない―厳密には「イェーガーはライトスタッフだ」も間違った使い方ではあるけども、これは単に便宜的な修辞上の言い回し)

 

 

ウォーリー・シラー、人呼んで(或いは自ら名乗っていた)キャプテン・スカイレイ Captain Skyray ―ニックネームの由来は Douglas F4D Skyray (←the tailless delta のシルエットは確かに空飛ぶエイを思わせる)で、この海軍機はシラーのお気に入りだった。

 

その理由が(いかにもシラーらしく)シャレていて、シラー Schirra の間違った発音(mispronunciation)がスカイレイ Skyray だからだとか。 (←まあ、そう読めないこともないけど無理くりの駄ジャレですね)

 

発音と言えば、あるインタビューでシラーが(あやふやそうに) Gemini はジェミニ(Gemini [short i])かジェミナイ(Gemini [long i])かを今更ながらに質していて(1998年)、わたしも以前は(現地じゃ一般的なはずの)ジェミナイと発音してるものと思っていたところ、どうもジェミニ計画については(ジェミナイと発音してるのを聞いたことがなく)普通に日本語どおりのジェミニが正しいと追々知ったけれど、インタビューアの Roy Neal (NBC-TV)が解説するには NASA のスタッフ(Walter C. Williams)に Gemini の発音を確認したことがあり、その時の(しばし考えてからの)返答以来 TVメディアでは普通にジェミニと言ってるらしい。 (よって、あちらでジェミニと発音されれば、それは宇宙計画の話だと思ってまず間違いなさそう)

 

とすると、NASA は公式には Gemini の発音まで決めてるわけじゃないってことかいな? (← NASA stands for "Never Absolutely Sure of Anything." ―その2956参照)

 

 

訂正 : ってこともないけど、前レスで >どうもジェミニ計画については(ジェミナイと発音してるのを聞いたことがなく) と書いたとたんに 「人類、月に立つ」でノース・アメリカン社の Harrison Storms (に扮するジェームズ・レブホーン)が、あるシーンで(ハッキリと)ジェミナイと言ってるのに気がついた―ストームズだけがそう発音する何か意味があるのかもしれませんが。

 

その1269

 

どうでもいいことだ(ろう)けど、"Moon Shot(1994)" のナレーションのディーク・スレイトン(という設定―本人は前年没)は Gemini を明確(かつ、しきり)に ジェミナイ と発音している。

 

一方で、ジェミニ 3(記録フィルム)のガス・グリソムは ジェミニ と発音してるし、当時を語るシラーも ジェミニ と言っている。

 

ネット上で―

 

Gemini is latin and therefore must be pronounced phonetically gem-i-nee.

 

all through From the Earth to the Moon they pronounced it geminee.

 

Gemini -- the astronauts all pronounced it "jeh-MEE-nee" -- was so named because two astronauts would go up (gemini is Latin for twins).

 

といった感じの断定的注釈を見受けるが、実際は the astronauts all なんてことは全然なくて(例えば)フランク・ボーマンは ジェミナイ 派のよう。

 

あれこれ NASA の動画をチェックしてみた印象では 「結局、どっちやねん?」 やはり―

 

NASA stands for "Never Absolutely Sure of Anything."

 

のようであります。