【誰にともなしに、独り言レス―その3209】
その 511~514 (2004/11/19~22)
ウォーリー・シラーはジョン・グレンの STS-95 のミッションには何の科学的価値もないと言ってます。 (かつ、決して批判してるのではないとも)
まあ、ご大層にペイロード・スペシャリストとか何とか言ったって、グレンの場合は単なるバラストだという声もあったし、その意義については素人目にも胡散臭く見えるのが当然でしょう。
同じくペイロード・スペシャリストのチアキ・ムカイには睡眠剤(メラトニン)を使った睡眠実験が課せられたが、グレンはメラトニン服用を免除される―なぜか?
シラーが(例によってウソかホントか)冗談まじりに解説するには―
シラーは発射台に向かう途中(たぶんバンのなかで)眠ってしまったそうで、ゴードン・クーパーは(「ライトスタッフ」で描かれるとおり)打ち上げ前のカプセルで高いびき―我々マーキュリーの宇宙飛行士というのは、いかなる場所でも眠れるんだと。
さて、ジョン・グレンはと言うと―アラン・シェパードの追悼式の壇上で、しっかり居眠りしてたそうな。
かくの如く(そこが宇宙だろうが葬儀の場だろうが)所かまわず確実に眠ってしまうに違いない被験者からは、およそメラトニン(またはプラセボ)の服用に基づく有意義な実験データは得られそうにない―という理由だとか。 (←半分、ホントの話のような)
イェーガーの(歯に衣を着せぬ)ストレートな批判―
"It's a payoff to Glenn for his support of Clinton and also the NASA budget "
要するに、クリントンを支援してきた(民主党の)上院議員にして(かつての)宇宙飛行士のヒーローであるジョン・グレンへの見返り(reward)が STS-95 の搭乗券であり、また NASA にとっては(予算獲得のための広告塔と言うか)恰好の宣伝(hype)になるからだと(相変わらず言いたいことを)仰ってますね、誰に憚ることなく。("And also, NASA needs the publicity, and they couldn't have picked a better guy to hype the space program,"―San Antonio Express-News Chicago Tribune October 30, 1998)
これに対しホワイトハウスは、グレンのシャトル・ミッションに大統領は何ら関与してないし、誰を飛ばすかは専ら NASA (administrator)が決定しているとの反論。
NASA は NASA で(笑止にも、マーキュリーを思い出させるかのように)イェーガーは自分がオファーされなかったので(つまり、負け惜しみで)そんな批判をしてるんだろうとまで言ってますね。
そしてグレンのシャトル・ミッションの意義については、老人性の睡眠障害を解明する手助けになるだろうと述べております―結局、グレンにはメラトニンを使った実験はなされなかったにも拘らず。 (←むしろ、この点では被験者としての意義はなかったということになりましょう― 語るに落ちたか)
STS-95 の TV 中継のために各局はそれぞれマーキュリー 4/7 の(むろんジョン・グレンを除く)3 人を割り振りして押さえる―ゴードン・クーパーが CBS、ウォーリー・シラーが ABC、スコット・カーペンターが NBC といった具合。 (ちなみに CNN にクロンカイト)
笑っちゃうことに、当初 NASA は(姑息にも)カーペンターを管制室に招いて、打ち上げの瞬間の感動的な "Godspeed, John Glenn" を再現しようと目論んでたものの、既に NBC に持ってかれてたという(トホホな)話もある。 (←マーキュリー当時の NASA の仕打ちを思えば、何を今更という気もするが)
カーペンターは(グレンのパシリでもあり)おこぼれ的に注目されてたせいか、ホワイトハウスから STS-95 と交信してさえいるようで。
そんな状況のカーペンターが、我々(宇宙飛行士)は 「ジョン・グレンを含めて」 消耗品 expendable だ―と(その真意は定かではないけど)いかにも意味ありげ(philosophical)なことを申しております。
バズ・オルドリンはグレンのシャトル・ミッションが羨ましい(envious)んじゃないかと訊かれ、「何でや? こっちは月に行ってるがな―グレンは行ってへん」と(アホかとばかりに笑って)応えて、ウォーリー・シラーは「もう 3 度(シグマ7、ジェミニ 6、アポロ 7)飛んでるから」、ゴードン・クーパーも「グレンは 5 時間しか飛んだことないし」と何気に実質的なキャリアの差を強調してますね。
イェーガーが(NASA の反論するように)ジョン・グレンのことで負け惜しみを言ってるなどとは露ほども感じられないけれど、他の連中(元・宇宙飛行士)の言葉には(聞きようによっては)妬みとかヤッカミとかが微妙に窺われなくもないか―彼らパイロットは、やはり何度でも宇宙に飛びたいというのが本音でしょうから。 (むろん、その点ではイェーガーとて決して例外ではなかろう―と思う)
蛇足
73才のクーパーは、まだ若すぎるから自分のぶんは火星にとってある―つまり、グレンと同じ 77才になったら火星に行くと(半ば本気で)言い張ってましたが、ついに先頃(2004/10/4) その 77才にして(おそらく火星よりも)ずっと遠くに行(逝)ってしまいよりました。