独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3069
 
その833  (2006/ 5/16
 
原作「ザ・ライト・スタッフ」と映画「ライトスタッフ」の(ある意味で根本的にして決定的な)違いは X-15 に集約されるとも言えようか―映画ではクロスフィールドが X-15 の模型をいじってたりするカットで(おためごかしのシャレみたいに)仄めかしているだけで、原作のテーマを語る上で不可欠と思われる X-15 のエピソードは表立っては何も描かれていない。
 
より原作(のテーマ)に忠実な映画にするなら、単にイェーガーのライバル(そして仲間)としてのクロスフィールドにとどまらず、X-15 の推進者としてのクロスフィールドがもっと前面に出てくるはず。(名前しか出なかったウォーカーも登場せずにはいまい)
 
そう考えると、むしろイェーガーは脇役でクロスフィールド(と X-15 パイロット)が主人公の映画「ライトスタッフ」ができて何の不思議もなかろう―もっとも、その場合ライトスタッフ」は(失礼な先入観ながら)凡作でしかありえず、当然この《ライトスタッフは名作です》トピも立ち上げられるべくもなし…(そうなると、このわたしは居候先が見つからず路頭に迷っていたことであろう)
 
やはり、イェーガーが主人公であればこその 名作 ライトスタッフ であるのは論を俟たない―今更ですが。
 
 
と、まぁ… あの X-15 の模型が妙に気になっていたわけですけども、この度やはりカウフマンは初めからスクリプトには X-15 についてのシーンを書いていて、それを最終的には使わなかった―その名残りが X-15 の模型(a small model plane)だったと判明しました。
 
 
イェーガーの X-1A フライト(マッハ 2.44)の後―
 
CROSSFIELD
Yeager, that was the fastest and wildest ride in airplane history. (A sudden sense of camaraderie between rivals)  My hat’s off to you.
 
YEAGER
Thank ye, Scotty. Much oblige.
 
CROSSFIELD
I want to show you something.
 
He puts a model plane on the table next to Yeager’s steak.
 
YEAGER
 
That’s it ?
 
Crossfield nods. Some of the prime pilots move in (Walker, etc.)
 
CROSSFIELD
This is the X-15. A pilot’ll take it up into space where you are out of the earth’s atmosphere… They say something like this’ll orbit the earth three or more times, and land right out there on the dry lake bed.
 
 
ここではクロスフィールドがイェーガーに X-15 の模型を示し(ウォーカーらと)その説明してやってる。
 
ところが、改訂スクリプトでは連絡官が現れて―
 
The Liason Man appears with the Air Force Officer and puts something on the table in front of YeagerSOMETHING UNDER A BLACK CLOTH.
 
LIASON MAN
I want to show you boys something.
 
And with a flourish, he pulls off the cloth and reveals a small model plane the X-15.
 
X-15 の模型を(大仰に)見せ、その説明をするのである。
 
このクロスフィールドのセリフの連絡官への差し替えは、クロスフィールドと連絡官が同じ立ち位置であればこそ可能であって、即ち 連絡官はクロスフィールドと同じ「NACA の人」である証左と主張しうる。
 
そもそも X-15 を手の内から出すなんて芸当ができるのは「NACA の人」に決まってるのだから。(“it [X-15] was very much a NACA idea and design from start to finish.”―Roger Bilstein
 
 
ただ、appears with the Air Force Officer とあるようにスクリプトは執拗にして頑迷に連絡官を空軍(属)にしたがっていて、あまつさえマーキュリー7 お披露目シーンでは―
 
IN THE AUDIENCE, THE TWO RECRUITERS.  THEY NOD AT – THE AIR FORCE LIASON MAN AND TWO AIR FORCE HIGH RANKERS.
 
と空軍の連絡官(the Air Force Liason Man)と粗忽にして迂闊にも限定してしまう始末の悪さで、結局 カウフマンは(自分で書いたくせに)「これ、使えないから」と(例によって)自由奔放に大幅変更して撮影したとか、しないとか―と、妄想するのも楽しからずや。
 
ま、謎の liaison man がジョーカー的という意味はそういうことでありますよ。