独り掲示板

ライトスタッフは名作です-2

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3339】

 

前述したように「グラマーなグレニス」字幕の問題とは(grammar ではなく)glamor/glamour と(カタカナの)グラマーの意味(イメージ)のズレの問題であり、カウフマンの意図する glamorous の理解(センス)の問題である。

 

スクリプトでは(GLAMOROUS WOMAN として登場する)グレニスはリドリーが X-1 に GLAMOROUS GLENNIS と描いてるのを見て—

 

グレニス :何よ、これ?(大いに喜んで— pleased as punch)

 

イェーガー:X-1 なんてダセーだろ 

 

続けて—

 

グレニス :Punch a hole in the sky!

 

イェーガー:I'll be right back.      

 

と印象的で伏線となるべく(あざとい)使われ方になっている。(もったいなくも変更されたが—その3170参照)

 

どう見ても映画「ライトスタッフ」のグレニスは「グラマーなグレニス」なんてのでは全然ないでしょ、純正ライトスタッフ・ファンから見れば。

 

蛇足

 

イェーガーはグレニス(Glennis Faye Dickhouse)の第一印象を—

 

“She was pretty as a movie star”

 

と(臆面もなく)語っていて、Glamorous Glennis の愛称も宜なるかなってとこです。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3338】

 

原作―

 

she was such a number, so striking, he had the inscription "Glamorous Glennis" written on the nose of his P-51 in Europe and, just a few weeks back, on the X-1 itself.(The Right Stuff)

 

彼女は大変人目をひく美人であり、彼はヨーロッパでは愛機 P51 の機首に、そしてつい数週間まえには X1 にさえ、「グラマーなグレニス」と書き入れたほどである。[中公文庫]

 

                          (その3070参照)

 

 

「グラマーなグレニス」問題については遥か以前にレスしてますけど(どこかに埋もれて)行方不明なので改めて独り言を—

 

glamorous を「グラマーな」とするのは普通の感覚(日本語のイメージ)からは少々外れた(迂闊にして不用意な)訳で、実際 グレニス(本人、及び イェーガーいわく本人にそっくりの バーバラ・ハーシィ―その3071参照)の見た目は全然(カタカナの)グラマーじゃなく、あくまでも glamorous なグレニスなのだが、わたしは「グラマーな」が間違いだと言いたいのではない。

 

まぁ、glamorous を「グラマーな」と訳しても文法(grammar)的には何ら差し支えなかろうし、言葉の受けるイメージも人それぞれでしょうから。

 

ではあるけれど、原作はまだしも映画「ライトスタッフ」の字幕に原作訳を(そのまま)踏襲されると違和感があるんですよね、そこはかとなく。

 

仮にグレニスが実際に(カタカナの)グラマーだとして、扮する(そっくりの)バーバラ・ハーシィもグラマーだったとしても、あのサム・シェパード(イェーガー)が X-1 に「グラマーなグレニス」なんて戯れ言をチャラチャラ描くとは思えないでしょ、純正ライトスタッフ・ファンから見て。

 

ビデオ字幕は原作訳式に「グラマーなグレニス」、一方 NHK 字幕は「魅惑のグレニス」―こちらが正しい。(と、わたしは言いたいのであります)

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3337】

 

当然、ラストの F-104 (two seat trainer)に向かうイェーガーとスコットのやりとり(その2943参照)—

 

"Hey,  Colonel―"

 

"Yes, sir."

 

" You got any Beemans?"

 

" I might have me a stick, sir."

 

"Think I see a plane over here with my name on it."

 

" Now you're talking, sir."

 

スコットの腕時計を見やりながら—

 

イェーガー「そりゃ、カ〇オか?」

 

スコット:"No, sir."(苦笑)

 

イェーガー「テストパイロットならロレックス(trusty Rolex)にしろ」

 

スコット:" Yes, sir."(苦笑)

 

てな笑える小ネタが挟まれましょう。

 

ロレックス(Rolex × The Real McCoy's Japan)は音速突破 50 周年記念(1997年10月14日)に GMT-MASTER  "CHUCK YEAGER"  limited edition (1st モデル 16700、後に 2nd モデル 16710)を出していて、16700 の裏蓋には音速突破に因んで Bell X-1 (OCTOBER 14, 1947)が描かれているが、16710 は X-1 と P-51 ―あちこちページを当たっても何らコメント(指摘)されてなくて不思議だけれど、この 2 機は(わたしら純正ライトスタッフ・ファンから見りゃ)グラマラス・グレニス(その3261参照)ってことでしょ、言うまでもなく。

