【誰にともなしに、独り言レス―その3354】
もとよりウォリー・ファンク Wally Funk とジョン・グレンには浅からぬ因縁があって、マーキュリー13 の(公式には NASA には属さない)プログラムが唐突に潰された件(その3159参照)へのファンクの反応―
"I'm a positive person. Things were cancelled ? So what ? Wally's going on. Why are people so negative ? I'm not a quitter." (The Guardian 2019/06/24 “'I'll be flying till I die!' Why Wally Funk won't give up her lifelong space mission”)
この見上げたしぶとさ(その3320参照)―裏ライトスタッフどころか、王道にして堂々たるコメントですね。
再掲 関連レス―その3164
その1038~1042
とあるページ(Century Mission 2004)で Return to Apollo をテーマにスペースシャトル月着陸ミッションの仮想クルー 5人の名前を選出していて(←シャトルじゃ月まで飛べないなんてヤボな突っ込みは不可)まことに興味深い。
Buzz Aldrin Commander
Pete Conrad Command Module Pilot
Dick Gordon Mission Specialist
Alan Shepard Mission Specialist
そして残る Lunar Module Pilot は誰を名乗っているとお思いか?
仮想月面着陸の様子の一節に Buzz Aldrin stepped on to the surface of the moon. He was followed three minutes later by LMP, Jerrie Cobb, who becomes the first woman to walk on a different planet. とある。
そう、LMP は何とジェリー・コッブという仮名でシミュレートされてるのだった。 (←オルドリン、コンラッド、ゴードン、シェパードが実際のアポロ月着陸ミッション・クルーであるのに対し、ジェリー・コッブは月に行くどころか、正式には宇宙飛行士の訓練生 Lady Astronaut Trainee 止まりだったことを思い出されよ)
註 : これは小学生(Columbus Magnet Elementary School)の課外活動か何からしく、どうやら LMP に任命された女子生徒がリスペクトするアポロ宇宙飛行士のカウンターパートとして(もちろん当時の飛行士にレディースはいなかったゆえ)いみじくも マーキュリー13 のジェリー・コッブの名前を選出したものと想像される。 (従って、わたしの邪な妄想とは全く異質のシミュレーション)
1998年10月、77才のジョン・グレンが搭乗するスペースシャトル(STS-95)の打ち上げに際し、ジェリー・コッブは(本心かどうかはともかく) "I'm happy to be here and to wish a fellow pilot, a kindred spirit John Glenn, a very safe flight." と見送り―
"80 percent of the older people in nursing homes are women. So I think that we need the research on women as well as men. I hope that I will be chosen to do that part of the medical research."
と、次は高齢女性の被験者として自分を選ぶべき旨の発言をしている。
そのことは当時の NASA 長官 Daniel Goldin も(本心かどうかはともかく)次はジェリー・コッブ以外にいない("It's logical that a woman will be next and there is no one in America more qualified and deserving to be in that space shuttle than Jerrie.")と率直に(必然的 logical とさえ)認めていたものの、残念ながら 10 年経ってもジェリーのフライトは日の目を見ていない。
今やスペースシャトルには大和撫子も当たり前に参加する時代になり、聞くところによるとレディースのみのミッションも計画されているとか―その時こそラスト・チャンス? (現在 ジェリー 77才…) [ died on March 18, 2019 at age 88 ]
ジョン・グレンの次はジェリー・コッブだという(一見もっともな)主張は、実は決して(NASA の長官が言う) " logical " (論理的)ではない―そもそもの前提であるジョン・グレンのミッションが間違っているのだから。
グレンがスペースシャトルで飛んだ理由は、単に彼が上院議員 ジョン・グレンだったがゆえであって、老化現象に関する実験云々は体裁付けのタテマエにすぎない。
従って、あくまでジョン・グレンを引き合いに出す限り、ジェリー・コッブのシャトル・ミッションに必然性などないし、むしろ未だにジェリーが飛んでないという現実が(馬鹿げた言い方だが)論理的に正しい帰結だろう。
※ ただし、NASA 長官のコメントそのものが「もしもグレンのミッションが首尾よくいけば」(if everything goes well with the John Glenn flight and the medical data comes back)との、わたしには見え透いた(ハナから満たされるべくもない条件付きの)仮の話のようなので、空虚な形式的整合性はあるという意味では確かに logical と申せましょうか。
いっそのこと、レディース・シャトル・ミッションには(ジェリー・コッブ一人に限定せず)マーキュリー13 の選抜メンバーで大いに賑わってもらったらよろしい。
1995年、アイリーン・コリンズがシャトル(STS-63)のパイロットとして飛んだ際に結集した 7/13 (Jerrie Cobb, Wally Funk, Gene Nora Jessen, Jerri Truhill, Sarah Rutley, Myrtle Cagle, Bernice Steadman)からミッション・スペシャリストなりペイロード・スペシャリストなりを 5人ばかりピックアップして(←船長には 2006年に引退したアイリーン・コリンズにカムバックさせ、パイロットは現役レディースに任せる)ミッション内容を適当に見繕ってやりゃ、まんざらムチャな話でもなかろうと思うが―ま、冗談です。
蛇足
わたしの妄想するレディース・ミッションは―船長 ジャッキー・コクラン、パイロット ジェリー・コッブ、そして特別顧問にチャック・イェーガー ←そうなると、パンチョ・バーンズも黙っていまい…
アイリーン・コリンズ Eileen Collins は WASP (Women Airforce Service Pilots)に感化されて空軍パイロットになったようで("I admired the courage of these women to go and fly into dangerous situations!")、1990年にエドワーズのテストパイロット・スクールを出て NASA に入り、宇宙飛行士に選ばれた。
STS-63(1995年)で the first woman pilot of a Space Shuttle となり、STS-84(1997年)でもパイロットを務め、STS-93(1999年)で the first woman Shuttle Commander、ラストフライトはコロンビア号事故後の再開ミッション STS-114(2005年)の CDR だった。
現役レディース・パイロットにはパム・メルロイ Pamela Melroy ―STS-120(2007年)で(アイリーン・コリンズの後を継ぎ) the second woman Shuttle Commander に昇格しているが、STS-92(2000年)と STS-112(2002年)のパイロットで、やはりエドワーズのテストパイロット・スクール卒(1992年)の空軍レディース。
従って、この二人はジェリー・コッブら当時のレディースを締め出したマーキュリー宇宙飛行士の選考基準(Be a test-pilot school graduate. Be a qualified jet pilot.)を余裕でクリアしていることになりますね―むろん性別を除いては、だけれど。