独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3243】

 

その 893~895

 

宇宙飛行士に地質学をレクチャーするようジャック・シュミットに頼まれたシルバー教授は最初(月は専門外だし仕事で忙しいと)すげなく断るも、シュミットに巧く説得され(月の石に興味を示し)乗り気になる―ありがちな脚色ながら、まるでデヴィッド・クレノンが乞われて客演したとでも思わせぶりの登場の仕方、実際のシルバー教授は(アポロ11 の船外活動ぶりに感銘を受け)もとより月サンプルを分析する心積もりで、オファーには二つ返事の態勢だった。 (←事前の打診もあったような)

 

ご本人の目にも「人類、月に立つ」の体裁よく脚色されたシルバー教授、即ちデヴィッド・クレノン(David Clennon in the HBO film)は美味しい役(a very fine and romantic rendition of me)と映ったらしく、話は気に入られたものの(very pleased with it)玉に瑕が一つあって、ハードな野外レクチャーでは腹ぺこ連中の晩飯を自分が作ってやっていたことが描かれてない(it failed to show that after I spent the day with the astronauts I had to cook dinner for them.)と、ややご不満気に仰ってます。 (←スコットによれば "He was a really good cook.")

 

テントなどなく 寝袋持参だし、付け焼刃どころではない鍛えられ方だったようで(In the film they were sitting in the shade. I never allowed anybody to sit in the shade.)野外地質学の勉強も楽じゃありません。(Lee Silver “A little science on the Moon” by Marcy Drexler)

 

余談

 

良師 シルバー教授に感化されたスコットは完全に地質学にハマッてしまい、日常的に地質学用語が口をついて出るようになった―その意味を理解させるために奥さんにも地質学の勉強を無理強いしたとか。 (宇宙飛行士の奥方も楽じゃありません)

 

 

参考

 

People Magazine Chat -- From the Earth to the Moon (April 1, 1997―ゲストは David Scott、 Brett Cullen、 Dr. Lee Silver、 David Clennon)で、あるファンに I've always dreamed of being the first woman to set foot on the moon, any suggestions on how to accomplish this goal? と質問されて、デイヴ・スコットは―

 

Well, I should think that to be the first woman on the moon, being a geologist would be a good step. Be a good field geologist…

 

と答え、スコット役のブレット・カレンが And a pilot... と付け足すと―

 

You can do that, but there will always be people flying.  You would probably have a better chance being selected for your geology skills.

 

と、月に行くには(ざらにいるパイロットよりも ←むろんスコット自身バリバリのテストパイロット―その2946参照)地質学者になるのが早道だろうと主張している。 (←その実例がジャック・シュミット)

 

 

ジャック・シュミットがカリフォルニア工科大のシルバー教授のもとを訪れるシーン―

 

「ハリソン・シュミットという将来有望な教え子がいたが、地質学から脚を洗った」(I had a student named Harrison Schmitt once. Promising young field geologist. Pity he didn't decide to pursue it.)

 

「ええ、ちょっと横道にそれたみたいで…」(Yeah, I know. He got himself a little sidetracked.)

 

こんな会話を実際に二人がしたとは考えにくい―なぜなら、シュミット Harrison "Jack" Schmitt は 6 人の scientist-astronauts (group 4)の一人で、その選考では飛行経験のクリテリアは緩和されていた(フライト時間は問われない)かわりに、もちろん科学者(博士 a doctorate degree in the natural sciences, medicine, engineering or the equivalent experience)でなければならず、シュミットは歴とした地質学博士(doctorate in geology from Harvard University in 1964)だったのだから。(←いわば脚を洗わずに二足のワラジを履いてたわけで)

 

アポロ15 のバックアップだったシュミットはスレイトン方式の予定では(次の次の次の)アポロ18 で月に降りるはずが、あえなくアポロ18~20 がプロジェクトの縮小でキャンセルになり、皮肉にも宇宙飛行士の地質学訓練をサポートしてきた月面探査の最適任者が月に行けなくなったと思われるも、土壇場でラストチャンスのアポロ17 の LMP に任命される―これも偏にシュミットが地質学者だったゆえの差し替えであり、もともとのアポロ17 の LMP(アポロ14 のバックアップ)だった哀れジョー・エングルは(優秀だろうと何だろうと―その2918参照)ただのパイロットにすぎないので(締め括りの科学ミッション、そのコンセプトのタテマエと言うか世間体からしても)scientist-astronauts で唯一の地質学者 シュミットが順当に後押し(科学者サイドからプッシュ)されたものでしょう。