 

ただし、厳密に(細かいこと)言うなら—

 

初代   P-51B  Glamorous Glen

2代目  P-51D  Glamorous Glenn II

3代目  P-51D  Glamorous Glen III

 

と(まだ結婚する前の girlfriend だからか)略式の呼び名(機体に記されている)

 

X-1 が(「ライトスタッフ」でもパンチョ・バーンズが Forget it,Sweetie. She’s his wife. と教えるように―その3168参照)正式な結婚後の―

 

Glamorous Glennis (その3172参照)

 

とフルネーム(?)であります。(「ライトスタッフ」ではリドリーが機体に描く―その3165参照)

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3336】

 

わたしが妄想する「デイヴ・スコット物語」(その2942~2944参照)はエドワーズ空軍基地から(あくまでライトスタッフ的視点で)始まるけれど、この Moon Watch オークションをオープニングシーンにする(改訂版と言うより)完全体が想い描けますね。

 

冒頭、2015年 RR オークションにかけられたスコットのブローバが Apollo マニアと watch コレクター間の競り合いでヒートアップ、別室でモニターしているスコットは何か他のことを思い出してるふうに見える―

 

エドワーズ空軍基地(Edwards AFB)

 

アル・ウォーデンの声でナレーション

 

エドワーズの ARPS (USAF Aerospace Research Pilot School)を紹介

 

伝説の the Commandant of the school その名は…

 

"Hey,  Captain—"

 

スコットを呼び止めるチャック・イェーガー  登場

 

てな具合にコア(よりディープ)な ARPS(エドワーズ)系に旗幟を鮮明にするのがよろしいでしょう。

 

ウォーデンには「ライトスタッフ」のリドリー的役割が適任、ラストのナレーションで切手スキャンダルによってアポロ15 のスコット、ウォーデン、アーウィン、更にスワイガートがどうなったか、そして最後にスコットの Moon Watch が記録的な高値で落札された(it hammered for $1,625,000.)ことを伝える—

 

民間パイロットのスワイガートは純正の ARPS(エドワーズ)系ではないが(話の上で外せないので)準空軍枠で絡んでくる。

 

アポロ15 以外のアポロ宇宙飛行士の ARPS(エドワーズ)系はアポロ 1 のガス・グリソム、エド・ホワイト アポロ 7 のドン・アイズリ アポロ 8 のフランク・ボーマン アポロ 9 のジム・マクディビット アポロ10 のトム・スタフォード アポロ11 のニール・アームストロング、バズ・オルドリン、マイケル・コリンズ アポロ13 のフレッド・ヘイズ アポロ14 のエド・ミッチェル、ステュ・ルーサ アポロ16 のケン・マッティングリー、チャーリー・デューク アポロ17 のジーン・サーナン

 

これら「デイヴ・スコット物語」の ARPS 系登場有資格者の錚々たる顔ぶれを列挙すれば、そこの現場監督でブイブイ言わせていたイェーガーを宇宙時代に取り残された遺物だの何だのなんてのは無理筋すぎる虚像であることは一目瞭然でしょう。(その2982参照)

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3335】

 

アポロ15 の船長(CDR)にして切手スキャンダルの首謀者 デイヴ・スコットは officially に合衆国政府から支給される(government-issued)腕時計 Omega Speedmaster Professional の予備(バックアップ用)に私物の(personal) Bulova Chronograph (prototype)(とストップウォッチ)を privately に持ち込んでいた。(その3331参照)

 

普通は Rolex GMT-Master が宇宙飛行士の定番(お気に入り)で、ジャック・スワイガートもそう。(その3006参照)

 

スコット個人とブローバ社の関わり(personally-gifted された prototype を月に持って行った経緯)は詳らかではない(アポロ月ミッションにはスイス製の Omega じゃなくアメリカ製の Bulova が相応しいてな売り込みはあろう)が、実際にスコットは用意周到にも(いつの間にか Omega Speedmaster のヘサライト風防 hesalite crystal が外れて失くなっていたので予備の Bulova をバンド velcro band に付け替えて EVA-3 以降の)月面で装着・活用する展開に―

 

I do not recall ever having looked at my watch after egress. In the cabin after EVA-2, I noticed that the crystal of my Omega had popped off sometime during the EVA. Therefore, on EVA-3, I used my backup Waltham watch (which was) of a similar type. It worked just fine during the even higher temperatures of EVA-3. (Scott wrote, in a 1996 letter)

