独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3026
 
その 700 (2005/ 8/ 7
 
Y Hey, Ridley.
 
R Yeah
 
Y You got any Beemans
 
R I might have me astick.
 
Y Loan me some. I’ll pay you back later.
 
R Fair enough.
 
Y Think I see a plane over here with my name on it.
 
R Now you’re talking.
 
 
NF-104 のシーンでの イェーガー Y リドリー R とのやりとり―このリドリーはイェーガーの単なるイメージ(幻影)だとする興味深い意見があります。
 
なるほど イェーガーは、いるはずのないリドリーが そこにいるつもりになって、フライト前の儀式をやっていると見れないこともない…
 
まあ、それは間違いにしても(←その理由は後述)、人それぞれの受け取り方ですから、そういった解釈も ありでしょう―少なくとも、わたしは嫌いではない。
 
 
その 701
 
とっくに リドリーは この世にいないから―というのを、イェーガーの単なるイメージだとする根拠として持ち出すならば、それは残念ながら間違いと言わざるをえません。
 
なぜなら、もう幾度となく書いてるように、何も このシーンのリドリーだけが架空の存在なのではなく、凸凹リクルータ・コンビがパンチョの店に来るシーン然り、ライフ誌(表紙)のキャプテン・ハムを見て嗤うシーン然り、ガス・グリソムは screw the pooch したと主張するシーン然り― X-1A 以後のシーンに(常にイェーガーと一緒に)登場するリドリーは、どれもこの世にはいないはずの存在です。(←さりながら、どのシーンでも単なるイメージなんかではない)
 
遥か上昇する NF-104 に向ってリドリーが敬礼すると、それに応えてイェーガーは機体を一回転させるでしょ―もしも、あのリドリーがイェーガーの単なるイメージであるなら、まさに地獄への手招きといった(ホラーじみた)趣にもなりましょうが、まさか本気でそうまで深読み(←完全な妄想と言うべきか)する向きがあるとは考えにくいですし。
 
 
その 702
 
しかしながら、あのシーンで Hey, Ridley. You got any Beemans と声をかける対象が イェーガーのイマジネーションだとする見方を、わたしは(前述したように)決して嫌いではない。
 
と言うか、むしろ瞬間的にはそういった雰囲気が確かに漂っていると認めたい気さえする―それほどまでに、イェーガーとリドリーのやりとり~ NF-104 のテイクオフのシークェンスにおける演出の霊妙な とでも形容すべきもの(←だからこそトリハダが立つ)には、純正ライトスタッフ・ファンなら誰しも飽きることなく見入らされてしまう。(←幻想的な「月の光」のファンダンスとオーバーラップさせていく構成も無関係ではなかろう)
 
 
その1396
 
が、それ以前に(そもそも)もし仮にリドリーが生きていてくれたなら、イェーガーの NF-104 は決して screw the pooch しなかった、とも確信する。
 
イェーガーは(余人はさておき)あのリドリーのアドバイスなら素直に聞く耳を持っていたはずだから。
 
実際、リドリーこそはイェーガーにとっての brain "the brains behind the whole X-1 test program.")と呼ぶべき存在であり―
 
I had a great deal of confidence in him and if he said something that to me was from the Bible.
 
とさえ(柄にもなく神妙に)語っているほど。
 
よって、「ライトスタッフ」クライマックス・シーンの正しい突っ込みどころ(ちぐはぐな点)は、せっかく死せるリドリーを活かせ(側に付かせ)ていながら、みすみすイェーガーに screw the pooch させてしまう節操なき(ハリウッド式の)演出であると、わたしは言いたい。
 
ま、そこにこそ(わたしとしたことが不覚にも)心底から zoom up し昂揚させられるわけですが。
 
 
参考 1
 
やはり リドリーを brain と認める B-29 drop pilot ボブ・カーデナスの証言―
 
Jackie was the brains of the outfit, who would pass it to Chuck. Jackie could talk to Chuck. These days you hear Chuck speak and he sounds articulate. Back then, fresh from the hills of West Virginia, I couldn't understand him. He and Jackie, who was from Oklahoma,could understand one another.
 
