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独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3284】

 

その1450~1466 (2014/ 1/11)

 

ところで レッドバロンと言えば、ウィキペディアの「マンフレート・フォン・リヒトホーフェン」に―

 

低空に逃げるメイ機を追いかけるうちに前線を越えて敵側領域に侵入してしまい、オーストラリア第14野砲旅団第53砲兵中隊のロバート・ブーイー射手による軽機銃の弾を胸と腹に受けて~不時着した。

 

と事もなげに(あっさり)断定してあり、いささか驚かされた。

 

Wikipedia(English) の Manfred von Richthofen では―

 

Other sources have suggested that Gunner Robert Buie (also of the 53rd Battery) may have fired the fatal shot. There is little support for this theory.

 

と Buie 説は殆ど支持されてないと否定的なのだから。

 

本籍地(?)の Deutsch 版も―

 

Eine andere Untersuchung kam zu dem Ergebnis, dass Buie (und Evans) aufgrund der Einschusswunde von rechts Richthofen nicht abgeschossen haben konnten.

 

と、むしろ Buie(の弾が命中した)説はありえないと却下(結論付け)している。

 

いったい誰がレッドバロンを死に至らしめたのか?

 

横文字ではピンとこないとお嘆き(にして、ウンザリ気味)の諸兄のために、一昔も前に連載した集中講義を再掲いたしましょう―もちろん、日本語で。

 

 

その 177~180 (2003/11/11~13)

 

レッドバロン」(1971)の続編と言や(そんなもんはないんですけど)「華麗なるヒコーキ野郎」(1975)が、まさにそんな匂いですか。

 

主人公の第一次大戦後のバーンストーマー、ウォルド・ペッパー(ロバート・レッドフォード)と壮絶な空の真剣勝負を繰りひろげるドイツの伝説のエース、エルンスト・ケスラーは明らかにレッドバロンのイメージ―フォッカー三葉機みたいだったし。

 

ただ、真っ赤じゃなくチェッカーフラッグみたいなデザインで、当のレッドバロンが戦死してるのは周知ですから、もちろん別人に決まってるが、どう見たってモデルはレッドバロンに違いありますまい。

 

わたしは見てないけど、「レッドバロン」ではリヒトホーフェンの最期は(Von Richthofen and Brown という原題からも判るように)やはりロイ・ブラウンのソッピース・キャメルに蜂の巣にされて派手に撃墜されちゃうようで、そりゃまあ、そのほうが劇的だから当然そうしたくなりますわな、映画じゃ。

 

その辺りのレッドバロンの最期の真相と言うか、映画ではなしに実際はどうだったのかを、ビールのつまみにでもして書いてみましょう、ぼちぼちと。(こんな調子で、その 192 まで続く予定)

 

 

時は、after the turn of the century ~♪ もちろん第一次大戦のさなか、1918年 4月21日のこと―

 

空中戦が始まったのは、ロイ・ブラウンの後の報告によると 10:35 a.m. (地上のオーストラリア兵によれば about 11 a.m. )。

 

ブラウン大尉は、目にも鮮やかな真紅のフォッカーDr.1 が、部下のメイ中尉のキャメルを駆り立てるのに気付くや、その後を追尾。

 

Dr. は(doctor じゃなくて)ドイツ語の Dreidecker ドライデカー(英語では triplane トライプレーン)―つまり、三葉機のこと。

 

フォッカーの三葉機、しかも真っ赤とくれば「おお、レッドバロンだ」と即、判りそうなもんですが、これが案外とそうでもなかったらしい。

 

と言うのも、たまたまレッドバロンの最期がこれだったんで、後々彼の決定的な代名詞みたいになっただけで、当然 あれこれ他の機にも乗ってたわけだから。

 

真紅のフォッカーDr.1 を見ただけで、即「お、レッドバロンだ ラッキー!」(または「ひえ~レッドバロンだ アンラッキー!」)とは誰も思わなかったと言うか、そんな安直なイメージではなかったようやね、どうやら。

 

ま、相手がレッドバロンであると判っていようが、いまいが―とにかく、ブラウン大尉は親友でもあったメイ中尉を救援すべく、真紅のフォッカーDr.1 めがけて急降下していく。(急降下 dive というくらいだから、当然上から下へですよ、念のため ←ここ、大事です)

 

 

ところで、撃墜されたと聞くと単に撃ち落とされたという以上に(英語の crash からも受ける)どこか破滅(壊滅)的なイメージがあるでしょ―何か、ぐしゃぐしゃになってしまうみたいな。

 

レッドバロンは確かに(誰かによって)撃墜されたんですけど、決して ぐしゃぐしゃにはなってないんですよ、これが不思議なことに。

 

実は、真紅のフォッカーDr.1 は、きれいに不時着したんです―破損することなく。 (ただ、切ないことには、直後に souvenir hunters によって、ばらばらにされた)

 

ブラウン大尉が、見事レッドバロンを撃墜した―でも、レッドバロンは不時着していた…

 

ん~何だか、もうこれだけで首を傾げたくなりましょ?

 

まるでスヌーピーの「帰ってきた撃墜王」の世界―

 

いったい、どういうことなのか?

 

 

しかしながら(スヌーピーの空想とは違って)実際は真紅のフォッカーDr.1 が不時着した時、レッドバロンことリヒトホーフェンは既に絶命しておりました。

 

まずは、その死因を確認しておかないといけません。

 

遺体は(完璧じゃないにしても)ちゃんと検死されてる(解剖はされてない) ので、はっきりしてるんです、レッドバロンが死んだ原因―

 

それは一発の銃弾である、と。

 

検死の結果(きれいに不時着してるから遺体の損傷はない)、レッドバロンを死に至らしめたであろう体表面の傷は唯一、と言うか正確には二ヶ所、この一発の銃弾によるものと判明―その銃弾は、右の背中(9 番目の肋骨辺りの脇腹)から入り、左の胸(乳首のわずか外寄り、腋の下の高さ)から出てました。

 

直線的な弾道であったでしょうから(ケネディ暗殺における「魔法の銃弾」でもないかぎり)、それが心臓を貫通したことは容易に推定できる。

 

従って、レッドバロンは殆んど即死であったと結論できるでしょう。(←ここ、大事です)

 

レッドバロンは、映画で描かれてるように決して蜂の巣にされたんじゃなく、ただ一発の銃弾を心臓に撃ち抜かれることによって、敵陣に農場を買ってしまったのだった。