 

my backup Waltham watch-なぜかスコット自身が Waltham と思い違いしていた本当は Bulova が何と(40年以上もたった) 2015年10月にオークション(RR Auction)にかけられ 、何と何と(切手スキャンダルとは桁違いの) $1,625,000 で落札…

 

スコットが(ずっとビニール袋に入れて貸金庫か何かに保管していたらしい)間違いなく月面で使った腕時計―支給品(government property)の Omega Speedmaster は全て返却しなければいけないゆえ、このデイヴ・スコットの私物(Scott’s personal property)の Bulova だけが唯一マーケットに出回った正真正銘の Moon Watch (lunar surface-worn chronograph watch)… アポロ15 とどめの後日談と言うべきでありましょう。

 

※ スコット本人の添え書き

 

The Bulova Lunar EVA (Wrist) Chronograph and attached velcro wrist strap was worn by me on the lunar surface during the third EVA of Apollo 15, and then in lunar orbit and return to Earth.

 

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3334】

 

あちら(NASA)には切手スキャンダルみたいな不祥事があって別に不思議じゃないにしても(←偏見?)、わたしらには何となく違和感があって、ちょっと異質な(居心地の悪い)印象を受ける。

 

例えば、我が JAXAライトスタッフ こと(?)Astro_Kimiya 飛行士などにはイメージできませんから。

 

関連レス(こんな映画にこんな人が)―

 

映画「ライトスタッフ」 (2015/ 1/11)

 

元空自パイロット氏が TV でも話題になり、「ライトスタッフ」という(誰も馴染みのなさそうな)映画を見て宇宙飛行士になったと(何も知りはしないレポーターに)紹介されてますが、「お、そうなのか」とニンマリする人だっているに違いない。

 

ライトスタッフ・トピ 当時のレス―

 

>日本人の宇宙飛行士候補が 2 名決定 ANA と JSDF のパイロット

 

JSDF 氏は「ライトスタッフ」を見て(航空自衛隊に入り)テストパイロットになった(密かに宇宙飛行士を目指していた)そうだから、まさに日本版マーキュリー7のイメージ、ANA 氏は民間の旅客機パイロットなので「ライトスタッフ」とは無縁のようだけれど、何となく(マーキュリー7の一人に違いなかった)スコット・カーペンター的な雰囲気はしますね。

 

この辺の正しい経緯は(ご本人談―DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー JAXA宇宙飛行士・油井亀美也 2014.10.27)―

 

テスト・パイロットになるためにアメリカ留学をしていたとき、レンタルビデオ店で何気なく手に取ったのが『ライトスタッフ』でした。宇宙のカプセルと宇宙服を着た人が立っているパッケージを見て「これは何だろう」と興味が湧き、思わず手に取りました。

 

ライトスタッフ』は、戦闘機のテスト・パイロットが宇宙飛行士になるという話なんです。ストーリーを追いながら、思わず自分の姿を重ね合わせていました。日本が自前で宇宙船をつくるようになれば、テスト・パイロットは絶対に必要だ。もしかしたら、いつか日本もこうなるかもしれない。いろいろと夢が膨らんだことを覚えています。

 

 ただ、その時点で、宇宙飛行士になるために特別なことを始めたわけではありません。本当の転機と言えるのは、映画の話を妻にしたことでしょうか。それまでにも「宇宙飛行士になりたい」という想いは妻に話していました。またそれ以前から、私が宇宙を大好きだということをよく知っていたと思います。

 

 

たぶん、氏のミッションに合わせ「ライトスタッフ」が TV 放映されたりもして、いいことではありましょう。

 

 

映画「ライトスタッフ」―その 2 (2015/ 5/ 5)

 

Astro₋Kimiya 飛行士搭乗の国際宇宙ステーション行きソユーズは 5月27日打ち上げ予定―某スターチャンネルで(案の定)その応援企画として 6 月に「ライトスタッフ」をやります。

 

が、既に(別プログラムで)今日 5/5 夕方と 5/27 にオンエアー、そして 5/31 には奇特にも無料放映してくれるようなので、これをパソコンに録画するつもり―わたしは(何となく)DVD というもの(ディスク)に馴染めなくて、「ライトスタッフ」も昔ながらのビデオテープ(複数)と HDD レコーダーに入れてるのを見てますけど、パソコン(の TV)の(古物のステレオに繋げてる)音のほうが(しっくりきて)好きなんですね。

