独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3187】

 

その 724~727

 

その107 でウェッブがグレンに言う脅し文句―

 

I'm thinking of changing the order of flight assignments!

 

この字幕の 「搭乗する飛行士を替えるぞ」 (NHK)  「飛行の順番を変更するぞ」 (レンタル) について述べてます。

 

これは原作訳の 「宇宙飛行任務につく順序を変更する」 に違いなく、当たり前のことながら、ほぼ(わたしの意に適うほうの)レンタル字幕どおり。

 

ですが、それに続けて 「つまりグレンの代りに他の宇宙飛行士を当てる」(putting another astronaut in Glenn's place)ともあり、ひょっとしたら NHK の意訳ふうの(説明的な)字幕は、これを参考にしてるのかもしれない。 (←でも、やはり order は不可欠のタームで、これは是非とも訳すべきだと思う) 

 

あのシーンのもとネタ―

 

彼(ジョンソン)は側近たちを罵っていた。 ホモ! 腰抜け! 女の腐ったやつ! NASA 長官のウェッブにはほとんど信じられなかった。 宇宙飛行士とその妻が副大統領に対してドアを閉ざすとは。 ウェッブはグレンと話をした。 グレンは一インチも引こうとしなかった。 彼はウェッブに出過ぎた真似をしないでくれと言った。

出過ぎた真似だと! 一体これは何ということだ? ウェッブは一瞬狐につままれたような気がした。 NASA で一番偉い、長官たるおれのやることが、出過ぎていると言われる理由はない。 ウェッブは幹部数名を呼んで、事態を説明した。 宇宙飛行任務につく順序を変更する、つまりグレンの代りに他の宇宙飛行士を当てることを考慮しなければならない、宇宙飛行には、この計画のもつ広い利害損得というものをもっとよく理解できる人間が必要なのだ。 幹部たちは、長官を気が触れたのではないかというような顔をして見た。 そんなことをしたら、ただですむわけはない! だいたい宇宙飛行士たちが黙っていないだろう! …彼らはおたがいに違いはあるけれど、こういう問題には、軍隊のように一致団結して立ち上がるだろう… (第12章 「涙」)[中公文庫]

 

He was talking about his aides. Pansies! Cows! Gladiolas! Webb could scarcely believe what was going on. The astronaut and his wife had shut the door in the Vice-President's face. Webb had a few words with Glenn. Glenn wouldn't back down an inch. He indicated that Webb was way out of line.

Way out of line! What the hell was this? Webb couldn't figure out what was happening. How could the number-one man, himself, the administrator of NASA, be way out of line? Webb called in some of his top deputies and described the situation. He said he was considering changing the order of the flight assignments—i.e., putting another astronaut in Glenn's place. This flight required a man who could comprehend the broader interests of the program better. His deputies looked at him as if he were crazy. He'd never get away with it! The astronauts wouldn't stand for it!… They had their differences, but on something like this the seven would stand together like an army…(The Right Stuff)

 

この一節から分かるように、ホットドッグを除く他の 5 人が(「一致団結して」)ウェッブに詰め寄る(「黙っていない」)なんてのは(原作の言い回しを信じる限り)そうなるのを惧れて回避された、実際には起こらなかった作り話で、とどめにシェパードが step aside とウェッブを(邪魔だとばかりに)脇にどかせるのは、グレンがウェッブに(また、シェパードがグレンに)言った You're way out of line. を更に(でしゃばるんじゃない、引っ込んでろと)念押しした脚色だという見方もできるだろう。

 

 

あのシーンの脚色(原作との相違点)を整理して指摘しておくと―

 

ジョンソンのスタッフは、ジョンソンに指示されて(アニーを説得するよう) NASA に手を回したのではない。

 

ジョンソンのスタッフからアニーの説得を丸投げされた格好の NASA は、上層部がグレンと交渉した―そのグレンがアニーと電話で話をする場にウェッブが立ち会っていたかどうかは不明。

 

ウェッブはグレンに面と向って脅し(the order of flight assignments の変更)をかけようとはしていない―よって、宇宙飛行士たちに詰め寄られたりもしてない。

 

従って、あのジョン・P・ライアンを 100 % ジェームズ・ウェッブがモデルだとするのは、ウェッブがグレンに You're way out of line. と言われる、これだけはウェッブその人のエピソードに間違いないシーンだからであります。