独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3077
 
その536       2004/12/27
 
参考までに、ウェルチ XP-86 F-86 セイバー)が 1947年の 10 1日と 14日にダイブでの超音速フライトを成功させていたと主張される、その説の論拠を簡単にまとめると―
 
 ウェルチの(何ら手を加えてない同じ)XP-86 は、わずか一ヵ月後(1113日)にマッハ 1.02 1.04 を計測(つまり、ちゃんと計器によって測定)され、その超音速フライト(ダイブ)能力が証明されていた。
 
 ウェルチは(当時は誰も知らなかった―それゆえ、作り話などできようはずもない)音速を超える際に速度計の針が異常な動きをする Mach jump 現象を(その意味も解らぬまま)報告しており、今では Mach jump は超音速フライトの確たる証拠と認められている。
 
※ 参考
 
Aces Wild: The Race For Mach 1  by  Al Blackburn
 
It wasn’t long after the first flight of the XP-86 on October 1, 1947, that Welch dropped into Horkey’s [an aerodynamicist at North American Aviation] office at the Inglewood plant. He wanted to talk about his recent flight and some “funny” readings in the airspeed indicator. He had made a straight-out climb to more than 35,000 feet. Then, turning back toward Muroc Dry Lake, he began a full-power, fairly steep descent.
 
I started at about 290 knots,” Welch was explaining to Horkey. “In no time I’m at 350. I’m still going down, and I’m still accelerating but the airspeed indicator seems stuck like there’s some kind of obstruction in the pitot tube. I push over a little steeper and by this time I’m through 30,000 feet. All of a sudden, the airspeed indicator flips to 410 knots. The aircraft feels fine, no funny noises, no vibration. Wanted to roll off to the left, but no big deal. Still, I leveled out at about 25,000 and came back on the power. The airspeed flicked back to 390. What do you think ? ”
 
. . . You may be running into some Mach effects. . . .”
 
 
 10 1日、ウェルチは事前に知人(たってパンチョの店の hostess  Millie Palmer)を証人(記録係)として頼んでいて、XP-86 がダイブした同時刻にパンチョの店に轟くと予想したソニック・ブーム(to listen out for a shock wave that would roll through the club.)を具に体験させている(“She told him that the sound was exactly how he described and it shook the walls,” Chasing the Demon by Dan Hampton)―むろん、そのソニック・ブームを聞いた者は他にも数多。
 
 1014日、ふたつの別々のソニック・ブームがミューロクに轟いた―ひとつはイェーガーの X-1 によるものに違いないが、その 15分前のソニック・ブームは ウェルチ XP-86 が起こしたものとしか考えられない。(むろん、ふたつのソニック・ブームを聞いた証人も数多)
 
といったところ。 (←けっこう、それなりの根拠があるでしょ、こうやって見ると)
 

 
わたしが この話をどう思ってるかは(前述のとおり)進化論における先陣争いに喩えるならイェーガーがダーウィンであり、ウェルチがウォーレスだという印象―ごく個人的にして漠然としたイメージにすぎないけど。
 
もとより、真相は判るはずもないにしても、ウェルチ XP-86 Mach jump していたと言われるのが本当(かつ、その現象が超音速フライトの決定的証拠と見なしてよい)なら、その一点だけで結論は出ている―つまり、確かにイェーガーよりもウェルチのほうが先だった。(と、わたしは考えます)
 
もしも、そのことが(たとえダイブによる参考記録的なものとしてでも)認められていたなら、後のウェルチ(とイェーガー)は全く違った運命を辿っていたんじゃないでしょうか?
 
しかしながら、1954 ウェルチ F-100A の超音速のデモ飛行の際に screw the pooch (空中分解・射出されるもパラシュートがズタズタになり墜落、レスキュー後ヘリ搬送中に死亡)してしまう。
 
これは結果的に、あくまでも結果的にテストパイロットとしてのライトスタッフのなさを露呈してしまったという言い方もできるのかもしれない―所詮、ウェルチは(パールハーバーの英雄ではあったが)ライトスタッフではなかった、と。
 
この意味において、ライトスタッフという言葉には冷徹な側面がある―と感じずにはいられない今日この頃…