独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3210】

 

チアキ・ムカイは、某 A 新聞の宇宙フォーラム(2020)にて、STS-95 のジョン・グレンを例に、77歳でも「月の遊覧飛行」ができるとスピーチしている。

 

77歳の遊覧飛行…

 

(自身も当時は日本人飛行士なんてシャトルに「乗せてあげるよ」てな扱いだったらしいので、グレン & ムカイは冗長装置 redundant component コンビといったところか)

 

 

その 516~519 (2004/11/24~26)

 

ジョン・グレンに最高齢記録を破られたのはストーリー・マスグレイブ Story Musgrave で、この人は(「アポロ 13」でケン・マッティングリーに扮した)ゲーリーシニーズの「ミッション・トゥ・マーズ」で capcom 役で出演したり、「クローン」ではコンサルタントを担当したりして―なんてことより、もともと NASA きっての有能な(かつ、実に多才な) scientist-astronaut として、よく知られておりました。

 

特に、1993年 STS-61 でペイロードコマンダーとしてハッブル宇宙望遠鏡を修理したことでも有名―この時、マスグレイブは 3 度(合計 22時間)にわたり船外作業(EVA)。(←もはや space walk なんて優雅なもんじゃないね、こうなると)

 

そんなマスグレイブも(6 回目のシャトル・ミッションになる)1996年の STS-80 (当時 61才)を最後に、翌 1997年 (30年間きっちり勤めた) NASA を辞め(させられ)ました―高齢ゆえ、もはや飛ぶ機会はないと告げられたから。

 

ところが、NASA は突然 1998年に 77才にもなるジョン・グレンを、まさに高齢ゆえにシャトル・ミッションに使ったわけで、これじゃ誰しも妙な話だと訝るのも当然でありましょう。

 

1200時間以上の宇宙飛行(シャトル)経験のあるマスグレイブは、経験の浅い(←何しろ一度だけ 5 時間しか飛んでない)グレンが上院議員に在職していながら(いわば片手間に)シャトルに搭乗することを "I was a career astronaut, he was a career senator. " とストレートに皮肉って(斬り捨てて)ます。

 

 

まさか、グレンを使うためにマスグレイブを降ろしたとまでは思わないが、ミッションの目的が本当に言われるものであったのなら、何も無理して 36 年も宇宙とは縁のなかったグレンを担ぎ出さずとも、辞めたばかり(←グレンのミッションが発表される 4ヶ月前)のマスグレイブに一声かけりゃ簡単に済むこと―そのほうが、あらゆる意味で合理的(経済的、効率的)で、すんなり筋が通る。

 

マスグレイブは医学博士で生理学にも精通してるし(ちなみに medicine, physiology, mathematics, computers, chemistry, literature, philosophy, psychology, history などの学位を持っていて、おまけにパイロットにしてパラシューティスト)、何たって 40代~60代に 6 回もシャトルで飛んでる熟練のミッション・スペシャリスト―彼に比べてグレンに優ってる点があるとすれば、はるかに年寄りだということくらいか。 (←ま、この点は確かに重要ではあるにしても、逆に年寄りすぎるというミもフタもない指摘もある)

 

そうなると、もう一人 肝心な人を忘れちゃいませんか―と言いたくなるのが、やはり 6 回(ジェミニ、アポロ、シャトルを 2 回づつとバラエティに)飛んだ、ご存じ ジョン・ヤング

 

 

その 484 で >名前からして若い(準ライトスタッフこと)ジョン・ヤング(1930年生まれ)は、現在でも(正式の現役宇宙飛行士として)シャトルの搭乗資格をずっと維持してるんですよ―こういう特異な例はサンプルには不向きだと思われます と、わたしは先走って書いてますね。(その3195参照)

 

異常に(つまり年齢に不相応に)元気な高齢者は、この実験の主旨に反するんじゃないかと考えたからで、その意味ではマスグレイブはもっと向いてないとも言えましょう。 (←その異常な元気さときたら、STS-61 での長丁場 EVA が証明している)

 

ただ、NASA が宇宙で(老人性の睡眠障害を含む)老化現象に関する実験をする際に、被験者候補として最も手近な存在はジョン・ヤングであったことに異論を挟みようはありますまい。

 

なぜなら、ヤングは 1998年 当時も 68才にして現役の NASA の宇宙飛行士、即ち(改めて宇宙飛行訓練などする必要のない)スタンバイ状態のシャトル・クルー(それもパイロット)だったんだから。

 

マスグレイブはともかく、大昔に NASA を辞めて(すっかり)錆びついてるグレンを(わざわざオハイオの片田舎から)引っぱり出して鍛えなおさなくたって、ちゃんと目の前にいるじゃん―ピカピカの高齢者が。

 

 

伝えられるところによると、リフトオフ(10月29日)のずいぶん前(たぶん 8 月)に、ジョン・グレンは検査(メディカル・チェック)で問題があったため、密かに例の(主要な実験テーマのひとつである)メラトニン服用実験から外されていたとか。 (←それが本当なら、バックアップと交替させられてもおかしくない事態だと思うが、もちろんグレンのバックアップなどハナから用意されてない)

 

その真相はどうであれ(あくまでも建前としては)健康面に問題のない、歳相応に元気な被験者だったはずなのに、まるで話の辻褄が合わないと言うか、これだけでも NASA の理屈は破綻している―グレンを飛ばす理由(目的)は、何よりもこの実験にこそあるというのが NASA の論拠だったわけだから。 (その実験をやらないってんじゃ、話にならない)

 

まあ、あれこれ(マスグレイブやヤングを引き合いに出して)考えるまでもなく、NASA の言うグレンのペイロードスペシャリストとしての役割とやらは明らかに後付けの理由にすぎないということでしょう。 (シラーが >何の科学的価値もない と言ってるのは、厳密には―グレンは何か科学的価値のあることをしようとしてるのでは全然ない、つまりは決して科学的な目的のためにシャトルに乗るのではないという意味の、まことに核心を突いたものだと理解できる)

 

マスグレイブも主張するように、グレンのシャトル・ミッションの本当の理由は、彼がジョン・グレンであり、上院議員だからに他ならない(because he is John Glenn, and because he's a senator.)―これに尽きます。

 

マーキュリー7に選ばれてから 40 年になると言うのに、ここでも依然として「グレンは NASA にえこ贔屓されている説」(その2935~6、3128~33参照)が当てはまってしまう―これぞ、まさしくグレンの面目躍如、ジョン・グレンジョン・グレンたる所以だと申せましょうか。