当時、リドリーとイェーガーは(お国言葉が通じる)ツーカーの間柄、カーデナスは訛りのきついイェーガー語(Yeagerish)を理解できなかった由。
 
そのカーデナスの簡潔にして的確なイェーガー評―
 
when Chuck got into that airplane he was no longer a human being
 
he became part of that airplane, or the airplane became part of him.
 
 
参考 2
 
イェーガーの訛りについて―
 
戦争の混沌のさなかにあってもなお、イエーガーは他の多くのパイロットをいくらか面食らわせた。彼は背丈はひくいが屈強な筋肉質の男であり、黒い髪は自然にカールしていた。そのふてぶてしい顔つきは人にむかっていつも「おい、やっこさん、おれの顔をじろじろ見ねえことだな。さもねえと、おめえさんの鼻にもう四つばかり穴があくことになるぜ」とでも言っているようにみえた。しかし、人を面食らわせるのはそういったことではなく、イエーガーの話し振りだった。彼はアパラチア山脈の山奥で保存されてきたいくつかの古い形の英語の言いまわし、統語法、動詞の活用を使ってしゃべるらしかった。彼の故郷では「反対だ(ディスアプルーヴ)」とは絶対にいわずに「承知できねえ(ドント・ホールド・ウィズ)」という人間たちがいた。「助ける(ヘルプ)」という動詞の場合、現在形は普通に「ヘルプ」を使うが、過去形となると「ホルプト」一点張りだった。「おらー、ちっとも承知できねかったんだがよ、ともかくそいつを手伝った(ホルプト)ってわけよ」といった具合に。 [中公文庫]
 
 
Even in the tumult of the war Yeager was somewhat puzzling to a lot of other pilots. He was a short, wiry, but muscular little guy with dark curly hair and a tough-looking face that seemed (to strangers) to be saying: "You best not be lookin' me in the eye, you peckerwood, or I'll put four more holes in your nose." But that wasn't what was puzzling. What was puzzling was the way Yeager talked. He seemed to talk with some older forms of English elocution, syntax, and conjugation that had been preserved up hollow in the Appalachians. There were people up there who never said they disapproved of anything, they said: "I don't hold with it." In the present tense they were willing to help out, like anyone else;but in the past tense they only holped. "H'it weren't nothin' I hold with,but I holped him out with it, anyways."The Right Stuff

 

 
 
参考 3
 
リドリーとイェーガーがツーカーの間柄だったという(それはまた)別の話、その55
 
リドリー役の レボン・ヘルム Levon Helm
 
ご存じかも知れませんが、彼こそ誰あろう、知る人ぞ知る、あの伝説のロック・バンド、ザ・バンド The Band のドラマーだった人ですね。
 
わたしはボブ・ディランには全く興味がなくて、従ってザ・バンドも特に意識してなかったせいか、リドリーが 10インチくらいに切ったほうきの柄をクルクル回すのを見ても別段何も思わなかったんですが、考えてみりゃ、あれはいわば楽屋オチだったんですな。(えらく器用に回してましたもんね、ドラムのスティックみたいに)
 
で、ここからが今日のひとくちメモゥ〜なんですけど―
 
このリドリー(レボン・ヘルム)は、あのイェーガー(サム・シェパード)と「ライトスタッフ」よりもはるか以前にツーカーの仲だったって、知ってました?
 
70年代、ザ・バンドボブ・ディランのバックでツアーしてまして、このリドリーはドラムを叩いてました。
 
それとは別に、ボブ・ディランのかの有名な(らしい)75年のライブツアー  Rolling Thunder Review で、やはりドラムを叩いたのが誰あろう、あのイェーガー、そう、何とサム・シェパードなのであります。
 
そんな関係で、当時このリドリーとあのイェーガーは同じ旅仲間だったんだそうですよ。
 
あ、案外それで「ライトスタッフ」にオファーされたのかもしれません―最初からふたりはツーカーのコンビということで。(ツアーでツーカーっつーか、その旅の途中、レボン・ヘルムがサム・シェパードにガムをたかられたかどうかは、定かではない)
 
※ レボン・ヘルムの本物のイェーガー評―
 
“Ah, General Yeager!  Boy, what an honor it was to be around him and to listen to his stories.”