【誰にともなしに、独り言レス―その3239】
その1010～1011
アポロ14 の月面迷子騒動にバックルームでやきもきしていたシルバー教授に（そこに一緒にいた）デイヴ・スコットは―
"Lee, that’s not going to happen on our mission."
と、あんなドジを踏むことなど自身がコマンドするアポロ15 では起るべくもない（ので心配ご無用）と声をかけたとか。
ご承知のように、もともとアポロ14 は（トラブルで月着陸できなかった）あのアポロ13 の肩代わりミッションであるから、むしろ引き継いだミッション内容云々よりも、とりあえずは着陸地点（フラ・マウロ）に降りて無事に帰ってくることが第一で（←アポロ 1 を引き継いだアポロ 7 のミッション事情に共通していよう）、加えてシェパードの個人的スタンスを思えば、とうてい地質学的準備（取り組み方）が万全とはいかなかったのが実態だったらしい。
アポロ14 の担任ではなかったシルバー教授は（酔狂な月面ゴルフには目を瞑るにしても）クルーの準備不足（勉強不足）に苦言を呈している。 （the Apollo 14 crews did not have the right attitude, did not learn enough about their mission, and they weren’t ready.）
シルバー教授の言う Apollo 14 did not have the capabilities for extra-vehicular activity and mobility that 15 did. の真意は単にハード面（月面車などの装備）についてよりも、ソフト面（クルーの姿勢・能力の差）にこそあるのだろう―つまりは Apollo 15 was prepared to do science and it had intelligent people who understood the targets and they did their job. ということなんでしょう。 （People Magazine Chat — From the Earth to the Moon 1 April 1997）
蛇足
要するにシェパードは（地質学的に） intelligent people ではなかった（早い話がアホ）ということですが、純正ライトスタッフ・ファンとしては（どうしても）ここにイェーガーを重ねてイメージしてしまうゆえ、この（テストパイロットではなく地質学者に属するはずの）わたしですら、地質学者の分際でライトスタッフ（テストパイロット）をなめるんじゃ～ないという微妙な心境でもある…
アポロ14 の月面探査は当然それまでのデータ―即ちアポロ11、12 が撮った写真を参考にされたが、これが殆んど参考になる代物ではなく、そのせいで適切な準備ができず（the Apollo 14 mission was conducted with photographs that weren’t very good, pre-flight photography taken by the previous mission, and the crews weren’t properly prepared.）、決して容易なミッションではなかったのはシルバー教授も認めている。
そうであれば、アポロ13 が予定通りフラ・マウロに着陸していても、ラヴェルとヘイズが EVA で（シェパードとミッチェルのように迷子などならずに）目標のコーン・クレーターの縁にたどり着いていたかどうかは微妙なところなのかもしれない―けれど、その姿勢が大違いだった。
シルバー教授は最初ジャック・シュミットからジム・ラヴェルとフレッド・ヘイズを紹介され、試しに（NASA の関知しない）一週間の野外レクチャーをやったところ、これが意外と受講生に好評で、本格的なアポロ15 の訓練に際してはラヴェル（とヘイズ）がスコットとアーウィンにシルバー教授がいいぞと熱心にプッシュしてくれたと語る。 （Apollo 15 was beginning to start its training program, and that was Dave Scott and Jim Irwin. And Fred and Jim Lovell urged them to try me out.）
そんな初っ端の経緯もあってか、シルバー教授はジム・ラヴェルという存在を重要視していて、アポロ計画における地質学的成果はラヴェルなくしては得られなかった旨の発言をされております。
