【誰にともなしに、独り言レス―その3505】
ウェルチの XP-86 は X-1 音速突破プログラムとは何の関係もないので、そこでの言及がないのは(ややこしさ回避のためなら)特に変でもないにせよ、メル・アプトの "inertia coupling" を論じる節で(その3456参照)、何人かのパイロットが遭遇したケースを例示し―
Inertia coupling nearly killed Kit Murray in 1954, when he set an altitude record of 94,000 feet in the X-1A, and it had hit Joe Walker twice, once in the XF-102 and again in the X-3.
慣性結合は一九五四年にキット・マレーが X1A で九万四千フィートの高度記録を樹てたときにも、危うくキットの命を奪うところだったし、ジョー・ウォーカーは FX102[ママ]と X3 で一度ずつそれに見舞われた。[中公文庫]
註)訳は FX-102 と誤記してるが、原文の XF-102 も厳密にはペンが滑っていて F-102 Delta Dagger の prototype は YF-102
なのに、なぜか典型的な事故事例のウェルチの F-100A は挙げてない。
時系列で言うと、12 December 1953 イェーガーの X-1A、 4 June 1954 キット・マレーの X-1A、27 October 1954 ジョー・ウォーカーの X-3、そしてメル・アプトの X-2 が 27 September 1956 だから X シリーズ(X-planes)のロケット機についての inertia coupling と受け取れはするにしても、ジョー・ウォーカーの XF-102(YF-102)を引き合いに出してしまってる時点で変なんですよ、どう考えても。
ジョー・ウォーカーの X-3 の 2 週間前の 12 October 1954、ウェルチの F-100A は空中分解している。
ウォーカーは YF-102 のテスト(デルタ翼の coupling データ)に際し(自ら味わった X-3 と)F-100A の inertia coupling を肝に銘じて慎重になったはずだろうに。
つまり、イェーガーの X-1 にウェルチ(の XP-86)の出る幕はないと言えても、イェーガーの X-1A(の inertia coupling)にはウェルチの F-100A(の inertia coupling)ネタが絡んでこなきゃ変でしょって話、あまりに不自然で―トム・ウルフは George Welch の名前を端からブロックしてたんでしょうかね(忖度して?)