独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3254】

 

その1019

 

スコットは ドリルが抜けなくなるという思いもよらぬ トラブルに、おまけに(呆れたことには)工具の万力が後ろ向き(?)仕様になってたとかで使いものにならず(Scott : Oh boy! This vise is on... I swear it's on backwards.  ←当然 アポロ16 では改善された)、もはやコア・サンプル採取を放棄したくなっていた。

 

原文(交信記録)では殆んど切れかかったスコットの苛立ちが如実に表われている感じがするけれど、その辺を「人類、月に立つ」はバックルームの地質学者間の言い争いに代弁させる演出になっていて―

 

「何よりコア・サンプルを取らないと」(We need those core samples.)

 

「ドリルは抜けない 絶対に無理だ 時間がもったいない」(No, they can't get them out. That's obvious. Are you gonna blow the whole EVA on them?)

 

「いや、コア・サンプルが最優先だ」(If that's what it takes.)

 

「もう諦めてハドリー谷に向わせよう」(We're cutting into the drive to Hadley Rille.)

 

「そういうわけにはいかん!」(That is not an option.)

 

その無益な諍いをシルバー教授が手際よく仕切って巧く仲裁(liaison)し、ついに ドリルは抜ける(メデタシ、メデタシ)―という、いわばシルバー教授(=デヴィッド・クレノン)持ち上げネタのダシに(あざとく)使われておりますね。

 

余談

 

アーウィンがスコットに手を貸して ドリルを抜く際の軽口―「今日の朝メシにフリーズドライのほうれん草があったから、いけるかもよ」(I hope that freeze-dried spinach we had for breakfast pays off.)は交信記録に見当たらないようなので作ってるセリフだろうけど、実際にアポロ当時の宇宙食メニューにフリーズドライのほうれん草があったかどうかは(どうでもいいけど)未確認。

 

 

その2089

 

フリーズドライのほうれん草

 

ISS の Astronaut Takuya Onishi レポート(2016年 8月21日)―

 

今日の晩御飯に食べたほうれん草のゴマ和えが絶品でした。お湯を 100 ml 加えるだけで、あそこまで元の味を再現してくれるとは、フリーズドライ恐るべしです。

 

とあるように、現在はフリーズドライのほうれん草(それも絶品のゴマ和え)が存在するのは明確ですが、一般にフリーズドライ宇宙食はスカイラブからで、やはりアポロのメニューにはなかったもようゆえ―

 

I hope that freeze-dried spinach we had for breakfast pays off.

 

は作られたギャグなんでしょう―a can of spinach じゃなく(わざわざ) freeze-dried spinach という(いかにもの)フレーズが。

 

 

その1020

 

蛇足

 

ここしばらく トピずれ(どころか、下手するとカテ違い)ネタばかりと お嘆きの純正ライトスタッフ・ファン諸兄への釈明として、久々に独りよがり妄想こじつけレクチャー、題して「人類、月に立つ Part 10 は名作です」をば―

 

「人類、月に立つ」 Part 10 : Galileo Was Right (「ガリレオは正しかった アポロ15号」)は時系列無視の脚色もそうだけれど、そもそも「ライトスタッフ」の liaison man ことデヴィッド・クレノンを a very special guest として招いていることからして、明らかに「ライトスタッフ」へのオマージュ的構成―と言っても、シルバー教授に扮するデヴィッド・クレノンが地質学者間の対立を仲裁する(仲立ちとなる)シーンなどは「ライトスタッフ」の liaison man を連想させはするものの、むろん「人類、月に立つ」におけるデヴィッド・クレノンは liaison man ではなく(←「人類、月に立つ」と「ライトスタッフ」を liaison してはいるが)、その役回りはシルバー教授の教え子であるジャック・シュミットが担う。

 

ならば「人類、月に立つ」のデヴィッド・クレノンは何者なのかと言うと、「ライトスタッフ」の大筋 >イェーガーからホットドッグへのライトスタッフの系譜、この文脈(ホットドッグとイェーガーの関係)を「人類、月に立つ」に投影して見るなら、デイヴ・スコットがホットドッグで、シルバー教授はイェーガーに相当する―つまり、基本的な構図が重なっていて、「人類、月に立つ」のデヴィッド・クレノンは「ライトスタッフ」のイェーガーと同じ立ち位置にあることが明快かつ容易に了解できる。

 

換言すれば、「人類、月に立つ」においてイェーガーは(>蚊帳の外 のようでありながら、ふと気が付くと)実はデヴィッド・クレノンという存在に姿を変えて(少なくとも、わたしのイマジネーションには)登場していたわけで、かくして「人類、月に立つ」 Part 10 : Galileo Was Right は純正ライトスタッフ・ファンには格別(にして別格)の意味を持つはずの(従って、決してトピずれにはならない)名作エピソードだと立論できるのである―

 

と、わたしは言いたい。