独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その2921
 
ライトスタッフ」に最初に登場する民間パイロットはスリック・グッドリン―
 
その643
 
WK 28whiskey kilo two eight)なるコードの X-1 の墜落は作り話ですので、当然 農場を買ったパイロットも作り話ですけど、あれは普通に空軍(陸軍航空隊)のパイロットに見えますでしょ、素直に見るなら。(実際、扮してるのが現役の空軍少佐ですし)
 
でも、よくよく考えてみたら、イェーガーが飛ぶ前ですから 空軍のパイロットなわけないですよね、話の(←ぐちゃぐちゃの作り話にしても)辻褄からするなら。
 
イェーガー(とボブ・フーバー、リドリーの空軍チーム)以前は ベル社の雇われパイロット(スリック・グッドリンら)が X-1 をテストしていたところが、アホのグッドリンが 150,000ドルという法外なギャラを要求したんで、イェーガーに任せることになった―映画でも描かれてましたでしょ、空軍のパイロットなら普段の給料($283 a month)で済むと。
 
従って、冒頭で墜落した X-1 パイロットは空軍であるはずはなく、グッドリン同様 ベル社のおかかえだということになります―そう思って見ると、イェーガー、リドリー、グッドリンの 3 人が見送る際に、グッドリンだけが(同僚だから?) thumbs up で応えるカットがある。(あのスリー・ショットも本当はありえんのだろうが…)
 
この「農場を買う」という表現は(その640 に書いたように)グッドリンのセリフのもとネタ(原作 The Right Stuff)では―
 
The sound barrier was a farm you could buy in the sky.
 
となっている。
 
イェーガーの給料(his regular Army captain's pay)については―
 
He took it for $283 a month, or $3,396 a year
 
とある。
 
 
その640
 
農場を買う  buy the farm
 
という言い回しは、この章に 「死神にとっつかまった」 と訳されてる "bought it" というのがあるようですが、映画でのスリック・グッドリンのセリフ―
 
Sound barrier's a farm you can buy in the sky.  (音速の壁は、空中で買うはめになるかもしれん農場だ)
 
は、第 3 イエーガー に―
 
音の壁は空で買うことのできる農園だった (The sound barrier was a farm you could buy in the sky.
 
という、その元ネタに違いないクダリがある―こんな(腹立たしいまでに不親切な)直訳では誰しも何のこっちゃ? でしょうけど。 (ひょっとして、訳者自身からして何のこっちゃ?なのか…)
 
かと言って、字幕の 「破ろうとする者は必ず死ぬ」 では(レトリックがなさすぎて)ミもフタもないが。
 
 
その35
 
What's that sound
 
イェーガーが音速の壁を破った時、爆発音を聞いた地上の連中(エドワーズの少佐、liaison man、パンチョ、スリックら)はうなだれてしまいます。
 
そして、少佐か誰か(スリック?)が  He bought the farm. (字幕は「だめだ」)とうめくんです。
 
この buy the farm  農場を買う これって、何のこっちゃでしょう?
 
これは要するに die 「死ぬ」を意味するんですが、そりゃまたいったいなぜか?
 
調べてみると、この語源はあれこれ諸説紛々なんですけど、ここは身びいきで空軍コジツケみたいな面白い説をいくつか―
 
戦闘機が農場に墜落して損害を与えると、当然のことながら政府は賠償請求されますが、その損害賠償額が往々にして農場の土地やら建物やらの抵当とか借金とかをペイして余りあるものだったらしいんです。
 
いわゆる「焼けぶとり」ってやつですか。
 
一方、そんな酷い墜落をしたパイロットはたいてい死んじゃってますから、「あいつはその命と引き換えに農場を買った」と言われる、てなわけです。
 
そうじゃなくて単純に、軍が支給していたパイロット自身の保険金で遺族が「農場を買う」という、ミもフタもないというか何のヒネリもない説もあります。
 
更には、もっとロマンチックな(私的にはイチオシの)説がこれ ↓
 
戦争が終わって故郷に帰ったら、農場を買って落ち着きたい―
 
いつもそう言い合ってたパイロットが、あえなく撃墜されてしまう。
 
その時、仲間のひとりが呟くんです―
 
「あいつの戦争は終わった、農場を買ったんだ」と…
 
って、まるで B 級映画にありがちな、そんなできすぎた話さえあるみたいです。
 
いずれにしても、当然のことながら空軍では単に死ぬことじゃなくて墜落死することを「農場を買う」と言う、そんな印象を受けますね。
 
で、あのシーン、地上の連中は初めてソニックブームなるものを聞いたんですから、無理もありません。 勘違いしてしまったわけです―
 
イェーガーは農場を買った、と。
 
蛇足
 
そのイェーガーも NF-104 では危うく農場を買わされるところでした―いったんは買ってたけど、かろうじてクーリングオフしたって感じですかね。
 
もっとも、あの辺は砂漠だもんな、農場なんて買えないか―サボテンのトゲがけつに刺さるくらいで…