独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3327】

 

その1091~1093

 

何事も先走らないはずの NASA と言えば、マッティングリーはスワイガートに交代させられることを何とカーラジオのニュースで初めて知ったという(まるで「人類、月に立つ」のジャック・シュミットみたいなと言うか、ひょっとしたらネタもとかと推測される)話があって(その2987参照)、「アポロ 13」ではラヴェル(とヘイズ)が直接伝えるが、そのシーンでトム・ハンクスラヴェル)は―

 

「俺の決断だ」 (This was my call.)

 

と言って、ぐずるマッティングリーに決定が覆せないことを自身(船長)の責任において示す。

 

医者(flight surgeon)がラヴェルを説得する時―

 

「もしケンが感染していたら、ちょうど君らの着陸船が司令船に戻る頃と発病の時期が重なるんだよ」 (Ken Mattingly will be getting seriously ill precisely when you and Haise will be ascending from the lunar surface to rendezvous with him.)

 

と言うのも、実際はラヴェルは「月面での活動に何ら支障はない」「病気になっても無重力下ほど快適な環境はない」などと反論して、そのままマッティングリーで続行するよう要求したものの、あえなく却下されたのであり、決してスワイガート個人(の資質や訓練不足)をとやかく問題にして交代に反対したのではなく、あくまでスワイガートは(ラヴェルNASA 長官に応えたように)CMP として申し分ないと認められていた。 ("no problem at all with Jack" ―ヘイズ)

 

 

ラヴェルは仮にマッティングリーが風疹に感染してるにしても発病するのは地球への帰路だろうし騒ぐほどのことじゃなく、CMP のマッティングリーがダウンしても(アポロ 8 で CMP を経験してるんだから)自分たちで司令船を地球に戻せる("Measles aren't that bad, and if Ken came down with them, it would be on the way home, which is a quiet part of the mission. From my experience as command module pilot on Apollo 8, I know Fred and I could bring the spacecraft home alone if we had to.")と訴える。

 

だが NASA 長官には聞き入れられず、マッティングリーをスワイガートに代えるか、さもなくば 3 人ともアポロ13 を諦めるかの選択を迫られ、やむなく マッティングリーを外す決断をした―この CMP の交代は(ヘイズが言うように)むしろ想定内のオプションで、ラヴェル(CDR)と ヘイズ(LMP)の月着陸クルーなら二人セットで処理されるところ。

 

つまり、ラヴェルとヘイズは(マッティングリーと違って)単独では交代できないシステムで、代わるのなら二人一緒に(それぞれのバックアップの)ジョン・ヤングとチャーリー・デュークに代わらねばならないが、このデュークこそ(マッティングリーに風疹をうつしたかもしれない)そもそもの元凶なのであるから、アポロ13 は現実にはバックアップ組とも交代できなかったんじゃなかろうか―ちょっとばかり引っかかる点ではあります。 (「アポロ 13」でデュークが風疹にかかったと知らされたラヴェルは "So we need a new back-up." と応えている)

 

 

ちょっと引っかかるというのは、NASA 長官の選択肢に従えば、もしもラヴェルがマッティングリーとスワイガートの交代を拒否したら、アポロ13ラヴェル、ヘイズ、マッティングリー組では飛べない。

 

さりとて、バックアップのヤング、デューク、スワイガート組も(LMP のデュークだけを単独では代えられないはずだし、無理に代えようたって風疹にかかったデュークの更なるバックアップなんていないので)アポロ13 は飛べない。

 

となると、次のアポロ14 のシェパード、ミッチェル、ルーサ組を繰り上げるか―これも、もともと(それこそシェパードの訓練不足のため)アポロ13 からアポロ14 に繰り下げられた経緯からして(それもリフトオフの直前になんて)考えられない。

 

だとするなら、ラヴェルがマッティングリーを外してスワイガートを受け入れない限り、誰(どの組)もアポロ13 を飛べない―即ち、とどのつまりはアポロ13 のミッションそのものを(リフトオフの 2 日前に)キャンセルせざるをえないという理屈になろうが、むろん NASA は(いくら NASA でも)そこまで馬鹿ではない。 (←結果的には途中でキャンセルする羽目になったけど)

 

要するに、NASA 長官に従えば(ミッションそのもののキャンセルが無理筋なら)やはりラヴェルとヘイズが CMP をスワイガートに代えてアポロ13 を飛ぶ以外に選択の余地はなく、ラヴェル組がアポロ13 を見送る選択肢など非現実的な口先だけのオプションだったことになろう。 (よもや NASA 長官とてアポロ計画を潰す肚じゃあるまいから)