【誰にともなしに、独り言レス―その3025】
re:あれは幽霊だった―てゆうか
Then, flying as a passenger in a C-47 over Japan on March 12, 1957, Col. Ridley died at the age of 42 when the transport crashed into a snow-covered mountainside northwest of Tokyo.(Edwards Home Page)
確か富士の裾野かどっかにリドリーのお墓(?)があるとかないとか、むか~し聞いたことがあるようなないような、とにかく本物の Jack Ridley は、あの6年も前に死んでますので、原作はどうなってるのかは知りませんが、映画「ライトスタッフ」のリドリーは明らかに架空の人物なんですよ。
と言うのも、冒頭のナレーションはリドリーの声ですから、ここでは狂言回しの役回りなんですね、この幽霊と言うより架空のリドリーは。
狂言回しだからこそ、あの NF‐104 のシーンでもイェーガーの例のあのセリフに応えなけりゃいけないわけで、まだまだ死ねない役回りだったんです。
こういう芝居上の設定というか約束事というか、そんなとこには目くじらは立てないんですよ、わたしは―あくまで映画ですから。
その 16―
リドリー・ネタのつづき、というか(しつこく)再確認です。
「ライトスタッフ」のリドリーは NF-104 のシーン(1963年)どころか、ガス・グリソムがリバティベル7を沈めた(1961年)のを TV で見て馬鹿にするし、それ以前にライフ誌のキャプテン・ハム(同)を見て大笑いしちゃってます、イェーガーと一緒に。
このリドリーは(その頃とっくに死んでいた)本物の Jack Ridley をモデルにした、あくまでも架空の存在であって、映画の狂言回し役としてナレーションも担当しておりますね―まるで当時を回顧してるかのように。
ですから、冒頭いきなり―
There was a damon that lived in the air.
と謎めいたことを言って、X-1 の超音速実験の話から始めます―そうしてから、イェーガーのご登場とあいなるわけです。
その最後の最後のフレーズは―
For a brief moment,Gordo Cooper became the greatest pilot anyone had ever seen.
好きだな~、ここ。
このラストシーンからエンドタイトルへの for a brief moment―何度見てもトリハダです。
その 523 ―
もう何度も書いてるように、今から 51年前の 1953年12月12日、チャック・イェーガー(当時少佐)は X-1A でマッハ 2.44 を記録します。
このフライト計画を イェーガーと相棒のジャック・リドリー(同少佐)は―
"Operation NACA Weep" (「NACA 泣かせ」作戦?)
と称していたそうです。
イェーガーの空軍チームは 見事 NACA を出し抜き(その名のとおり)とほほと泣かしてやったのでした。
参考
11月20日に NACA のスコット・クロスフィールドが海軍の D558-Ⅱ で初めてマッハ 2 を達成したばかりだったのは「ライトスタッフ」にも巧みに描かれてますが、イェーガーは(ライバルと目された)そのクロスフィールドを相手にしてたと言うより、空軍の看板をしょって敵(即ち NACA 及び海軍)の鼻を明かしてやったというわけです―ライト兄弟の 50 周年記念である 12月17日の前に。 (←そんな晴れの舞台で NACA や海軍に大きな顔をされたくないでしょうから)
余談
その 524 (2004/12/13)
従って、イェーガーが B-50 に抱かれた X-1A に乗り込む際に(例によって)リドリーからガムをたかることなど(実際には)できない相談ですね。
イェーガーは、全幅の信頼を寄せていた相棒であるリドリーのことを 端的に brain と評してます―
“the brains behind the whole X-1 test program” と。
つまり、Air Force X-1 project engineer のリドリーがいなけりゃ、とうてい超音速実験の成功はありえなかったと、当のイェーガーが言うくらいの欠くべからざる存在だったんです。
単に ほうきの柄をちょん切ってやっただけだと思ったら大間違いなんですよ―あれはあれで欠くべからざるエピソードではあるけども。
その 525 ―
X-1(XS-1)におけるリドリーのほうきの柄の話は、イェーガーが馬にけられて(←ウソ)右の肋を折ったせいで、うまくコックピットのハッチを閉められなかったのを、リドリーが機転を利かせて救ったというものでした。
イェーガーは、実は 密かに知り合いの医者(たって、獣医らしいけど)に肋をテーピングしてもらって、その体で事前に基地に赴いてます。
X-1 の操縦そのものには支障はないものの、何とか左手だけでもハッチを閉められる算段をしなければならなかった―その時にリドリーがてこにする棒を(ほうきの柄から10インチばかり)調達してくれたんですね、実際は。(つまり、あの棒は当日ではなく前日にはスタンバイされていた)
そう言えば、「ライトスタッフ」ではリドリーがカウントダウンして B-29 から X-1 をドロップしてましたが、実際は B-29 drop pilot のボブ・カーデナス Bob Cardenas がその担当で、あのカウントダウンも(いつもの癖らしく)10-9…5-3-2-1 と 4 を省いてたそうです。(一説では 3 を省いたとも―どっちでもいいけど)
そのカーデナスが打ち明けるには、イェーガー(とグレニスとリドリーと獣医)が秘密にしてたはずの肋骨折事件のタレコミ電話(もちろん匿名)がかかってきていて、カーデナスは分かってたそうですよ、ほうきの柄に隠された事情を。
いつリドリーがほうきの柄(broom handle)を調達してくれたのかはトム・ウルフの原文では必ずしも明確ではなく―
Not for nothing is Ridley the engineer on this project. He has an inspiration. He tells a janitor named Sam to cut him about nine inches off a broom handle. When nobody's looking, he slips the broomstick into the cockpit of the X-1 and gives Yeager a little advice and counsel.So with that added bit of supersonic flight gear Yeager went aloft.
と曖昧に(漠然とした時制で)説明されている。
原作(や史実)がどうであろうと、映画「ライトスタッフ」は時間を圧縮して巧く(あざとく)脚色してあるのだから、当然その場でリドリーが機転を利かせたように描かれる―ゆえに、名作なのであると申せましょう。