独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3315】

 

「人類、月に立つ」は「ライトスタッフ」の(射程から外れた)不足・不備を補って余りあるエピソードで大いに愉しませてくれるけれど、ここではシラーも実に印象的に描かれていて、何しろ扮するは(ブレイク前とは言え)あの NCIS 特別捜査官ジェスロ・ギブスことマーク・ハーモンであるからにして、「ライトスタッフ」のランス・ヘンリクセンとは違い(これでもかと)目立ちまくってます。

 

シラーご本人の very well done 評―

 

Johnson Space Center Oral History―Walter M. Schirra, Jr.(1 December 1998)

 

Q: I just said, what was the most difficult aspect of your involvement in the space program?

 

Schirra: The most difficult part? Probably the funerals. When I think about it, we lost some—obviously, we lost three from Apollo 1. I thought, by the way, the television series From the Earth to the Moon was very well done. And they showed me there, or Mark Harmon who portrayed me, in my Navy Captain uniform with Betty Grissom, the widow; and it hit me hard, just seeing that all over again. We very rarely wore our uniforms, other than to visit the Chief of Naval Operations or a funeral. Eisenhower was the President—everybody gives Kennedy the nod, but Eisenhower was what started the manned space program—[who] said this would be an open program to the world.

 

 

re : 7人の侍の 1人

 

のウォーリー・シラーに扮したランス・ヘンリクセン、またはランス・ヘンリクセン扮するウォーリー・シラーについちゃ、独り言レス-その  79(2003/ 7/29)を一部編集して全文再掲―

 

前回のレスで、わたしが不当にもウォリー・シラーのことを槍玉に挙げ、いたずらに彼を侮辱してると感じられたならば、はっきり申し上げておきますが、それは誤解です。

 

ライトスタッフ」において、ランス・ヘンリクセン演じるシラーは妙に暗く、どこかマイナーな存在に描かれている―これこそ不当な扱いであって、もっと正当な評価をしてもらいたいと、むしろ憤っているのですよ、わたしは。 (せめて、もう少し耳に馴染んでいてもらいたいと)

 

Walter Marty Schirra, Jr.―彼については、どうしてもこれだけは言っておきたい、絶対この話はしとかなきゃいけないと考えてたことがあって、その話とは―

 

シラーの父親(シニア)は第一次大戦のエース・パイロットで、戦争が終わってからは(いわゆる)barn-stormers ―スタント飛行を見世物にしてた人ですね、夫婦でそれをやってました。 (ロバート・レッドフォードの「華麗なるヒコーキ野郎」ってありましたよね、あのまんまの雰囲気ですよ、たぶん)

 

実際シラーの母親は、あの映画のように wing walker ―つまり複葉機の翼の上を歩いてたんですと。 彼女がその文字どおりの空中散歩をやめたのは、ジュニアを身ごもったことに気付いたからだって、笑いながら当のジュニアが言っております―俺は、生まれる前から本当に空を飛んでたんだって。(この生まれながらのパイロットの血を、シラーは冗談めかしながらも誇りにしてるわけです)

 

もうこれだけで、ランス・ヘンリクセンとは、全然イメージが違うでしょ?

 

第一、「ライトスタッフ」じゃシグマ7は全く無視されてましたからね―ジョン・グレンのフレンドシップ7から、あっさりホットドッグのフェイス7に飛び越されちゃって。

 

スコット・カーペンターのオーロラ7は(こう言っちゃ何ですが)もともと問題ありすぎの問題外で無視されても仕方ないけど、シラーのシグマ7は普通は外せないでしょう、フライトの完成度からして。

 

何しろ、シラーは地上からの指示なしにシグマ7を本当の意味で自分で操縦して、燃料を無駄にすることなく軌道を 6 周回り、しかもその着水地点はリカバリー艦船からわずか 4.5 マイルしか離れてなくて、スプラッシュダウンする様子が見えてたくらいにドンピシャだったんだから。

 

それもシラーに言わせると、リカバリーするほうが位置を間違えなけりゃ、その真上に降りられたのにってくらいの正確さ―

 

自ら「いつもの教科書どおりのフライト」 a routine textbook flight と言ってのけ、後々まで模範的な宇宙飛行の真髄として引合いに出される、この見事な textbook flight ―まさしくウォリー・シラー、ここにありって感じじゃないですか。

 

後に唯一人、ジェミニ(6 号)、そしてアポロ(7 号)までも飛び続けることになるのも何の不思議もない、お手本の腕利きパイロットなんです、彼は―全然イメージちゃうやん、あのランス・ヘンリクセンとは。 (←「エイリアン」じゃ口から牛乳吐いてたし)

 

そう言や、シラーは朝鮮でミグを 2 機撃墜して、帰国してからサイドワインダーの開発に参加してた際の笑えるエピソードがあって―

 

テスト飛行で無人のターゲットにサイドワインダーをぶっ放してみたところ、どうしたことかそのミサイルはきれいに Uターンしてシラーめがけてまっすぐ向かってきたんで(マジ?)、その時ウォーリー微塵も動ぜず、赤外線センサーをかわすため(父親直伝の?)華麗な宙返りをしてミサイルの後ろに回り込み、危うく難を逃れたという(それこそネタじゃないの? みたいな)俄かには信じがたいホントの話が残ってますから、笑えます。

 

あ、この話じゃないんですよ、わたしが絶対しとかなきゃいけないと思ってるのは… (と、とりあえず手抜きレスをしとこう)

 

 

その1214

 

フィリップ・カウフマンは、そんなシラーを目立たせたくないために、敢えてイメージの暗いランス・ヘンリクセンを起用したのかもしれませんね―おまえは前に出てくるんじゃないよ、話がややこしくなるから、とでも言わんばかりに。

 

今にして思えば、もっとシラーを前面に出した演出だったらランス・ヘンリクセンとて上手くハマッた感じにできていた気もする―いや、そうに違いない。

 

「人類、月に立つ」のシラー(マーク・ハーモン)はアポロ 1 の後(即ちグリソム亡き後)の以前とは人が変わったシラーで、こちらにもキャラ的に合っていようし。

 

もう少しランス・ヘンリクセンが若けりゃ(ロン・ハワードトム・ハンクスは)「人類、月に立つ」のシラー役にも招いて(デヴィッド・クレノンのようにゲスト出演して)いたんじゃなかろうかと思い当たると、何だか惜しい…

 

※ ちなみに Satellite Award for Best Supporting Actor の1998年受賞者は David Clennon(From the Earth to the Moon)で、Lance Henriksen(The Day Lincoln Was Shot)もノミネートされている。