 

以上、あくまでも「ライトスタッフ」の宣伝―ご容赦。

 

 

映画「ライトスタッフ」―その 3 (2015/ 7/30)

 

航空自衛隊テストパイロット宇宙飛行士の(一般受けする人柄の)おかげで、このところ(あちこちで)「ライトスタッフ」(という全く一般受けしない映画)の紹介・解説を目にし(一人「ライトスタッフ」振興委員会としては)まあ喜ばしいことではあるけども、如何せん(殆ど知られてなかったわけだから)基本的に誤った記事もあったりして、例えば―

 

油井飛行士は映画「ライトスタッフ」を見てテストパイロットに憧れたと語っていますが、作品では宇宙飛行士を目指す米軍のパイロットが飛行中に制御不能で墜落、奇跡的に生還するシーンもあります

 

といったもので >制御不能で墜落、奇跡的に生還する 米軍パイロット 即ち(宇宙飛行士になるのを拒否し、拒否された)イェーガーが >宇宙飛行士を目指す 他のパイロットと対称的(裏腹)に描かれることこそが「ライトスタッフ」(という実は名作)―なんてのは今更の話でありましょうか。

 

それにしても、フツー(手軽)に宇宙から配信(Twitter)する時代になったんだなぁ…

 

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3333】

 

ウォーデンの率直な証言(事件の経緯)―

 

We were having cocktails before dinner when Dave and Eiermann started talking about postal covers. As Jim and I sat there and listened to the conversation, Eiermann suggested to Dave that Apollo 15 should carry a hundred special covers for a stamp dealer he knew in Germany named Hermann Sieger. He had previously arranged signed stamp deals with at least twenty of my fellow astronauts.

 

Jim and I, the rookies in the room, were assured that all of the Apollo crews had done this before. It’s not a big deal, we were told. We’ll be covered. We were reminded, rather ghoulishly, that insurance companies were no longer offering free life insurance to Apollo crews, and we needed to think of our families by making deals such as this.

 

Here was the plan: Apollo 1 5 would fly the covers, the crew would sign them, Eiermann would give them to Sieger, and then Sieger would hold them until the Apollo program was finished, or until we had all left the program. At that point, Sieger would be free to sell them, but only through private sales — no public, commercial visibility. 

 

In return, Sieger said he would set up bank accounts for us, place seven thousand dollars in each, and if we left the money there and let it grow, the funds should pay for our children’s college educations. Even back then it was not a lot of money, but when added to our small air force salaries, it would make a big difference. With the covers stored away after the flight, no one would know the plan until we were retired from NASA or the air force. (Falling to Earth)

 

ウォーデンは他の宇宙飛行士も皆(at least twenty of my fellow astronauts)やっていたことで、デイヴ・スコットが既に決めていた話(a done deal)を子供の教育基金(for our children’s college educations)にと受諾(“Sure.”)したのだが―

 

It was, without a doubt, the worst mistake I ever made.

 

と一生の不覚を悔やむ。

 

まぁ、雀の涙の給料(our small air force salaries)の言い訳も理解(同情)できるけども、「ライトスタッフ」で描かれてるようにイェーガーが月給 283ドル($283 a month-その2921参照)で X-1 の超音速フライトをやったことを思うと、少なくともライトスタッフ的な振舞いとは言えないですね、純正ライトスタッフ・ファンには。

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3332】

 

それまで宇宙旅行土産が売りに出されていたのは問題視されてなかったのに、アポロ15 が見過ごされずに懲罰対象になってしまったことに関して、アル・ウォーデンはインタビュー(Apollo 15's Al Worden on Space and Scandal  Smithsonian Magazine October 12, 2011)に―

 

Those postal covers were sold a couple of months after the flight and quickly became public knowledge. So, I think NASA management felt they had to do something. There had been a similar incident the previous year, when the Apollo 14 crew allegedly made a deal with Franklin Mint to bring silver medallions into space. But NASA kind of smoothed that over because the [astronaut] involved was Alan Shepard, (the first American in space] who was a little more famous than we were. The government never said that we did anything illegal, they just thought it wasn’t in good taste.

