【誰にともなしに、独り言レス―その3371】
そのコクランが WASP~マーキュリー13 を立ち上げるんですから、そんな歴史的背景(全体像)を知ってるとレディース・パイロットとしてのトゥルーディがジェリー・コッブと絡んだり、Powder Puff Derby を飛んだりするネタ(エピソード)の意味合いは(より)理解し易いかも。
関連レス―その3161 再掲(抜粋)
コクランは、第 2 次大戦中に Women Air Force Service Pilots (WASP) を立ち上げた一人です。
WASP は、名称に Air Force (当時はまだ陸軍航空隊)とは付いてても、正式な軍の部隊ではなく、あくまで民間の支援組織という位置付け。
主として軍用機とかの空輸(フェリー)が彼女たちの任務で、要するに実戦以外の仕事を引き受けて(←某自衛隊みたいに)、なるべく(不足すると予想されたパイロットの)男どもには実際の戦闘任務に専念してもらいましょうという、けっこうシビアな狙いですね。
コクランが鍛え上げた WASP のレディースは(想像に難くないけど)そりゃもうタフでして、ありとあらゆる軍用機(小型練習機から B-29 まで)を(国内限定ながら)あちこち飛び回ってフェリーしたんですよ。
仕事そのものも(想像以上に)タフで、例えば―男どもが(軟弱にも)びびって敬遠してた、いわゆる Widowmaker と綽名されるヤバいやつ(代表格は B-26)なんかでもヘッチャラで操縦してたらしい。(←確かに、レディースに widow-maker なんてシャラクサイわな)
考えてみたら、この WASP というのが、状況的に実によく似てるんですねぇ… マーキュリー13 に。
ごく大雑把に言うと、WASP は(ユマ・サーマン似の)美人パイロット、ナンシー・ラブ Nancy Love 一派と、そこに危うく出し抜かれそうになったジャッキー・コクラン一派とが(すったもんだして)統合されてできた(1000人を超える)レディースの組織で、コクランの強い militarization の要求にも拘らず、ついに正式な軍の部隊とは認められないまま、つまり軍人としての恩恵を何ひとつ受けることなく、散々こき使われた(←総計 12,650機の輸送、飛行距離 6000万マイル以上)挙句に、発足した翌年に早くも解散させられる。 (彼女たちが、退役軍人として認められるまでには、その後 40 年も待たねばならない)
結局、ヨーロッパ戦線が終結して男どもが引き揚げてくると、レディースはもう必要じゃなくなって(と言うより、あぶれた男どもからすれば邪魔者でしかなくなって)、軍の都合、男の都合で、あっさり都合のいい女(WASP)はお払い箱になった―
WASP は、表立ったフェリー以外にも実は裏の(けっこう危ない)仕事もあって、そのせいかどうかは定かではないが、最終的に 38 名のレディースが民間人として(もちろん戦闘中でなく、非戦闘任務中の事故で)お国のために(何の見返りもなく)命を捧げています。
コクランがイェーガーに初めて会ったときに、大胆にも―
If I were a man, I would've been a war ace like you.
と言ってのけたのは、むろん自分のパイロットとしての腕に(そんじょそこらの男には負けない)絶対の自信があったからだろうけど、その数年前に WASP を(militarization できないまま)潰された悔しさも(じわ~っと)滲んでいよう。
これを >歴史の必然 と大げさな表現をしたのも、WASP(の挫折)があってこそのマーキュリー13 の立ち上げなんだろうなぁ、と思われるからなんですよ、わたしには。 (そして、その歴史は繰り返される)
コクランが、そのマーキュリー13 を選考するにあたって(自ら資金提供して)ラブレース・クリニックでのフィジカルテストを受けさせたレディースは、Ninety-Nines (99s) からリストアップされたと言います。
この 99s というのは、あのアメリア・エアハートが創設した女性パイロット団体で(←当初の登録メンバーが 99 人だったからとか)、コクランも(WASP を立ち上げる頃)その代表だったことがあった。
レディースの先駆者 Lady Lindy (←リンドバーグの Lucky Lindy をシャレて)こと、アメリア・エアハートとも、コクランは浅からぬ因縁があったようで、パームスプリングスにあるコクラン-オドラム牧場(現 Indian Palms CC)の多くの著名な常連ゲスト(含む、後年のイェーガー夫妻)のうち、エアハートだけには(ゲストハウスではなく)コクランの寝室を使わせてたらしい。 (つまり、コクランにとってはゲストじゃなく身内みたいなもので、彼女のためにランチハウスを建てる予定だったとも)
エアハートが運命の世界一周飛行に発つ前も、ここに滞在して準備してたりしたそうです―それが最後のフライトになるとも知らずに。