独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3154】

 

サム・イェーガーのライトスタッフを印象付ける典型的な図(ビジュアル化)は NF-104 で墜落しながらも黒こげの顔で依然とガムを噛んでいる姿であるが(その3040 参照)、ちょっとしたセリフに(はたと)思い当たることもあって―

 

謎の “half jackrabbit” 問題

 

サム・イェーガーがグレニス(バーバラ・ハーシィ)に小声で呟く “I’m half jackrabbit.” はスクリプトにないサム・シェパードのギャグみたいなセリフで、カウフマンは実際そのとおり―

 

Sam was half jackrabbit.

 

と明言している。

 

その 140~144 (2003/10/ 9~11)

 

さて、わたしら字幕ウォッチャーには、絶対に解らない含みをもったセリフというものが、当然ありますわな、そりゃ…

 

そこで、精々想像(妄想)を逞しくして申し上げるのでありますが、イェーガーが追っかけっこをする前にグレニスを挑発して「俺は速いぜ」と言うセリフ―

 

I'm half jack rabbit.

 

これって… 考えてみたら、そうとう深い意味あるんじゃ?

 

 

う~む…

 

 

(どうせまた、珍説・コジツケの類―にしても、けっこう面白そうでしょ?)

 

 

てなわけで、大好評の謎シリーズ、久しぶりの第7弾「謎のジャックラビット」をば―

 

I'm half jack rabbit.

 

まず、この half jack rabbit または half jackrabbit という表現、半分 ジャックラビット―つまり、半分は野ウサギだと言ってるんですね、イェーガーは。

 

俺は、そのくらい足が速いよ、と―半魚人ならぬ半兎人ですか。

 

ただ、この言い回しをする時、イェーガーは明らかにジャッカロープのことをこそ意味しているに違いない。(それはグレニスからフライボーイと呼ばれるイェーガーが、その実 カウボーイのメタファに他ならないことにも関係する)

 

西部には(古くからのカウボーイの言伝えによると)ジャッカロープ jackalope という、それこそ文字どおり半分ジャックラビット half jackrabbit (もう半分はアンテロープ half antelope)の何とも摩訶不思議な珍獣がいるらしいのでありますよ。

 

その画像を見ると、要するに角を生やした野ウサギなんですね、これが―って、単なる合成じゃん!(それともドクター・モローの島か、ここは?)

 

それに、生えてる角が枝分かれしてるとこを見ると、ここで言うアンテロープとは、いわゆるカモシカ(←牛の仲間。角は枝分かれしてない)ではなしに、北米に棲むプロングホーン pronghorn antelope (←エダカモシカ。これは枝角をもった鹿)のことなんでしょう、どうやら。

 

兎に角(←シャレ)、このプロングホーンもジャックラビット同様、おそろしく足が速いときてますから、ジャッカロープの速さときたひにゃ、そりゃもう…

 

従って(カウボーイである)イェーガーは、half jackrabbit という言い回しで、即ち jackalope みたいに速い、と言いたかったに決まってるのであります。

 

 

では(それが正しいとして)それならば、なぜイェーガーは単刀直入に例えば I'm a jackalope. ではなしに I'm half jack rabbit. と言ったのか?

 

カウボーイの間では、ジャッカロープは人間の真似をして喋るとさえ言伝えられてるようで、そこからも分かるように全くのフェイクなんですね、言うまでもなく、この話は。(ただし、ウィルス性の病気で角状のものが生えたウサギは実際にいて、それが話のもとになってはいるらしい)

 

ですから、イェーガーは自らを全くのフェイクであるジャッカロープに喩えるのは潔しとしなかった、と誰しも考えますわな、とりあえずは。

 

が、しか~し。

 

わたしに言わせると、イェーガーにとっては、足の速さの喩えとして、他のどれでもない、まさしくジャックラビット(兎に角 jackalope でなしに、角のない兎の jackrabbit)じゃないといけない重要なわけがあるのである。

 

その重要なわけとは何か?

 

 

ジャックラビット jack rabbit は、西部に棲む大型の野ウサギ。(jack は jackass からきてて、つまりロバのように耳が長いからとか)

 

野ウサギというとこが大事です―荒野を自由に跳び回ってるんですよ、おそろしい速さで。(ちなみに jackrabbit には「脱兎の如く」に当る意味もある)

 

イェーガーは自分のことを、その jack rabbit だと言ってるんですね、半分はジャックラビットだと。

 

さぁ、そこで思い出して下さい―凸凹リクルータ・コンビがパンチョの店にやってきた時、イェーガーは何と言ったか。

 

イェーガーは、宇宙飛行士をスカウトしようとする二人に、嫌味たらたら―

 

実験用のウサギ lab rabbit になるのはご免だ、と。

 

字幕では lab rabbit は「モルモット」になってるし、jack rabbit は意訳されてるので気付きようがないけれど、この lab rabbit が jack rabbit に呼応した表現であるのは明らかだと、わたしには思われるのですが、どうでしょう?

 

 

イェーガーは、例によって独特の表現で、凸凹リクルータ・コンビに↓こう言います―

 

スカウトするのは実験用のウサギだろ(Scouting for lab rabbits)

 

パイロットなんか必要じゃないってことさ(It means you don't need honest-to-God pilots)

 

くそカプセルに実験用のウサギを詰め込んで、とっくんとっくん(pitter-patter)してる心臓を調べるだけだからな、ケツに電線つなげて(a wire up the kazoo

 

I don't hold with it.  そんなことは、俺はご免だ

 

つまり、ここでイェーガーは、はっきりと自分は lab rabbit じゃない、パイロットだと言ってるのです―即ち、カプセルのなかで、じっとうずくまってるだけの lab rabbit ではなく、荒野(大空)を自由に跳び(飛び)回る jack rabbit なんだと。

 

従って、この対比を鮮明・的確に成立させるためには(いくらそうしたくても)自らを jackalope に喩えるわけにはいかなかった―

 

な~んてのが、わたしの独りよがり解釈なのであります。(が… ま、コジツケですね、我ながら面白いけど)