 

と、アポロ15 の仕儀は違法(illegal)ゆえにでは決してなく、たしなみを欠くと言うか、はしたなくも品が悪い(it wasn’t in good taste)と裁断されたのだけれど、直前のアポロ14 の件(Franklin Mint medals)には(あの)アラン・シェパードであるがゆえに(もっと品が悪い感じがする?にも拘らず) NASA は何の文句も付けてはいなかったと語っている。

 

切手スキャンダルに限って言うなら、元凶(事の起こり)は切手コレクターのディック・ゴードン夫人 Barbara Gordon, a stamp collector and the wife of Richard ‘Dick’ Gordon (the Apollo 12 astronaut, who at that time was the backup pilot for Apollo 15) らしく、ウォーデン(Al Worden’s Falling to Earth-その2913参照)によれば―

 

Jim Irwin added some postal covers to his PPK[Personal Preference Kits], too, and made sure Deke knew about them. He carried a few covers with a shamrock logo on them, many of which he gave to NASA friends after the flight. He even took more than eighty covers as a personal favor for Barbara Gordon, Dick Gordon’s wife. She was an avid collector, and although her covers took up a good amount of Jim’s PPK weight allowance, that was the kind of generous guy he was. Those envelopes flew on the mission and were given right back to Barbara.

 

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3331】

 

「女を口説こうと月にもチョコを持っていった」(その3329参照)

 

“It’s a great day in New York today. It’s girl-watching weather. And speaking of girl watching, did you know our first bachelor astronaut is on his way to the Moon? It’s Swigert, right? He’s the kind of guy who they say has a girl in every port. Well, that may be, but I think he’s kind of foolishly optimistic though, taking nylons and Hershey bars to the Moon.”

 

- Dick Cavett(The Dick Cavett Show, April 13, 1970)

 

スワイガートがストッキングとチョコバー(nylons and Hershey bars)をチャラチャラ持って行ったというのはジョークにしても、何か月旅行の土産になるものを(「ライトスタッフ」のガス・グリソムがそうだったように―その3086参照)隠し持っていたには違いなく、やはり(当初は否定していた)同様の不始末に手を染めていたことを後に認めている。

 

なので、この TV 放送シーンは遠回しに切手スキャンダルを匂わせてると深読みできなくもないか。(その3000参照)

 

切手スキャンダル(Apollo 15 stamp incident)関連―

 

その 783~785    (2005/10/30~31)

 

ASTP (その3228参照)の司令船パイロットは ヴァンス・ブランド― もともとは ジャック・スワイガートが内定していた。

 

が、スワイガートは(風疹にかかってたわけでもないのに)リストから外され、ミッションの 2 年前(1973年)に NASA を離れる。 (←同年 NASA を退くジム・ラベルの場合は 2 期生のベテランで アポロ13 が last mission になると公言していたし、同じ 5 期生だったフレッド・ヘイズは 1979年、ケン・マッティングリーは 1985年まで NASA にいた― 2 期生で 2004年12月31日まで 42年間も NASA に在籍していたジョン・ヤングという極端な例はおいとくとしても)

 

スワイガートが ASTP から消えたのは、どうやら アポロ15 の切手スキャンダル(postage stamp scandal)の煽りのようですね。

 

 

アポロ15 切手スキャンダルの概略は―

 

デイヴ・スコット船長は NASA に出入りしていた人物に(カクテルパーティで)美味い話を持ちかけられ、3 人のクルーに それぞれ 7,000ドル(子供の信託基金)という見返りで、398 通ものアポロ15 の初日カバー First Day Cover (記念切手発行日消印のオリジナル封筒 )などを宇宙服に忍ばせて月に行った。

 

内 100 通(Dave Scott Al Worden Jim Irwin 3 人のサイン入り)が その人物から切手ディーラーに渡るや(アポロ計画が終るまで売りに出さないという約束だったのに)ドイツで 1 通 1,500ドルで売却されたのを知り、慌てて何も見返りを受け取らないことにしたものの、分別を欠いた行いに対し譴責処分が下される羽目に (残りの 298 通は NASA が保管)―

 

というもので、これまで NASA は似たようなことを見て見ぬふりしてきたし、別に [当時は] 違法でも何でもないのだけれど、ちょいと度が過ぎたのと表沙汰になった手前だろうか。

 

ふと思い浮かぶのは、「ライトスタッフ」で ガス・グリソムがココアビーチのバーのおねえちゃんを口説くシーン、明日 宇宙に持ってく(I'm taking these up with me tomorrow. Would you like a souvenir after I get written in history ?)と言うミニチュアのカプセルを見せびらかして誘う―あんな感覚なのかも。 (何たって空軍だし)

 

 

他にも スコットは知人に頼まれた腕時計とストップ・ウォッチ [Bulova] をバックアップとして(いざという時に役に立つかもしれないと [実際に Omega Speedmaster の代わりに EVA で役に立ったのだが] )黙って持ち込んでおり、責められるべきは その "lack of judgment" だというわけです。 (←あの F-104 着陸事故の際に絶賛された瞬時の判断力とは別の judgment らしい)

 

先に書いたように、アポロ15 の空軍トリオは Army Air Corps Song のオリジナル・スコアも月に持って行ってます(その3028参照)―たぶん、そんな軽い気持ちなんでしょうか、一事が万事で。

 

更なる後日談もあって、スコット(とアーウィン)が全く個人的に、つまり NASA の許可なしに月に置いてきた小さな人型の像のレプリカが(ミュージアムに展示するための 1 個だけ作るのを了承したはずが)ニューヨークで 950 個(@ 750ドル)も売りさばかれるという事態も起き、下世話なごたごたで折角のミッションの成功にケチをつけたのみならず、宇宙飛行(士)のイメージを著しく 損ねてしまう結果になったのでした。[アポロ15 のクルーはアポロ17 のバックアップに就くローテーションから外され宇宙飛行士としてのキャリアを終える]

 

参考

 

小像は "Fallen Astronaut" と名付けられ、死亡した 14 人の astronauts and cosmonauts ― Charles Bassett Roger Chaffee Yuri Gagarin Gus Grissom Vladimir Komarov Elliot See Edward White C.C. Williams らの名前がアルファベット順に列記されたプラークに添えて 月 (Mount Hadley Delta)に置かれている。(その3230参照)

 

 

 

独り言レス

【誰にともなしに、独り言レス―その3330】

 

その1109

 

スワイガートは立派に空軍系(USAF 及び Air National Guard)のキャリアがあるものの、チャラチャラした(promiscuous な)脚色イメージどおり(?)軍人ではなく、civilian のテストパイロット(North American Aviation)―そんなスワイガートの(宇宙服姿でヘルメットを小脇に抱える)颯爽として態度でかそうなブロンズ像(等身大)がコロラドの Denver International Airport に展示されていて(同じスワイガート像が National Statuary Hall Collection にも寄贈されている)[正確に表現すると、コロラド州が National Statuary Hall Collection に寄贈したスワイガート像と同じもの(即ち レプリカ)が Denver International Airport (スワイガートはデンバー出身)にも展示されている]、それについて Michael D. Griffin(2007年 当時NASA 長官)が National Space Symposium で述べるには、スワイガートは残念ながら「アポロ 13」で演じたケヴィン・ベーコンほど知られていない(Jack Swigert was portrayed by actor Kevin Bacon. Unfortunately, in our culture today far more people recognize the actor than the man he portrayed.)と前置きして―

 

Jack was not known as a perfect person.

 

と、さも問題のある人物だったと受け取られかねない発言をしている。

 

が、しかし―

 

いわば 堂々たるコロラドの右代表としてスワイガート像が使われていること(the choice of a statue of Jack Swigert)は―

 

"perfect"

 

だと、実に上手く フォローしておりますよ。

 

参考

 

スワイガート賞(John L. "Jack" Swigert, Jr., Award)なるものがあって、去年(2008年)の受賞は我らが Japan Aerospace Exploration AgencyJAXA)―この際、も少しスワイガートには温かい目を向けてやりたいものです。 (完璧な人間などいないんだし、そもそも「アポロ 13」のスワイガート像こそ完璧なウソなんですから)

 

 

※ スワイガートの人となり(チャラチャラ否定)記事

 

Film Doesn’t Do Justice to Swigert the Astronaut or Person(by Barbra Zuanich Friedman  Los Angeles Times  July 17, 1995)

 

スワイガートの best friend という筆者によれば、ケヴィン・ベーコンはスワイガートを薄っぺらに(one-dimensional portrayal)演じさせられていて―

 

Bacon was forced to play Swigert a bit lopsided--first giving us the impression that in his off-hours he was a cocky, skirt-chasing bachelor and later portraying him as an intimidated, insecure and perhaps resented member whose every move was scrutinized for error.

 

けれど、スワイガートの実像は―

 

He was always the epitome of good manners. He was shy, good-humored, optimistic and intense.

 

He was never embarrassing, aggressive or egotistical.

 

それを「アポロ 13」はチープに脚色・捏造している―

 

But Hollywood usually stereotypes its bachelors, and Jack, 25 years after the fact, fell prey to that chintzy ploy.